ウルトラセブン 湖のひみつ | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 湖のひみつ

『ウルトラセブン』「湖のひみつ」

テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 1967年10月15日

製作国 日本

製作言語 日本語

 

監修 円谷英二

 

プロデユーサー 末安昌美

 

脚本 金城哲夫

 

撮影  永井仙吉

美術  成田亨

     岩崎致躬

照明  新井盛

音楽  冬木透

録音  松本好正

効果  西本定正

編集  柳川義博

助監督 山本正孝

製作主任 高山篤

製作担当者 塚原正弘

 

特殊技術

撮影 鈴木清

美術 池谷仙克

操演 平鍋功

照明 小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督 円谷粲

製作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社

 

 

 

出演
中山昭二(キリヤマ隊長)

 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)


 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

勝部義夫

山本浩

池田芙美夫

鈴木邦夫(エレキングスーツアクター)
西京利彦(ミクラススーツアクター)

 

金井大(釣りをしている男性)

高橋礼子(ピット星人人間体)


 

上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 高野宏一

 

 

監督 野長瀬三摩地

 

制作 円谷プロダクション

    TBS

 

☆☆☆

森次浩司→森次晃嗣

菱見百合子→ひし美ゆり子
石井伊吉→毒蝮三太夫

☆☆☆

 

ウルトラアイは我が命-pict000005

 ウルトラ警備隊の廊下を歩む、隊員モロボシ・

ダン、フルハシの表情には緊張感が漲っていた。

 

 作戦室。

 

キリヤマ「木曽谷付近に巨大な物体が
      落下したらしい。」

ウルトラアイは我が命-d 3

  ダン「直ちに出動します!」

 

アマギ「隊長」


 ソガ「今度は我々が」

 
ウルトラアイは我が命-アンヌ アップ 11
  アンヌ「あたくしも行きます。」

 


  キリヤマ「まあ、待て、子供の連絡で当て
        にはならんが、念のため一応
        調べておきたい。
       フルハシ・ダンすぐ、飛んでくれ」

 

 ダン、フルハシの二人がホーク3号で出動し

調査に向かう。

ウルトラアイは我が命-PICT00024

二人はホーク3号で木曽谷へ飛ぶ。
 
  湖で釣り人が糸を垂れている。


 


  ダン「木曽谷のこのへんに行きたいんです」

 


  釣り人「山の裏側ですがね、いやあ、ここ
      しばらく誰も入っていない所だから」

 


   糸の餌に魚がかかった!水着姿の少女

が平泳ぎで糸に近づき、勝手に魚を解き放
   って保護し、笑顔で手を振って去っていく。

 

 釣り人「おい、こら!俺の魚返せ!」


 
ウルトラアイは我が命-pict000001

  釣り人「逃げ足の速い娘だ。」

 

少女は魚らしき生物に話しかける。

 

 

 少女「危ないとこだったわ。貴方には未だ
     大事な役目があるのよ。注意しなきゃ
     だめよ。」


少女は、生物を湖に放つ。
ウルトラアイは我が命-pict0000011

  ダン・フルハシの二人は、捜索を続け
 ついに木曽谷に落下したと思われる宇

 宙船を発見する。
 
  ダン「あれだ、行ってみましょう」

 


  フルハシ「その前に武器の点検だ

 

  ダン「焦げてますね。」

 

   フルハシ「これは大気圏に突入した時の熱
         によるものだ。船の形から見て
         地球のものではないな」


 

   ダン「入ってみますか?」

  

   フルハシ「うん。」

 


 宇宙船に入った二人は、誰かが中にいること
に気付く。釣り人から魚を奪った少女ではないか。

 

  少女「ふふふ」

 

  フルハシ「君は」


 

  少女「さっきの方達ね、吃驚したわ」

 


  フルハシ「吃驚したのはこっちだよ。
        どうして、こんな所に?」

 


  少女「そこ迄は追ってこないと思った
     からよ。隠れ家にいいわね。」


  フルハシ「何故、あんなことをしたんだ?」

 

  少女「人間に食べられるなんて、

     魚がかわいそうだわ」

 

  ダン「(独白)待てよ、あの険しい山道を、どうし

     て我々より先に来る事が出来たんだ?

