ウルトラセブン 狙われた街(一) | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 狙われた街(一)

『ウルトラセブン』「狙われた街」

テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 昭和四十二年(1967年)十一月十九日

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 

監修 円谷英二    

 

プロデューサー  末安昌美
脚本         金城哲夫    

 

撮影         福沢康道

美術         成田亨

            岩崎致躬

照明         新井盛       

音楽         冬木透

録音         松本好正

効果         知久長五郎

編集         柳川義博

助監督       山本正孝

製作主任     高山篤

製作担当者    塚原正弘

 

特殊技術

撮影          鈴木清

美術          池谷仙克

操演          平鍋功

照明          小林哲也

光学撮影       中野稔

助監督         円谷粲

制作主任       熊谷健

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社


出演

中山昭二(キリヤマ隊長)

 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)

 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)  

阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ) 

   

岡本四郎(ライフル乱射の青年)

草間璋夫

坪野鐘之 

吉頂寺晃  

橘正晃

 

佐渡絹代  

大塚秀男

伊藤久哉(カネダ博士)  

穂積隆信(刑事)

浅川みゆ起(アンヌの叔母友里愛子)   

鈴木治夫

 

上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)



特殊技術     大木淳 
 

監督        実相寺昭雄

 

制作        円谷プロダクション

           TBS

 

森次浩司→森次晃嗣

菱見百合子→ひし美ゆり子

石井伊吉→毒蝮三太夫


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 川崎における工場の街。児童達が下校している。

恐らく時は午後だろう。

 

 児童達の中には、友里アンヌ隊員の従兄弟の

ヒロシ少年もいた。

 

 タクシーに乗っている乗客の女性が悲鳴をあげ

ている。

 

 「助けて、誰か来て!助けて」

 

 タクシーが止まる。客の女性は車外に出て助け

を求める。

 

 児童達はじっとその光景を見つめる。

 

 車から運転手の男が出てきて、女性客の頬を叩き

暴力を振う。

 

 工場の騒音が響く。

 

 警官が現れて、運転手を取り押さえる。運転手は

倒れる。女性客は泣く。


 

 ウルトラ警備隊のポインターが到着する。

 

 子供達が喜ぶ。

 

 ヒロシ「アンヌさん」

 

 アンヌ「ヒロシちゃん、御父様が大変なのよ!早く

      乗って。」

 

 ヒロシ少年を乗せて、ポインターは走り出す。

 

 ヒロシ「パパがどうかしたの?」

 

 アンヌ「御父様の飛行機がね・・・(泣く)」

 

 ヒロシ少年の父親友里政二郎は日本民間航空きっ

ての名パイロットとして著名な人物であったが、飛行機

事故を起こして事故死した。

 

 葬儀では、ヒロシの母親が泣き崩れ、アンヌが支え

る。

 

 モロボシ・ダンは、参列者の発言を聞き、頻発してい

る事故や暴力事件には、全て北川町の住民が関わっ

ていることを確かめる。

 

 作戦室


 

  アンヌ「了解、隊長。フルハシ・ソガ両隊員は、現在

       第3ハイウェイをパトロール中。30分後に基

       地に帰ります。」

 

  キリヤマ「第3ハイウェイと言えば、北川町の付近だ

        な。亡くなったアンヌの叔父さんの家もこの

        付近だな。」

 

  アンヌ「隊長。叔父の事は、もう・・・・・・。」

 

  キリヤマ「言わない約束だったな。ごめん、ごめん。」

    
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 北川町の煙草の自動販売機前。

 

 フルハシ・ソガ両隊員がパトロールをしている。フル

ハシが自動販売機から煙草を一箱購入する。

 

 すると銃声が響いた。

 

 ライフルを乱射している男がいた。

 

 警察官が現れる。ソガがライフルを撃ち落とし、フルハ

シがライフル魔の男に体当たりして、取り押さえる。

 

 男は倒れ込む。男に撃たれたドラム缶の穴から水が

流出している。

 

 メディカルセンター。

 

 ダン・ソガ・キリヤマ・アマギが語り合う。アンヌは、フ

ルハシの治療・介護をしている。ライフルを乱射したサ

ラリーマンの青年も又、北川町の住民であった。

 

 ダン「又しても北川町の住人だ。これは単なる偶然だと

    は思わない。何かある。きっと何かある。」

 

