ウルトラセブン  零下140度の対決  | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン  零下140度の対決 

『ウルトラセブン 零下140度の対決』

テレビ 25分 カラー

放映日 1968年3月24日

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 

監修  円谷英二


プロデューサー 末安昌美

脚本 金城哲夫
 

 

撮影 永井仙吉

美術  岩崎致躬

     成田亨

照明  新井盛

音楽 冬木透

 

録音  松本好正

効果  西本定正

編集  柳川義博

助監督 山本正孝

制作主任 高山篤

 

特殊技術

撮影  鈴木清

美術 池谷仙克

操演  平鍋功

照明  小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督  円谷粲

制作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社

 

出演 
 

中山昭二(キリヤマ隊長)

 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)


 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

山本廉(ムカイ班長)

幸田宗丸(アラキ)

鈴木邦夫(ガンダー スーツアクター)

山村哲夫(ミクラス スーツアクター)


 

金城哲夫(隊員)

藤田進(ヤマオカ長官)

 

上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 高野宏一

 

監督 満田 禾斉

 

制作  円谷プロダクション

     TBS

 ☆

 森次浩司→森次晃嗣

 菱見百合子→ひし美ゆり子

 石井伊吉→毒蝮三太夫

 満田 禾斉→満田かずほ

 ☆

  台詞の引用・シークエンスへの言及

 は研究の為です。

  円谷プロ様・TBS様におかれましては

 ご理解・ご寛恕を賜りますようお願い申

 し上げます。

 ☆


 太陽を黒雲が覆う。

 

 

ナレーター
 「不吉な、雲の流れが地球防衛軍の空の
  上をみるみる黒くしていった。
  

  それはあの恐ろしい事件の前触れでも

  あった。


  絶対零度の死の世界が、やがて、・・・」

 
 モロボシ・ダン隊員の運転するポインターは、

猛烈な吹雪にあってしまい、動けない。
 


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 ダン「これは只の吹雪ではない。一体何が
     この異常寒波を・・・?」


 

 作戦室。

 防寒服に身を包んで帰隊したアマギ隊員は、

猛烈な寒さについて報告する。部屋には、キリ

ヤマ隊長・フルハシ・ソガ・アンヌもいる。

 

 

  アマギ「基地を中心とするこの辺一帯は、
      異常寒波に覆われているんです。」


 

  キリヤマ「異常寒波?」

 


  フルハシ「隊長、富士観測所に問い合わせ

        てみたんですが・・・」


 

  キリヤマ「アマギ、表の気温は?」


 

  アマギ「零下112度」


  フルハシ「冗談じゃないぜ、我が北海道だって、
        せいぜい零下40度なのに!」


 


  ソガ「零下112度の寒波ゾーンに包まれたから
      といってそうびくびくすることはないで
      しょう。地下18階の動力室では原子炉が
      赤々と燃えてるんだ、人類の科学、万々

      歳だよ!」
     


  
  アマギ「(コーヒーを飲んで)うまい!」

 


 無線が入り、アンヌが受信する。


 


  アンヌ「こちら作戦室、ダン!」


 


  ダン「隊長、ポインターがエンストです。
     一体、この寒波は!」


 

  キリヤマ「よし、ポインターを捨てていい、
        すぐに基地へ戻れ。」


 

  アンヌ「ダン、暖かいコーヒーがあるわよ。
       早く戻ってらっしゃいよ。」

 


  ダン「ああ、出来る限り頑張ってみるよ。」

 


ダンは強烈な寒波の中、徒歩で基地に向かった。


 作戦室では、突然、地震のような大震動が起こ

り、停電した。


 


  キリヤマ「落ち着け、慌てるな。作戦室から動
        力室へ、 一体何が起こったんだ?」

 


 動力室ではムカイ班長が動揺しつつ

返答した。


 

  ムカイ「原子炉がやられました!」


 

  キリヤマ「なに、原子炉がやられた!原因
        は、何だ?」

  


  ムカイ「何がなんだか、さっぱり
       わかりません。」



 

  キリヤマ「『なにがなんだか、わからん』じゃ、
        さっぱりわからんじゃないか!すぐ
        に調べて連絡してくれ!」


 

 零下112度の吹雪を歩むダンは疲労していた。


  ナレーター「ウルトラセブンにも弱点があった。
         光の国M78星雲から来た彼は、普通
         の人間以上に寒さに弱かったのだ。」

 