     それに呼吸一つ乱れていない。

      変だ」


 

 フルハシ「ここに居たら危ないよ。君には
       わからんだろうが、これは宇宙人
       が乗ってきた宇宙船なんだよ。」

 

 宇宙船内に催眠ガスが流れ、ダン・フルハシ・少

女の三名は眠ってしまう。

 宇宙人ピット星人が現れて、ダンのポケットから

ウルトラアイを奪う。


ウルトラアイは我が命-pict000003


ウルトラアイは我が命-pict000001

ダン、覚醒する。

 

  ダン「フルハシ隊員、フルハシ隊員!」

 

 

  フルハシ「どうしたんだ。」

 

 

  ダン「彼女を頼みます。」

 

 

  フルハシ「どこへいくんだ?」

 

 
  ダン「敵は僕の正体を知り、秘密のウル
     トラ・アイを奪ったに違いない。
     何者だろう、恐るべき奴だ。何と
     しても奪い返さねばならん。
     ウルトラ・アイは僕の命なんだ!」

 

 作戦室でキリヤマ隊長は、ダンが行方不明
になったことをフルハシから聞かされる。ソガ
とアマギが心配するが、隊長は「そう簡単にや
られる代物ではないよ、モロボシ・ダンは。」と
落ち着いて応答する。


 

 木曽谷で、ダンは敵を捜索している。


 

 ナレーター「その頃、モロボシ・ダンは
       必死に敵を追い詰めていた。」


 メディカルセンターからアンヌが、作戦室に
報告する。

 


  アンヌ「困ったお嬢さんだわ。注射もさせな
      いのよ。」

 

    
  キリヤマ「それで容体は?」

 


  アンヌ「まだ、苦しそうです。」

 


  フルハシ「よし、僕の責任だ。見に行って
       来ます。」

 


  メディカルセンター。

 少女が立腹している。
  


  少女「やめて、触らないで!」

 


  フルハシ「おとなしくして、アンヌさんはね、
       我が基地の名医なんだよ。基地三百
       名の隊員が健康なのも彼女のお陰な
       んだよ。
       悪い事は言わない。アンヌさんにち
       ょっとだけ診てもらいなさい。」


 

  少女「いいの、私。何ともないわ。
      この通り元気よ。あたし、触られたく
      ないの、誰にも。」


 

  フルハシ「我が儘言うんじゃないよ、折角親切に!」


 

  アンヌ「フルハシさん。もういいわ、何もしないわ」


 

  少女「我が儘言ってごめんなさいね、アンヌさん。
     私、とっても眠いの。」


 

 木曽谷において、ダンは、メディカル
センターの少女と瓜二つの少女を見つけ
追うが、取り逃がす。


 

  ダン「ダンよりアンヌへ、ダンよりアンヌへ。」


 

  アンヌ「ダン、一体どうしったって言うの。
      本部に連絡もしないで、単独行動
      を取ったりして!隊長がプリプリよ」


ウルトラアイは我が命-アンヌ アップ 10

  ダン「今はそれどころじゃないんだよ。それよ
     り、フルハシ隊員が基地に連れていった
     少女は?」

 

 

  アンヌ「彼女ならベッドでお昼寝の最中よ。」


 

  ダン「アンヌ、彼女を絶対に基地から出しては
     いかん。厳重に見張りを頼む」

 

 宇宙船に入った少女は、湖に向かって、
「エレキング、エレキング」と呼びかける。
ウルトラアイは我が命-pict000001

 

ウルトラアイは我が命-pict000004

 湖から巨大な怪獣エレキングが現れる。

ウルトラアイは我が命-pict000005

 釣り糸を銜えた、小さな生き物は、巨大化して

怪獣エレキングとなったのだ。


ウルトラアイは我が命-pict000003
少女が「エレキング」と呼んだ怪獣を見て、ダンは

危機感を感ずる。

 

ウルトラアイは我が命-しょうめん


ウルトラアイは我が命-pict000008


ウルトラアイは我が命-えれ よこがお
 エレキングはダンを襲う。

 