 ダンは、ライフルを乱射した青年が第四分署で取り調

べを受けていることを聞き、署に向かい、担当刑事の許

可を得て、取り調べに同席する。

 

 刑事「驚いた奴ですよ。自分のやった事を全く覚えて

    ないなんて言うんですからね。」

 

 青年「本当なんです!刑事さん。ライフルをぶっ放すな

    んて!そんな恐ろしい」

 

 刑事は「黙れ!」と叱責し、青年がフルハシ隊員に傷を

負わせたことを語るが、青年はそれでも「何も知らない」

と事件が記憶にないことを重ねて強調する。

 

 ダンは青年が罪をごまかしているとは思えなかった。本当

に忘れてしまっているようだった。刑事は事件当日の行動を

問い質す。

 

  刑事「トースト二枚とミルクを飲んで。それからどうした?」

 

  青年「日曜日だし、映画でも見ようと思って、家を出ました。」

 

  刑事「それは何時頃だ?」

 

  青年「十時頃だったと思います。新聞と煙草を買って」

 

  刑事「新聞は何処で買った?」

 

  青年「駅前の自動販売機です。それで映画には時間が

     あったんで、行きつけの銃砲店に寄ったんですよ。」

 

  ダンは青年の言葉をじっと聞く。

 

 ポインターをダンが運転しているとトラックが近づき、前方

から石を降ろして停車した。不審に思ったダンはポインター

を停めて、トラックを見ると、運転手は居なかった。


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  ダン「誰だ!?姿を見せろ!堂々と出てこい」


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  何者かの声が響いた。

 

  声「モロボシ・ダン。いや、ウルトラセブン!我々の邪魔

    をするな!これは命令だ。今すぐに手を引け。君を倒

    す事は問題ではない。だが、同じ宇宙人どうしで傷つ

    け合うのは愚かな事だ。もう一度忠告しておく。北川

    町に近づくな。ウルトラセブン。」

 

  ダン「やっぱり。それにしても、一体何を考えているんだ?」

 

 ダンが想像していた通り、侵略者は北川町で何事か画策して

いたのだった。そして、ダンがウルトラセブンであること熟知して

いる情報通であった。

 

  作戦室。

  

 メディカルセンターで療養していたフルハシが現れる。ダンが

容態を聞くと、フルハシは順調に回復をしていることを語る。

 

  フルハシ「メディカルセンターではアンヌ隊員がうるさく

        ってね。ここで一服させてもらうよ。」

 

 フルハシが点火して一服吸うと、顔が赤く光り出し、眼光が鋭

くなる。

 

  眼が鋭くなったフルハシは突然暴れ出し暴力を振い、ソガ・

アマギ・ダンに取り押さえられ、倒れ込んで眠り出した。

 

 キリヤマは、フルハシについて「おかしな奴だな」とメディカルセ

ンターに連れて行くように指示する。

 

 しばらく経って、ソガがフルハシはメディカルセンターにおいて

熟睡していることを報告し一服煙草を吸う。

 

 ソガの顔が赤く光り、ウルトラ・ガンを構えた。

 

 ダン「ソガ隊員!」

 

 暴れるソガをダン・アマギが取り押さえる。

 

 ダンはキリヤマ隊長に、フルハシ・ソガ両隊員が喫煙直後に

暴れ始めたことを報告し、煙草に「原因がある」ことを見出す。

 

  キリヤマ「よし、化学班にまわせ!」

 

 メディカルセンター

 

 フルハシ・ソガは熟睡し、アンヌが看護している。ダンは眠れ

るフルハシに声をかけて、「起きて下さい。煙草を何処で手に

入れたんです?」と問いかけるが、フルハシは起きない。

 

 アンヌ「ダン!無理よ。二人共昏睡状態なんだから。」

 

 ダン「こんな大事な時に!そうだ。アンヌ。一緒に来てくれ。」

 

 友里家。

 

 亡くなったアンヌの叔父の家だ。アンヌの叔母とヒロシ少年は

ダン・アンヌから煙草の問題を尋ねられる。

 

 障子が開き、庭に緑が茂っていることが窺える。

 

