酔いどれ天使 | 俺の命はウルトラ・アイ

酔いどれ天使

『酔いどれ天使』

映画 98分  トーキー 白黒

昭和二十三年(1948年)四月二十七日公開

製作国 日本

製作言語 日本語

 

製作  東宝

 

製作  本木荘二郎

脚本 黒澤明

   植草圭之助

 

撮影 伊藤武夫

美術 松山崇

録音 小沼渡

 

演出補佐 小林恒夫

照明 吉沢欣三

音響効果 三縄一郎

編集 河野秋和

現像 東宝フィルムラボラトリー

特殊効果 東宝特殊技術部

 

音楽 早坂文雄

挿入歌 『ジャングル・ブギ』

作詞 黒澤明

作曲 服部良一

歌 笠置シヅ子

ギター演奏 伊藤翁介

演奏 東宝交響楽団 

   東宝モダンニャーズ

 

出演

 

志村喬(真田)

三船敏郎(松永)

 

山本礼三郎(岡田)

木暮実千代(奈々江)

中北千枝子(美代)

千石規子(ぎん)

笠置シヅ子(ブギを唄う女)

 

進藤英太郎(高浜)

清水将夫(親分)

殿山泰司(ひさごの親爺)

久我美子(セーラー服の少女)

飯田蝶子(婆や)

生方功(チンピラ)

谷晃(ヤクザの子分)

堺左千夫(ギターの与太者)

大村千吉(ヤクザの子分)

宇野晃司(ヤクザの子分)

川崎堅男(花屋)

木匠久美子(花屋の娘)

川久保とし子(ダンサー)

登山晴子(ダンサー)

南部雪枝(ダンサー)

城木すみれ(姉御)

 

 

監督 黒澤明

 

笠置シズ子→笠置シヅ子 

鑑賞日時場所

平成二十年(2008年)一月十三日

京都文化博物館 映像ホール

 

 ごみ捨て場のどぶ池の近くにある

「眞田医院」の医師眞田は気性が激

しく、口も悪いが、根は優しい男だ。

 

 傷ついて自暴自棄になっているや

くざ松永を励まし、時には叱ってい

る。

 

 松永の兄貴分岡田が出所して、「眞

田医院」で務める女性に対して「俺の

女だから出せ」と要求する。眞田は拒

否する。

 

岡田が怒ると、眞田は厳しい言葉を述

べる。

 

 「一人前の人殺しの面、するな。

 俺のほうがよっぽど殺してるよ」

 

 

 松永は「舎弟の自分の顔を立てて欲

しい」と岡田に懇願して引き取っても

らう。

 

 眞田は「仁義なんてやくざ仲間の

安全保障に過ぎん」と冷徹に言う。

 

 松永の娼婦奈々江は岡田のもとに走

り、親分も自分を利用してるだけと知

った松永は、岡田に決闘を挑むが、返り

討ちに合ってしまう。

 

 眞田は松永を更生することが無理

だったことを悔やみ、亡き松永を罵

倒するように厳しく彼の生き方を責め

る。


 

 松永役の三船敏郎が迫力豊かで、

野獣のような凄みを見せる。志村も

短気だが熱き医師眞田のファイトを

力強く表現している。

 

 植草は、若きヤクザを「社会の犠牲

者」として捉えたのに対して、黒澤は

「意志の弱い愚劣者」として描いた。

 

 黒澤の意向はそのまま眞田の台詞

となって現れている。

 

黒澤の演出には、パワーが溢れている

が、他者を見下してヒューマニズムを

説教する姿勢に、自分は反発を感じる。

 

 黒澤明の作品に敬意を持っているが、

演出姿勢には疑問がある。

 

 観客を「未熟な愚劣者」と見なして、「教

育し、変えてやろう」という方向性よりも、

自らの内面に暴力性や罪を確かめる作

品に、自分にとっての立脚地を感じるの

であります。

 

 やくざを見下しているだけの視座は

差別である。

 

 黒澤明監督の傲慢な教育者根性は

問題である。

 

 映画を自己愛の拡大の為に利用して

いると言わざるを得ない。

 

 観客に学ぼうとしない映画人は表現者

として失格である。

 

 『酔いどれ天使』の傲慢不遜なメッセージ

に強い憤りを覚える。

 

 ◎

 2008年1月16日発表記事を2024年4月2日に

再編している。

 ◎

 

                     合掌