  ダン「ミクラス、頼むぞ。」


 ダンは、仲間のカプセル怪獣ミクラ

スに応戦させる。


ウルトラアイは我が命-pict0000010

エレキングとミクラスの激闘が展開する。

ウルトラアイは我が命-pict0000014


ウルトラアイは我が命-pict000001


ウルトラアイは我が命-pict0000015



ウルトラアイは我が命-pict0000017
 釣り人の通報によって、ウルトラ警備隊
は木曽谷東湖に怪獣が現れたことを知る。

 フルハシがビデオシーバーでダンに連絡
を取ろうとするが通じない。
 
 
 キリヤマ隊長は、フルハシ・アマギ・ソガ
と共にホーク1号で木曽谷へ向かう。

 メディカルセンターでは、覚醒した少女
が、アンヌを襲って気絶させる。

ウルトラアイは我が命-pict0000018

ウルトラアイは我が命-pict000001


ウルトラアイは我が命-pict000004


ウルトラアイは我が命-pict000006
エレキングの尻尾に縛られて、
感電したミクラスは衰弱する。

 
 ダン「ミクラス、戻れ」


 

一方円盤内の少女は、「エレキング、次の
作戦よ」と指令を送る。


 ウルトラ警備隊四隊員が乗るホーク1号は
木曽谷でエレキングに対峙する。

 

 キリヤマ隊員以下ウルトラ警備隊隊員たちは

湖に怪獣が現れたことを知らされ、ホーク1号で

現地に到着する。


ウルトラアイは我が命-ホーク1号


ウルトラアイは我が命-pict000001

  フルハシ「何だ、ありゃ?こっちへ向かって
       来るぞ。」


ウルトラアイは我が命-えれ5
 


  エレキングはホーク1号を攻撃し、ダメージ
 を与える・


  フルハシ「しまった!」

 ウルトラアイは我が命-pict000001
 地球防衛軍基地内では、少女がウエノ隊員に
光線を浴びせて気絶させ、基地を攪乱し、ホーク
2号に乗って、木曽谷へと向かう。
 

 宇宙船に入ったダンは少女からウルトラアイを

奪還する。

 

 


ウルトラアイは我が命-pict000001

ウルトラアイは我が命-pict000002

 円盤から出たダンは、ウルトラ・アイで
ウルトラセブンに変身する。


ウルトラアイは我が命-pict000004


ウルトラアイは我が命-pict000005

 キリヤマ隊長・フルハシ・アマギ・ソガが
ボートで湖を渡っていると、エレキングに見
つかり、襲われる。

ウルトラアイは我が命-pict000002

 セブンが救援にかけつける。

 

  アマギ「ウルトラセブンだ!」


ウルトラアイは我が命-pict000007

ウルトラアイは我が命-pict0000011


ウルトラアイは我が命-pict0000014


ウルトラアイは我が命-7 えれ  2

 

ウルトラアイは我が命-セブン チョップ

 

ウルトラアイは我が命-7

ウルトラアイは我が命-えれ  右

ウルトラアイは我が命-pict000004


ウルトラアイは我が命-対決 2


ウルトラアイは我が命-対決6

 地球防衛軍基地を攪乱した少女は、奪った

ホーク2号でキソ谷に到着して、円盤内に入り、

自身と瓜二つの仲間の少女を抱き起こす。

 

少女A「エレキング、ウルトラセブンを
     倒すのよ。」

ウルトラアイは我が命-pict000001

ウルトラアイは我が命-pict0000017


対決

ウルトラアイは我が命-pict000003

 激闘の末、セブンは、アイスラッガーで

エレキングを倒す。


ウルトラアイは我が命-pict000004


ウルトラアイは我が命-pict0000010


  少女A「エレキングが負けたわ。」

 

  少女B「早く逃げましょ。」

 

  
  少女A「作戦の失敗ね。ウルトラ・アイを盗み
       損なうなんて。」


  少女B「地球人を甘く見過ぎてたわね。」

  少女A「でも、諦めた訳じゃない。もっと強い

       怪物を育てて地球人を皆殺しにする

       のよ。」


 

  少女B「素敵だわ。あの美しい星は、

       私たちのものになるのね。」

 
  少女A「きっと成功するわ。

       地球人の男性は可愛い娘に弱いって

       ことがわかったんですもの。」

    

  少女二人は、本当の姿であるピット星人に戻る。


ウルトラアイは我が命-pict0000012

ウルトラアイは我が命-pict0000010

ウルトラアイは我が命-pict000005

 セブンはピット星人が乗る円盤を見つけ、円盤の

攻撃を跳ね返し、エメリウム光線で円盤を破壊し、

侵略者の横暴から地球を守る。


ウルトラアイは我が命-pict000004

ウルトラアイは我が命-pct001


 