 叔母は亡き叔父がヘビースモーカーであったことを語る。ダン

はアンヌの叔父が何処で煙草を購入したかを聞くが、叔母は「ま

ちまちであったと思います」と答える。アンヌは事故当日か前日に

「叔父様」が「この街の何処かで煙草を買った」ことを確かめる。

 

  ヒロシ「ママ、僕知ってるよ。」

 

  アンヌの叔母「あの朝、ヒロシと散歩に出かけましたわ。」

 

  ダン「坊や!その煙草屋さん、覚えてるかい?」

 

  ヒロシ「朝だから未だ煙草屋さん、閉まってたよ。」

 

  ダン「じゃあ、何処で買った?」

 

  ヒロシ「駅前の自動販売機だよ。」

 

 ダンは目を大きくして、刑事とライフル乱射青年の会話を想起

する。青年も「駅前の自動販売機」において煙草を購入したと語

っていた!

 

 ダン「駅前の自動販売機だ!間違いない!」

 

 ダン・アンヌが駅前の自動販売機に急行すると、煙草は売る

切れだった。アンヌは「遅かったわね」と嘆くが、ダンは「煙草を

入れ込みに来る」者がいることを予想し、二人は自販機近くの

喫茶店から張り込む。

  

 

 化学班のカネダ博士がフルハシ・ソガが喫煙した煙草の中に

入れられた赤色の結晶体を分析し、キリヤマ隊長に結果を報告

する。

 

 結晶体は、宇宙ステーションV3隊員が持ち帰った宇宙芥子と

似ており、地球には存在しない物であった。

 

  キリヤマ「この赤い結晶体はどんな性質を持っているんだ?」

 

 
  カネダ「それに冒されると他人は全て敵に見えるという効力が 

      あるようです。

 

  キリヤマ「他人が敵に?」

 

  カネダ「そうです。理性や感情を失い、敵を殺す殺意を持った

      人間だけに変わってしまうんです。それを煙草に取り込

      むとは恐ろしい事を考えたもんです。人類の約半分くら

     いは煙草を吸ってるんですから。」

 

  キリヤマは、アマギを通じて、煙草に秘められた結晶体の怖さ

をダン・アンヌに知らせる。

 

 喫茶店

 

 ダンはアンヌの叔父・タンカー爆破犯人・ライフル乱射の青年が

赤い結晶体によって、理性・感情を失い、事件を起こしてしまった

ことを確認する。アンヌは叔父が結晶体の怖さを知らぬままにフ

ライト前に一服煙草を吸ってしまったことを、無念に思い、悲しみ

を覚える。

 

 自動販売機の前に車が停まり、中から黒服の男が煙草を入れて

車で何処かに向かった。この光景を見たダン・アンヌはタクシーで

追跡する。煙草を自販機に入れた黒服の男は北川町の工場地帯

のアパートに前に停車して、建物の中に入って行った。

 

 タクシーからダンとアンヌが出る。

 

 時刻は夕方になろうとしていた。

 

 ダン「アンヌ。君は此処で待っててくれ。」

 

 アンヌ「一人で大丈夫なの?」

 

 ダン「何かあったら、すぐに本部に知らせるんだ。」

    

 アンヌ「了解」

 

 アンヌは夕陽の光を受ける。

 

 野球の実況中継の声が響く。

 

 アンヌの表情には愛するダンの安否を気遣う不安が

浮かぶ。

 

 ダンは一人でアパートに入り黒服の男を追うが、廊下

で猫の鳴き声にドキッと緊張する。

 

 アパートの一室にダンは引き込まれた。驚くと一人の

宇宙人が居た。無人トラックで威嚇し声を響かせてきた

存在であるメトロン星人であった。

 

 メトロン星人「ようこそ、ウルトラセブン!

         我々は君の来るのを待っていたのだ。」

 

 ダン「何!?」

 

 

 

 メトロン星人「歓迎するぞ。何ならアンヌ隊員も呼んだ

         らどうだい?」

 

 メトロン星人は畳の上の卓袱台に着座する。

卓袱台5


卓袱台

 ダンも座る。

 ダン「君達の計画は全て暴露された。おとなしく

     降伏しろ。」

ウルトラアイは我が命-卓袱台2

 メトロン星人「はっはっは。我々の実験は十分成功

         したのさ。」

 

 ダン「実験?」


 