 動力室では、ムカイ班長が事故の原因を必死に
調査していた。フルハシ・アマギが応援にかけつけ
る。


  ムカイ「見て下さい!この基地の心臓部をグサ

       リと一突きだ。人間なら即死です。」


 


  アマギ「やっぱり、爆破されたんですか?」

 

  ムカイ「爆破じゃありませんよ、ドリルのよう

       なもので突き破られたんです。」



 アマギは被害状況をキリヤマに報告する。

 


  キリヤマ「地下ケーブルはこの基地の命だぞ!」


 基地の壁を破って怪獣が冷凍光線を放つ。


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フルハシ・アマギが火炎銃を放つが、怪獣の冷凍

光線には全く歯が立たない。

 

 メディカルセンターでは、アンヌと医療班アラキ
が負傷者の手当をしていた。


  ソガ「基地が凍り付きそうだよ、アンヌ、
     防寒服出してくれ」


  

  アンヌ「オッケー」

 

 作戦室では、キリヤマ隊長ヤマオカ長官が、沈痛

な表情で、フルハシ・アマギの報告を聞いていた。


 

  ヤマオカ「怪物がいるというのは、本当か?」

 


  フルハシ「ハッ、目のようなものを見ました。
        原子炉を破壊したのも、異常寒波
        の犯人も、どうやらその怪物らし
        いんです。」


 

  キリヤマ「この下にいるのか?」


 

  アマギ「はっ!冷凍光線を吐き続けていて、
       とても近寄れません。」

 


 原子炉と地下ケーブルが復旧しないので、ホー

クやマグマライザーも使用不可能だ。

 


  ヤマオカ「すると素手で戦うより、方法はない
        ということか?」

 

 

 フルハシは時限爆弾による怪獣破壊を提案する

がキリヤマは基地ごと吹っ飛ぶ危険がある、と提

案を却下する。


 そこへ医療班アラキ隊員がやってきた。

 

  アラキ「長官、300名の全隊員を基地から退

       避させて下さい。」
       


  ヤマオカ「隊員の命が危険だと言うのか?」

 

  アラキ「は、医者として責任が取れません。

      すぐに退避命令を、長官!!」

 


  ヤマオカ「基地を見捨てることは地球を見捨てる
        ことと同じだ。我々は地球を守る義務
        がある。退却は出来ん!」


 


そのころ、ダンは猛吹雪の中を懸命に歩いていた。



 

  ダン「(モノローグ)基地はもうすこしだ。基地
     に着けば、暖かいコーヒーとスチームが、  
     俺を待ってるぞ。」


 


 その基地では、一人の隊員が、寒さに耐えきれ

ず、倒れた。介抱してくれるアンヌの腕の中で、彼

は眠りにつこうとしていた。

 


  アンヌ「立って!眠ったらおしまいよ。
      身体を動かすの。」

 


 だが、隊員は眠りから覚めず、死去する。


 

  アンヌ「起きなさい!」


 アンヌの絶叫は吹雪に苦しむダンに届いた。
太陽の幻覚を見た彼に、宇宙人が話しかけて
きた。


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   宇宙人「光の国が恋しいだろうね、ウルト
        ラセブン。でも、自業自得というも

        のだ。
        M78星雲には冬がない。冷たい

        思いをするがいい。」



   ダン「誰だ、お前は?」

 


   宇宙人「地球を凍らせる為にやってきた、
        ポール星人だ。我々はこれまでも
        二度ばかり、地球を氷詰めにして
        やった。今度は三度目という訳だ。」

 


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   ダン「氷河時代」

 


   ポール星人「地球の中の生きとし生けるもの
           が全て氷の中に閉じ込められて
            しまうのだ。ウルトラセブン、
           勿論、お前さんもだ、
           ついでに言っておくがな、地球
           防衛軍とやらを、まず、手始め

           に凍らせてやった。」
        
   
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   ダン「何!」

 

   ポール星人「あいつらがおると、何かと邪魔
          だからな、はっはっは!」


 

     


 ダンは幻覚を巧みに利用して自身に話しかける

ポール星人の手法に驚く。セブンに変身しようと

するが、ウルトラアイが無い。吹雪の中に落とし

てしまったのだ。


 動力室では、怪獣が姿を消したので、隊員達が

再び復旧作業に着手する。


 