― 「ウルトラアイは僕の命なんだ!」―


 森次浩司(後の森次晃嗣)氏は、昭和十八年(1943年)

三月十五日、北海道に誕生されました。御本名は、浩三さんです。

 十八歳で上京し、アルバイトやモデルをしながら俳優活動をされ、19
67年、円谷特技プロ演技課新野悟氏に注目され、『レッドマン』の主役

へのオファーを受けられます。『ウルトラQ』『ウルトラマン』に続く、円谷ドラ

マの主演に選ばれたことへの感激を、森次氏は、次のように語っておられます。

 

  ウルトラセブンはM78星雲からウ
  ルトラマンに代わって地球の平和
  を護るためにやってきた宇宙人。
  「がんばるぞ!」
  と僕の体にエネルギーが漲ってい
  た。(1)


 森次浩司氏にとって生涯の当たり役
となるモロボシ・ダンとの出遇い。氏
の「がんばるぞ!」という身心全体を
挙げて漲った清らかな意欲が、ダン役
の歴史的熱演の原点となったことを仰
ぎます。

 円谷プロとTBSは、『レッドマン』の
番組名を『ウルトラセブン』に改めて、
1967年初夏に、制作第一話として、第三
話「湖のひみつ」の撮影を開始します。

 監督は名匠野長瀬三摩地氏。
 野長瀬監督は、大正十二年(1923年)
八月三十日、京都市に誕生されました。
 1946年東宝に入社され、渡辺邦男氏・
・黒澤明氏・青柳信雄氏・堀川弘通氏・
本多猪四郎氏・杉江敏男氏の助監督を経
て、1964年テレビ界に移って、『ウルト
ラQ』『ウルトラマン』の演出を担当され、
数多くの神秘的な傑作を発表されました。
 南川竜のペンネームで脚本も書いてお
られます。

 満田 禾斉(後の満田かずほ)監督は、
ノークレジットで、声優・スタッフとし
て、この第三話「湖のひみつ」に参加さ
れています(2)。

 森次氏は、「湖のひみつ」の撮影を、
次のように確かめておられます。
 
 
  最初の撮影のときは、富士五湖の撮
  影でしたけど、はじめから走らされ
  てばっかりでした。
  毎日朝七時から夜十時くらいまで、
  ロケ撮影だからたいへんです。(3)


 厳しい暑さの中、早朝から走り回るアク
ションをされていたキャストの方々のご苦
労は、大いなるものであったことと拝察し
ます。

 本編見て、富士五湖周辺の自然の輝きが
圧巻です。

 ダンとフルハシが疾走する場面にも、緑
に大自然の息吹を感じます。緑の素晴らし
さに、ピット星人が「美しい星・地球」を
感じて、地球に恋してしまったことがよく
窺えます。

 

 この第三話「湖のひみつ」脚本を担当さ
れたのは、メインライター金城哲夫氏です。
 制作最初のエピソードから、「ダンにと
っての命とは何か?」というテーマを鮮や
かに打ち出します。

 

 ウルトラアイは僕の命なんだ

 

 ダンの内心の叫びは、ウルトラアイが、
いのちのかけがえのない尊さを明かすも

のであることを表しています。

 

 第三話は、鋭く精密な金城脚本と重厚深遠
な野長瀬演出によって、壮大で幻想的な物語
を繊細に語っています。

 冒頭のダンとフルハシの真剣な表情が、視
聴者の緊張感を熱くし、二人に何か大きな任
務が託されることを想像させてくれます。
 森次さんと石井伊吉(後の毒蝮三太夫)さ
んの澄み切った瞳は輝いています。

 「直ちに出動します」の台詞に、森次さん
の鮮明な話法が光ります。
 ホーク3号出動シーンは、特撮の素晴らし
さが圧巻です。

 湖に泳ぐ謎の少女は、視聴者の心をドキド
キさせます。少女は、文字通り可愛い小悪魔
で、魅惑的なひとです。本第3話の原題は、「
美しき侵略者」であり、ピット星人の元の名
はマーガレット星人でした。

 第4話「マックス号応答せよ」ではワンピー
スを着た女性、第14話・第15話「ウルトラ警
備隊西へ 前編 後編」ではにせリンダ、とい
うふうに、金城脚本は可愛い美女に扮した
宇宙人を妖しい魅力に満ちた存在として描