 メトロン星人「そうだ。赤い結晶体が人類の頭脳を狂

         わせるのに効果があることが解った。

         教えてやろう。我々は人類が互いに

         ルールを守り、信頼し合って生きている

         ことに目を付けたのだ。地球を壊滅させる

         のに暴力を振う必要はない。

         人間どうしの信頼感を無くすればいい。

         人間どうしは敵視し、傷つけ合い、やがて

         自滅して行く。

         どうだ、いい考えだろう?」

 

  ダン「そうはいかん!地球にはウルトラ警備隊が居る

      んだ!」

 

 メトロン星人「ウルトラ警備隊?怖いのは君だけだ、ウ

         ルトラセブン。だから君は宇宙に帰っても

         らうことにする。邪魔だからな。」

  
      

 メトロン星人は襖を開け、アパートの中に忍ばせて

いた円盤の中の操縦室に入る。

 

 ダンは追う。

 

 メトロン星人はダンを乗せて円盤を出発させる。 
ウルトラアイは我が命-町 まち  街


ウルトラアイは我が命-工場地帯


工場

 夕陽の赤い光がメトロン星人とダンが語り合ったアパー

トを照らす。

円盤

 そのアパートが開き、中から円盤が現れ、夕焼けの

空に飛翔した。

 

 アンヌはこの光景を見て、作戦室に通報する。

 

 ソガはアパートから円盤が出て、中にダンがいること

を聞く。

 

 キリヤマ隊長はホーク1号で追跡する。


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 ホーク1号が夕焼けに円盤を追うと、円盤は二機に分離

した。

 

 ホーク1号は一機を攻撃する。

 

 一機は傷を受けて墜落する。

 

 ダンはウルトラ・アイでウルトラセブンに変身し円盤から

出て巨大化して工場地帯に立脚する。


 

 円盤は爆発するが、メトロン星人も脱出し巨大化して川を

挟んでセブと睨み合う。

 


ウルトラアイは我が命-セブン メトロン

 

 夕陽を背にして、二人の宇宙人が闘志を燃やす。

7 メトロン


ウルトラアイは我が命-セブン メトロン 小


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ウルトラアイは我が命-セブン メトロン4
ウルトラアイは我が命-セブン メトロン3


ウルトラアイは我が命-7 メトロン3


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 メトロン星人が走る。

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 セブンも走る。


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 夕陽を受けてセブンは輝く。
 

 

二人の宇宙人は互いに飛び上がって激突する。


シルエット3

 
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 キリヤマ隊長のホーク1号は、メトロン星人の二機

目の円盤を追う。

 

 キリヤマ「残るは一機だ!」

 

 ホーク1号は遂にメトロン星人の円盤の二機目も

倒した。


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ウルトラアイは我が命-対決
ウルトラアイは我が命-メトロン 7


 

 セブンはメトロン星人を追う。

 

 闘志の熱さでは、セブンが智恵者メトロン星人

よりも強かった。

 


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 臆したメトロン星人は逃げる。


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 メトロン星人は物凄いスピードで疾走する。
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 メトロン星人は空を飛んで逃げる。
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セブンは回転しながらアイスラッガーを放つ。



メトロン にげ

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 アイスラッガーはメトロン星人の身体を両断す

る。



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セブン 8話

 セブンはアイスラッガーを頭部に戻す。


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 エメリウム光線を発射する。


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 セブンが放ったエメリウム光線はメトロン星人

の遺体を焼き爆破する。


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 地球人に赤い結晶体の煙草を喫煙させて、争い

を惹起させて、地球を壊滅させようとするメトロン星

人の侵略は、ウルトラセブンとウルトラ警備隊の勇気

ある働きで阻止することが成り立った。

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 ウルトラセブンは夕陽を受けて立つ。


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 ナレーター「メトロン星人の地球侵略の計画は

         こうして終わったのです。人間どう

         しの信頼感を利用するとは恐るべ

         き宇宙人です。

        

         でも、ご安心下さい。

         このお話は遠い遠い未来のお話で

         す。

 

         え、何故って?