 怪獣の名はガンダー。



 

 ダンの元へやってきた。ダンはカプセル怪獣ミ

クラスを放って、応戦させる。


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 動力室で作業に従事している隊員も衰弱する。


 アラキは長官に再び進言する。


   アラキ「長官、もう我慢が出来ません。
        長官・隊長、『隊員がどうなっても
        いい』と仰るんですかっ!全員、ここ
        で討ち死にしろ、と仰るんですか?」

 


   キリヤマ「アラキ隊員、君には長官の気持ち
         がわからんのか!?」

 


   アラキ「わかりません。いえ、わかりたく
        ありません。使命よりも人命です。
        『人間一人の人命は地球よりも重い』
        って、隊長はいつも私達に・・・」

 


   キリヤマ「それは・・・」


 


   ヤマオカ「キリヤマ隊長、アラキ隊員の言

         うとおり だ。地球防衛軍の隊員

         も一個の人間。人間の命は何より

         も大切だ。」




 動力室ではムカイが倒れ、フルハシが介抱する。


 

 猛吹雪の中でのガンダーとミクラスの激闘は続く。

ダンはウルトラアイを遂に発見し、セブンに変身し、

太陽へと向かう。エネルギーを補充するためだ。

  
  作戦室では、ついにヤマオカ長官が倒れた。

 

意を決したキリヤマ隊長は、館内放送で方針を

伝える。


 

  キリヤマ「我々は全力を尽くして頑張った。だが、
        外部との通信も、応援も全く断たれて
        しまった。これ以上、犠牲者を出すこと
        は長官の本意ではない。
        我々は涙を飲んで、基地を退出する。」


 

  アマギ「ちきしょう!」


 

 彼とソガはムカイを抱える。単身現場に残って復旧

作業を続けたフルハシの健闘の甲斐あって、ついに

基地は復活した。

 

 ホーク1・3号で、キリヤマ・アマギ・アンヌはガンダ

ーを攻撃。


 

 太陽でエネルギーを得て、地球に戻った

セブンは、ガンダーに挑む。


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 太陽エネルギーを得たセブンは勇気・気力・

体力全てが充実していた。


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 ガンダーに対してセブンの闘魂は熱く

燃えた。

 

 大雪の中でも闘志は燃えたぎる。


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 零下140度の対決。



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 極限の寒さの中だが、太陽エネルギーを得た

セブンは強靭さを回復していた。


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 セブンはアイスラッガーを放つ。

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セブン ガンダー
アイスラッガーはガンダーの両手・首を斬る。


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 雪の中にガンダーの首が転がる。


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 ポール星人「ウルトラセブン、どうやら我々ポー

         ル星人の負けらしいな。第三氷河

         時代は 諦めることにする。

         しかし、我々が敗北したのは、
         君に対してではない。地球人の忍

         耐だ。人間の持つ使命感だ。
         そのことをよおく知っておくがいい。

         我々は、君のエネルギーが元のよ

         うに多く なく、そして活動すればた

         ちまち苦しくなる弱点を作っただけ

         でも満足だ!はっはっは」
  
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 かくして黒雲は晴れた。


 

 ダンに戻ったセブンは、ミクラスをカプセルに呼び

戻し、基地に向かって歩み出した。

 

  ナレーター
  「地球防衛軍とウルトラセブンにとって、魔の時は
   去り、地上には再び平和が戻った。科学力を誇

   る 秘密基地にも弱点があったように、我らがウ
   ルトラセブンにも思わざるアキレス腱があったの
   です。
   しかし、セブンの地球防衛の決意は少しもひるむ
   ことはありません。」

 


                    

 

 
                          
☆地球人の忍耐☆
 


 森次晃嗣は著書『ダン モロボシ・ダンの名を

かりて』(2000年、扶桑社文庫)の中で、本第25

話『零下140度の対決』を「印象に残っている作

品」の一本として選んでいる。


 

 大雪のシーンは、スタッフと機械の熱気の中

で、寒さの演技を求められ、更に発泡スチロー

ルと塩で作った雪が口に入って台詞が言えな

くなることもあった、と前掲書『ダン』で回顧され

ている。


 