いています。

 金城脚本・野長瀬演出では、『ウルトラマ
ン』「遊星から来た兄弟」で、「地球人は私達
から見れば弟だ」と紳士的に呼びかけるザラ
ブ星人に地球人がまんまと騙され瞞着される

様子を描いています。

 この「湖のひみつ」では、宇宙人における地
球人騙しの描写が、更に鮮やかに描かれ、「騙
され」の描写も、より深く探求されています。
 紳士的なザラブの態度もカッコいいですが、
ピット星人は可愛い女の子なので、男性はコロ
ッと参ってしまします。
 高橋礼子氏はキュートな魅力は、ピット役に
燦然と輝いています。

 

  「人間に食べられるなんて
   魚がかわいそうだわ」

 

の台詞は、ピットの咄嗟の言い訳でありつつも、
人間中心主義の傲慢さを問い質す鋭さがありま
す。

 ダンが、ピット人間体に不審を感じるシーン
の演技も鋭いです。
  
 「待てよ。女の子の足で、あの険しい山道を
  どうして、我々より先に来る事が出来たん
  だ?それに呼吸一つ乱れていない」

 

 この独白は、落ち着いた渋い声で語られ、そ
れを受けて太い声で、
  「変だ」
の台詞を語られます。森次氏の重層的で深い台
詞回しは、幻想的な物語の展開と呼応して行き
ます。

 催眠ガスを経て、ピット星人が本当の姿を
現してダンからウルトラ・アイを盗みます。
眞の姿も、ピットはセクシーで魅力的です。
 

 ピットの呼びかけによって、湖から飛沫を上
げて、エレキングが登場します。大自然に現れ
た怪獣としての存在感も絶大です。エレキング
は、顔が犬のように可愛いですね。主人ピット星
人と共に、可愛い侵略者であります。
 エレキングとミクラスの湖におけるバトルは
壮絶です。髙野・野長瀬両監督の演出が光ります。
このバトルシーンにおいて、セットの自然も瑞々
しく、生き生きと輝いていることも印象的です。

 メディカルセンターでは、アンヌがピット星人
人間体に襲われるシーンで、ピットの手がアンヌ
の首に迫ってくるところに、妖しさが極まります。
 男のいかつい敵役・悪玉よりも、可愛い女性の
侵略者のほうが怖い、と自分は思います。

 ボートで湖を渡るウルトラ警備隊退員を、エレ
キングが追いかけるシーンも怖い。
 セブンとエレキングのバトルも迫力一杯です。
エレキングの首を片手に巻いて、セブンが放り投
げるシーンは、バトル場面の白眉であります。
 上西弘次さんは、体の動きで、セブンの感情を
現されるところが凄いです。
 大詰めのバトルで、セブンがエレキングをアイ
スラッガーで刺殺する際に、エレキングの切断さ
れた首から鮮血が流れ落ちます。
 怪獣も又、ただ一つのいのちを生きる生物であ
ることが確かめられています。
 ここに、野長瀬三摩地監督の仏教的生命観があ
ると思います。

 小悪魔ピット星人二人が、語る言葉は鋭い。


   少女A「もっと強い怪物を育てて地球人を
      皆殺しにするのよ」

    
   少女B「あの美しい星は、私たちのものに
      なるのね」
        
   少女A「素敵だわ。きっと成功するわ。
      地球人の男性は可愛い娘に弱
      いって ことがわかったんですもの」

 

 ピット星人は、「美しい地球」に魅了されたよ

うです。地球にときめきを感じ、想いの情熱に

身を焦がし、スリリングな戦いに、青春を賭け

たことと思われます。
 ダン/セブンに対しても、「尊敬する強敵」と
して接し、ウルトラアイを盗み、その実力を試
しているようにも見受けられます。
 
 挑発する魅惑的な少女。

 走り、追いかけるヒーロー。

 美しき女性と一徹な男性の智恵と情熱の駆け引
きが、鮮やかに展開し、それが物語を力強く進め
ます。
 防衛の為とはいえ、女性のピット二人の命を奪
うセブン。ここには、悲しみもあります。
侵略者が「女性」の姿を現しながら、ダン/セブン
を始めとする、「弱い」男達を迷わせ、その隙に
地球を狙いますが、最後には、防衛に立ち上がっ
たセブンによって倒され落命します。
 