 

         我々人類は今、宇宙人に狙われる

         程、お互いを信頼していませんから。」

ウルトラアイは我が命-夕陽

 

  ☆☆☆

  金城哲夫・実相寺昭雄のチームが熱く燃やした

 ウルトラの命

  ☆☆☆

  

 金城哲夫の脚本と実相寺昭雄の演出が一本のドラマ

を生んだ。

 

 夢のコラボが遂に実現した。

 

 ウルトラシリーズを支え続けてきた脚本家と監督である。

共に良きライバルとして相手の情熱を熟視していたことは

確かと思われる。

 

 金城哲夫は昭和十三年(1938年)七月五日に誕生した。

沖縄県の出身である。「命どぅ宝」の教えを大切にしていた

ことは脚本作品からも窺える。

 

 玉川大学を経て円谷英二に出遇い、円谷プロの制作作品

においてシナリオライターとして大活躍した。

 

 豊かな想像力で宇宙を思い、精密・精緻な構成のシナリオ

を数多く執筆した。

 

 『ウルトラQ』『ウルトラマン』において数多くの歴史的傑作を

発表した。

 

 後に第一期ウルトラシリーズと呼ばれる『ウルトラQ』『ウルト

ラマン』と本作『ウルトラセブン』の三本が大宇宙の神秘の中

でただ一つの生命を生きることの尊さを明かす大傑作を発表

し、視聴者の心に大いなる感動を与えたが、シリーズを支え

た金城哲夫の働きは大きい。

 

 円谷英二を父として、金城哲夫を兄として、ウルトラシリーズ

は昭和四十年代に飛翔したと言えると思う。

 

 実相寺昭雄は昭和十二年(1937年)三月二十九日東京に誕生

した。

 

 中国青島に育った。早稲田大学第二文学部フランス文学科を卒

業後、TBSに入った。

 

 社外出向監督として 『ウルトラシリーズ』において、神秘と幻想の

大傑作を数多く発表した。

 

 川崎高・万福寺百合のペンネームでシナリオも書いた。『ウルト

ラQ』では「キリがない」「バクたる」の脚本を書いたが、残念ながら

映像化は実現しなかった。


 

 昭和四十一(1966年)・四十二年(1967年)は『ウルトラQのおやじ

 』『ウルトラマン前夜祭』の演出を担当し、『ウルトラQ 空想特撮

シリーズ ウルトラマン』においては第十四話「真珠貝防衛指令」・

第十五話「恐怖の宇宙線」・第二十二話「地上破壊工作」・第二十

三話「故郷は地球」・第三十四話「空の贈り物」・第三十五話「怪獣

墓場」を監督した。

 

 『ウルトラマン』における六本の演出作品の脚本は全て佐々木守

が担当した。「地上破壊工作」のみは大部分を実相寺が執筆した

と著書で確かめている。

 

 金城哲夫の物語は命を生きて愛することの尊さを深く探求した

直球ストレートのドラマである。

 

 実相寺昭雄・佐々木守のチームが書いた物語は不思議の世界

であり、変化球の劇である。

 

 相撲ならば金城ドラマは突き押しの正攻法であり、実相寺・佐々

木ドラマはがっぷり四つから頭を下げて出し投げや捻りで相手を

崩す技巧・技能の道であると言えるかもしれない。

 

 金城哲夫と実相寺昭雄は昭和四十年代のウルトラスタッフの世界

においてそれぞれの道で大いなる偉業を成し遂げた二大英雄である。

 

 共に刺激し合い切磋琢磨していた事は間違いないと思われる。

 

 昭和四十二年(1967年)十一月十九日放映『ウルトラセブン』第八

話「狙われた街」において、ファンにとっては夢のチームであった金

城脚本・実相寺監督の作品が遂に実現する事となった。

 

 この作品の後、二人の脚本演出のチームは無かった。

 

 ウルトラの歴史において、唯一無二の金城実相寺チームのドラマ

なのである。

 

 ミステリーと神秘と生命の物語として、永遠不滅の輝きを放ってい

る。

 

 冒頭の北川町の光景は怖い。児童達が下校の帰路を歩んでいる。

タクシーから女性客の悲鳴が聞こえる。運転手が逃げる女性客を殴り

倒す。

 

 子供達は恐怖を覚えその惨状をじっと見つめる。

 

 警官が来て犯人を取り押さえると、犯人の男は昏倒して眠りこんで

しまう。

 

 金城哲夫が描く冒頭は鋭く、ミステリードラマとして凄みを見せる。

 

 ポインターが現れ、子供達は喜び、ヒロシ少年は従姉妹のアンヌ

隊員と会える喜びで胸がときめく。

 