 金城哲夫脚本は、弱点である「寒さ」の中で、

ダン/セブンが苦しめられるドラマを描いた。そ

の緊張感は絶大で、「どのようにセブンは危機

を突破するのだろうか?」という問いが視聴者

の心に湧き起こる。


 ウルトラ警備隊がポール星人・ガンダーの

急襲で危機に陥り、苦難に喘ぐドラマも、本作

の大きな柱の一つだ。零下112度の寒さにあ

っても地下18階の原子炉は赤々と燃えてい

る筈だった。それがガンダーの襲撃と冷凍光

線で、あっさりと崩壊してしまう。


 凄まじい発展を遂げている科学の力も、「寒

さ」という自然の猛威の前にあっては、あっさり

と崩壊してしまう、という厳しい事柄を痛感する。

 

 金城哲夫自身、アンヌ隊員の腕の中で亡くなる

隊員の役で出演している。『魔の山へ飛べ』の医

師と同一人物なのかどうかは不明である。
 

 こうした危機的状況に追い詰められた地球防

衛軍の人々がどのように生きるか、という問題

を、金城脚本・満田演出は、繊細に、かつ熱く

尋ねる。

 


  アラキ「長官、300名の全隊員を基地から退

       避させて下さい。」
      


  ヤマオカ「隊員の命が危険だと言うのか?」


 

  アラキ「は、医者として責任が取れません。

       すぐに退避命令を、長官!!」
       

 

  ヤマオカ「基地を見捨てることは地球を見捨

        てることと同じだ。
        我々は地球を守る義務がある。
        退却は出来ん!」

 


 医者であるアラキは300名の隊員の命の救助が

最重要課題であることを強調する。だが、ヤマオカ

長官は、「地球防衛」の重大任務を放棄することは

できない、と自身の責任感をもって呼びかける。勿

論、長官は大事な部下達が寒さと冷たさで凍死して

いる悲劇を知っている。

 

 涙を飲んでの悲痛な決断なのだ。


 

   「使命のためには、可愛い部下の命も捨て

    ねばならぬ」


という古武士の魂がある。

 しかし、その強靱な魂も、相次ぐ悲劇の前にあって、
遂に動く。

  

 

   アラキ「長官、もう我慢が出来ません。
        長官・隊長、『隊員がどうなっても
        いい』と仰るんですかっ!全員、ここ
        で討ち死にしろ、と仰るんですか?」

 


   キリヤマ「アラキ隊員、君には長官の気持ち
         がわからんのか!?」

 


   アラキ「わかりません。いえ、わかりたく
        ありません。使命よりも人命です。
        『人間一人の人命は地球よりも重い』
        って、隊長はいつも私達に・・・」

 


   キリヤマ「それは・・・」

 


   ヤマオカ「キリヤマ隊長、アラキ隊員の言う

         とおりだ。地球防衛軍の隊員も一個
        の人間。人間の命は何よりも大切だ。」

        
 「使命」を重視する長官に、アラキ隊員は、キリヤ

マ隊長がかつて語った言葉『人間一人の人命は、

地球よりも重い』を引用し、「命を尊んで欲しい」と願

う。この願いが長官の心を動かす。


   「人間一人の人命は地球よりも重い」


 

 この言葉の探求は、金城脚本にとって大きなテーマ

の一つであったことは確かであると思われる。

 中山昭二・幸田宗丸・藤田進の三大名優の演技合戦

が壮大な迫力を呼ぶ。

 

 ダンが寒さに苦しみ、幻覚を通してポール星人に出会

うシーンも印象的だ。満田演出は宗教音楽のような優し

い音色に乗ってポール星人が現れる、という印象的な演

出を為している。


 

 女性の優しい歌声を背景に現れるので、冷酷なポール

星人の存在感は一層強烈だ。


 黒く細い体を、炎を背にして表すポール星人。ダンが欲

っしている「火」のエネルギーを見せびらかして、寒さの辛

さを一層強く味合わせる、という手法も狡猾である。

 

 大詰めで、ウルトラアイを奪還し、太陽エネルギーを獲

得して復活したセブンは、ガンダーを倒し、なんとか危機

を打ち破る。

 


   ポール星人「ウルトラセブン、どうやら我々ポール

           星人の負けらしいな。
           第三氷河時代は諦めることにする。
           しかし、我々が敗北したのは、
           君に対してではない。

           地球人の忍耐だ。
           人間の持つ使命感だ。」

 


 このポール星人の言葉も不気味だ。

 

