ウルトラセブン 消された時間 (二) | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 消された時間 (二)


 この記事は2007年10月15日に発表した

「ウルトラセブン 消された時間」

http://ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-10053122187.html

の続稿です。「消された時間」及び『ウルトラマン』

「さらばウルトラマン」の物語の核心をネタばれし

ています。未見の方はご注意下さい。


 製作第6話・放映第5話「消された時間」は、製

作第5話・放映第1話「姿なき挑戦者」と同時期に

製作され、共に巨匠円谷一監督によって演出さ

れました。


 テレビに現れるビラ星人が、眠れるユシマ

博士を起こして洗脳を開始するシーンは、怖い

ですねえ。演出の幻想的な味わいも凄いもの

があると思います。


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 ヒトラーは映像を使って、ドイツ国民の心を掴

みました。映像は人の心に強烈な印象を与え

ます。古来権力を持つ人は、国民に自分の政策

を納得させ、気分を高揚させるために映像を巧く

用いてきました。


 「消された時間」が放映されていた1967年頃、

鋭い傑作を発表され、時代に厳しく問題提起し

ていた大島渚監督の名言に、「敗者は映像を

持たない」というものがあります。

 映像を持って主張を伝えられるのは、争いに

勝ち権力を握った人であるという厳しい教えで

す。


 強大な権力を持った存在は自分に都合の悪い

映像は隠して、他者が「どうすれば自分の言うこと

を聞くか?」を考えながら映像を作り出す訳です。


 これは人類が映像を得てから、どこの国でも言

えることではないかなと思います。


 ビラ星人の洗脳は声高な声ではなく、穏やか

で落ち着いた口調でなされます。先輩が後輩に

諭すようなムードがあります。穏和なムードにも

恐ろしさがあります。


 演ずる声優さんは、辻村真人氏です。第36話

「必殺の0・1秒」においてもヒロタを洗脳する宇宙

人べガ星人役を担当されます。36話の感想で書

きますが、ヒロタの場合、洗脳されなくても、宿命の

ライバルソガといずれは対決していたと思います。


 しかし、ユシマ博士の場合は違います。自身の

研究を地球防衛の為に捧げたいという気持ちが

あります。ビラ星人には、博士の意志を奪って、知

識と才能を自分の利益の為に利用したいという恐

るべき狡猾さがあります。
 「優秀な学者を洗脳して、その頭脳と技術が欲し

い」という冷酷さです。


 ビラ星人は自身がバトルにおいては自身が体力

的に弱いために若き博士の力を用いて基地の攪乱

作戦を行わせるという所にも老獪さが溢れています

ね。


 機械室における洗脳でも、ビラ星人は額縁から

メッセージを博士に発します。自らは姿を現さず、

「顔と顔を合わせる関係」を拒否して、安全地帯に

身を置いて、離れた場所から指示を出して、若者

を意のままに動かすという方法を用いています。


 博士の誠実な在り方と洗脳を受けてからの残忍

な姿に、ひとりの中にある「二つの顔」のテーマが

浮かび上がってきます。

 洗脳された博士が危険視しているダンを陥れて、

罠に填めていく過程も怖いですね。博士の冷酷さ

を山本耕一氏が鋭く探求されています。



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ウルトラアイは我が命-ばとる
 第5話の大きな山場・見せ場は、神社周辺に

おけるウルトラセブン対ビラ星人のバトルでしょう。

バトルシーンの中でも白眉と思われます。『ウルト

ラセブン』は海外での紹介・放映を意識して、なる

べく西洋的・近代的な場所にバトルシーンの場が

位置付けられることが多かったのですが、今回は

神社においての戦いになりました。

 

 東洋の伝統の場においての戦いは、とても新鮮

なムードがありました。セット・ミニチュアも素晴らし

いですね。


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 勝負の行方は、老獪なビラと若々しい肉体のセブン

の戦いなので、予想は難しくありません。しかし、とて

も見応えがあります。視聴者は屈強のセブンに挑む

老体(と思われる)ビラに同情に似た気持ちを抑えら

れないのではないでしょうか?「悪い奴」とわかってい

ても、老いた存在が強大な相手に挑むというバトルに

浪漫に似たものも感じるからではないでしょうか?


 洗脳の場では安全地帯に隠れていたビラも、万策尽

きて姿を現して、強敵セブンに挑まざるを得なくなりま

す。背水の陣に立つ者の悲壮さを、クライマックスのビ

ラ星人に感じます。

 

 『セブン』と同時期に始まる倒叙ミステリーの傑作テ

レビドラマシリーズ『刑事コロンボ』において、視聴者が

犯人に同情してしまう気持ちを想起します。


 上西弘次氏のアクション、今回も輝いています。操演

のビラ星人も迫力があります。成田亨先生作の宇宙人

・怪獣はとても魅力的でカッコいいですね。
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 セブンのビラへの巴投げ、鮮やかに決まります。


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 ビラ星人もキックで必死の反抗を試みてセブンを

苦しめます。


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 セブンをアイスラッガーを一閃してビラ星人を斬り

ます。


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 真っ二つにされたビラ星人の肉体が炎上する場面

には、哀愁も感じますね。


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 ラストで洗脳から覚醒したユシマ博士が、洗脳され

ていた時の記憶がなくて、きかされて吃驚する場面も

印象的です。

 本人のみが宇宙人との関わりによって行動していた

時代の記憶なくて、視聴者は何が起こったかを見てい

たという構成には、『ウルトラマン』第39話「さらばウル

トラマン」のハヤタを想起します。

 

 ハヤタは義の宇宙人ウルトラマンにいのちを与えら

れての行動であったので、分離してからの本人が、もし

知れば名誉のことであったでしょう。

 しかし、ユシマ博士は冷酷なビラ星人に利用・悪用

されていたことを知らされ震えてしまったことと思われ

ます。


 出会う宇宙人によって、出会った地球人のその後の

歩みも大きく変わってくる。円谷一監督が演出された

「さらばウルトラマン」と「消された時間」の二本を見ると

そのことを痛感致します。



 言動にせよ行動にせよ、他者から教わったものを経て

発せられたものです。他者からの影響を受けずに何かを

考え示し行っていくことは無理であると思います。影響を

受けながらどうのように歩んで行くかが大切であると思い

ます。


 「私は覚醒していて、洗脳なんか受けていない」という

思いは大事だと思います。しかし、「受けていない」という

心理があってもそれが事実かどうかは、自身にも他者に

もわからないのではないでしょうか。


 繰り返しになりますが、はっきりとわかっている唯一つ

のことは、あらゆることは「全くわからない世界」にあるこ

とではないでしょうか?


 繰り返しになりますが、「わからない世界」の中で、わか

らないままに問い尋ねられたことを受けながら歩む。しん

どいし苦しいけれども悩み迷いながら日々一歩一歩進ん

でいく。



 このことが私に与えられた道であることを実感致します。



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参考資料
『ウルトラセブン』 DVD VOL.2

 

2011年8月29日に加筆しました。




                              合掌