 だが、アンヌが現れたのは悲報を伝える為だった。

 

 ポインター車内でヒロシが悲劇を知らないことを思い、どのように

知らせたらよいか迷うアンヌの苦悩は深い。

 

 思い切って伝えた時、叔父のとヒロシの哀しみを思って、アンヌは

思わず涙声になる。

 

 金城の書く悲劇は重く深い。

 

 寺院で営まれたアンヌの叔父の葬儀において、参列者が名パイロッ

トであった故人を偲びつつ、北川町で怪事件が頻発していることを語り

合う。

 

 その会話をじっと聞くダンの表情を、実相寺監督は映す。

 

 森次浩司の真剣な表情が、ダンの推理の深さと、アンヌの悲しみを

思う心を表している。

 

 北川町の煙草の自販機前のシーンは鋭い。フルハシとソガがパトロー

ル中に煙草を買い、のどかな日和を確かめる。そこでいきなり起こった

ライフル乱射事件!この恐怖の描写も凄い。ライフル乱射の青年は微

笑むので怖さも一層強烈である。青年が警官やウルトラ警備隊に取り

押さえられた後、ドラム缶から水が吹き零れるカットも印象的だ。

 

 メディカルセンターんでは碁盤型の白黒の天井のもと、ウルトラ警備隊

隊員が語り合う。ここにも実相寺演出の鋭さがある。

 

 室内は暗い世界であり、人物は影を受けて映される。

 

 1972年ゴードン・ウィリスが『ゴッドファーザー』の撮影で鮮やかに魅せ

るが、実相寺は先駆けて既に1967年にその撮影で傑作を撮っていたの

だ!

 

 ダンが事件の説明を聞きながら推理を深める過程も、森次浩司の視線

で無言のうちに語る。

 

 金城脚本・実相寺演出の卓抜した映像の話法である。

 

 名優穂積隆信が刑事役で名演を見せる。刑事の厳しい追求に対して

思出だし得ることを精確に思い出して語る容疑者の青年。

 

 取り調べ室の場は、穂積隆信の刑事と岡本四郎の犯人に影が映り、

外には自然が鮮やかに映っている。室外は明るくて室内の人物には

影がかかっている。闇の中に覆われて生きる人々の不安と恐怖を反映

しているとも言える。

 

 穂積隆信の刑事と岡本四郎の犯人のシルエットに挟まれるようにして

森次浩司のダンの表情が映し出される。ダンは犯人の青年が嘘を言って

いないことを確信する。為したことの罪は重いが、北川町でしてしまった

暴挙を本当に覚えていないのだと確信する。

 

 ポインターを運転するダンにトラックが忍び寄って、捜査を妨害するシ

ーンも怖い。石が蒔かれダンがトラックを調査すると運転手がいない。

 

 この場の金城のミステリー描写は絶品である。

 

 アルフレッド・ヒチコック監督のミステリー演出に匹敵する巧さだ。

 

 姿を見せない侵略者にダンは用心する。

 

 ここで冬木透の幻想的で優しい調べが響く。

 

 この実相寺演出の音楽選曲の感覚も素晴らしい。暖かい調べが奏で

られることで、視聴者の侵略者に対する恐怖も倍増する。

 

 音楽の甘美さが、ミステリードラマを深く奏でる。

 

  ☆この記事は、平成二十六年(2014年)三月十九日に加筆・改訂

しました☆


 

参考文献

『ウルトラマン大全集』 1987年 講談社
『ウルトラセブン ベストブック』1993年竹書房
『ウルトラマンを創った男金城哲夫の生涯』 山田輝子著 1997年 朝日文庫

『ダン モロボシ・ダンの名をかりて』  森次晃嗣著  2000年 扶桑社文庫

『フィギュア王』 NO.118  2007年 ワールドフォトプレス

『ウルトラセブン ひみつ100超百科』2008年 講談社

『ウルトラ検定 公式テキスト』 2008年ダイヤモンド社

『語れ!ウルトラマン』 2012年 KKベストセラーズ

『ウルトラセブン 研究読本』 2012年 洋泉社

 

参考資料
『ウルトラセブン』 DVD VOL.2


 

                                合掌

 

                          南無阿弥陀仏

                   

                              セブン