 ウルトラセブンに倒されずに生きのびることを

得た彼らは、『セブン』登場の悪役の中でも最強

だったのかもしれない。

 

 ひょっとしたら第25回製作時において、金城は

最終回で最強の敵としてポール星人を再登場さ

せる案があったのかもしれない。

 

 このように想わせる程、ポール星人の存在感は

大きい。

 

 怪獣ガンダーを操り、ミクラス・ウルトラセブンと

戦わせる。ガンダーは敗れたが、セブン=ダンに

とって「寒さ」が弱点であるということを見抜いた点

で、ポール星人にとっては収穫だったのだ。彼らに

とってガンダーは使い捨ての部下でしかない。

 

 この点も恐ろしい。味方であっても、データの収集

さえできれば、自身の為に命がけで戦って散ろうと

もどうでもよいとする。ここまで冷酷非情に徹するか

らこそ、ポール星人が最強の悪役として存在感を

顕示し得るのであろう。

 

  「ハッハッハッ八」と大笑する声には知的な魅力

がキラリと示される。

 

 金城哲夫が描く悪役は素晴らしい。

 

 『オセロー』のイアーゴーや『仁義なき戦い』の山守

義雄親分を想起させる冷たさがポール星人の笑いに

ある。このドラマの前後に発表された傑作戯曲・傑作

映画と共に、『零下140度の対決』は「悪」の描写を鮮

やかに成し遂げた。

 

 

 満田禾斉監督が撮るバトル・シーンは凄まじい迫

力だ。

 

 ミクラスとガンダーのバトルは強烈である。カプセル

怪獣は前半で怪獣にやられて、後半のセブンの活躍を

際立てる存在であるとはいえ、この回のミクラスはよく

健闘し、見せ場を与えて貰っている。

 

 セブンが太陽エネルギーを得るまで、ガンダーの好

敵手としてバトルを挑み、激戦を展開した。

 

 雪の中の激闘は視聴者の心に興奮と緊張を呼んだ。

 

 鈴木邦夫と山村哲夫のスーツアクティングは壮絶であ

った。

 

 怪獣と怪獣が意地と意地をぶつけて雪の中で戦う。

 

 満田監督は、「激闘」にドラマの山場があることを教え

てくれた。

 

 バトルに関しては、「ミクラス対ガンダー」が「セブン対

ガンダー」よりも長いし、凄みも大きい。

 

 セブンが太陽エネルギーを得るシーンは、壮麗で感動

的だ。

 

 太陽の恵みはいのちを育てていることを改めて教わ

った。

 

 金城哲夫が問い続けている「いのち」が、無言のうち

にこのセブン復活シーンに確かめられている。

 

 太陽エネルギーを得たセブンは強いヒーローとして

復活していた。バトルにおいてもアイスラッガーでガン

ダーを圧倒する。

 


 第25話は自然の脅威、もののふの道といった重い問

題を重厚に問う傑作である。

 

 ポール星人はセブンのアイスラッガーよりも、地球人

の忍耐に脅威を覚える。地球侵略を狙うポール星人に

とって、地球人が極寒の厳しさを耐え抜いたことは、驚愕

の事実であった。

 

 絶望的な状況・困難に満ちた逆境にあっても、夢と希望

と生きる意欲を忘れずに、奮闘・精進する。

 

 金城哲夫はこのことを教えてくれた。

 
 この「忍耐」が、「いのち」を尊ぶ道を支えてくれるものと

なる。


 『ウルトラセブン』の大きな主題として、「地球防衛といっ

ても一人の地球人の命を救わなければ成り立たない」とい

う事柄が打ち出され確認された。

 

 一人一人の命を守りたい。

 

 ひとつひとつの生命を尊びたい。

 

 この願いにモロボシ・ダンは生き方の根本課題を確かめ

打ちこんで行く。自身を犠牲にしてでも地球を守りたいとい

う心に全てを捧げて行く。

 

  太陽光を受けた銀世界に立つモロボシ・ダン。

 

  森次浩司の表情は輝いている。

 

 

                             文中敬称略


 

                                 合掌


 

                            南無阿弥陀仏


 参考文献

 森次晃嗣著

 『ダン モロボシ・ダンの名をかりて』

 (2000年、扶桑社文庫) 


 

 参考資料

 『ウルトラセブン』 DVD VOL.6

 

 ☆2014年12月31日に加筆改訂しました☆


 

                                セブン