  「ピット星人には、侵略の野望には、お灸を

  すえて叱って、命だけは助けてあげて欲しい」

という思いを、「地球人の男性」視聴者の一人と

して、自分は実感致します。
 ピット星人の侵略から、地球を守るセブン。
この勇気に満ちた戦いにも、金城先生は、
 
 「『美しい星・地球』を、果たして地球人は
  大事にしているのだろうかか?」

 

という問いを託しておられる、と私は思います。

 

ダン/セブンが、可愛いピット星人に魅力を感

じながらも、地球を防衛するために、彼女達のいの

ちを奪わねばならぬことに、「戦い」や「争い」への

痛みが感じられます。

 地球において、魚や肉や野菜を自分達の命を
つなぐ為に食べ、万物の霊長と自称して大自然
を破壊し、傲慢さを拡大する人間。そんな愚か
で悲しい人間、―就中、その半分である「男性」
は特に弱い生き物―を、セブンは丸ごと抱きし
めて励まし守ろうとするヒーローです。

 

 「ウルトラアイは僕の命なんだ」

 

の台詞に、金城哲夫氏の熱きテーマがこめられ
ている、と推察します。
 その根底にあるテーマは琉球・沖縄で長く伝え
られている尊い教え「命どぅ宝」ではないか、と
想像しています。 

 ダンがセブンに戻り、セブンからダンに帰る。

 地球人と宇宙人という二つの在り方を、一つの
命において生きる。その二つをつなぐものがウル
トラアイです。琉球人・日本人という二つのあり
方のいずれにも深い愛情を注いで生きた金城さん。
 金城先生にとって、ウチナーンチュウ・ヤマト
ンチュウの二つの在り方を結ぶ「命」は、「脚本」
「シナリオ」にあったと思います。


 ブログメッセージボートに述べさせて頂いたよ
うに、本ブログの表題『ウルトラアイは我が命』は、
この第3話におけるダンの、

  「ウルトラ・アイは、僕の命なんだ」

の台詞が基盤であります。

 ウルトラ・アイには、モロボシ・ダンにとって、
地球の平和を守る、という全生涯を包む課題が集
約されている。

 金城氏の深いテーマ、野長瀬監督の重い演出、
森次浩司(後の森次晃嗣)氏の渾身の熱演が光り
輝く「湖のひみつ」は歴史的大傑作であり、『ウ
ルトラセブン』の柱となる回です。

 第3話は、ブログにとっても、私にとっても大
切な師であります。
 金城先生は、本第3話において、いのちの尊さを
ドラマで教えて下さいました。

 いのちを奪う戦争や犯罪を地球から無くして
いくことは、実現困難な道ですが、地球の中で
最も傲慢な生物である人間に与えられた「命を
尊ぶ道」ではないか、とも思うのです。

 金城先生の教えを聞きつつ、私自身にとって
の「いのち」は何であるかを確かめていきたい
です。
  
       
                 文中一部敬称略
    

                        合掌


 

註・出典
(1)
ダン モロボシ・ダンの名をかりて』
52頁 森次晃嗣著 2000年 扶桑社文庫
 

(2)

『ダン モロボシ・ダンの名をかりて』
「特別対談:ウルトラセブンを作った男」
93-97頁 森次晃嗣著 2000年 扶桑社文庫

 

(3)『ウルトラマン大全集』209頁 
 1987年 講談社

 


参考文献
『ウルトラマン大全集』 1987年 講談社

 

『ウルトラセブン ベストブック』
 1993年竹書房
 
『ウルトラマンを創った男
 金城哲夫の生涯』
 山田輝子著  1997年 朝日文庫

 

『ダン モロボシ・ダンの名をかりて』 
 森次晃嗣著  2000年 扶桑社文庫

 

『ウルトラセブン ひみつ100超百科』
 2008年 講談社

 

『ウルトラ検定 公式テキスト』 
 2008年ダイヤモンド社

 


参考資料
『ウルトラセブン』 DVD VOL.1


 

 2007年10月15日記事発表。

 

 2008年10月15日記事改訂版発表。

 

 2010年3月15日記事改訂第二版発表。
 

 2012年7月13日記事改訂第三版発表。