ウルトラセブン   緑の恐怖  | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン   緑の恐怖 

放映日/1967年10月8日


監修 円谷英二   

プロデューサー 末安昌美

脚本 金城哲夫    

 

撮影  永井仙吉

美術  成田亨

     岩崎致躬

照明  新井盛

音楽  冬木透

録音  松本好正

効果  西本定正

編集  柳川義博

助監督 山本正孝

製作主任 高山篤

製作担当者 塚原正弘

 

特殊技術

撮影 鈴木清

美術 池谷仙克

操演 平鍋功

照明 小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督  円谷粲

制作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社

 

 

出演
中山昭二(キリヤマ隊長)

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)        古谷敏(アマギ)  

松本朝生(石黒達男)      中真千子(石黒ミツコ)

森今日子(千津)         大村千吉(会社員)

勝部義夫              島田彰

春原貞雄(ワイアール星人スーツアクター)   佐原健二(タケナカ参謀)
上西弘次(ウルトラセブンスーツアクター)    浦野光(ナレーター)


特殊技術 高野宏一 

監督 野長瀬三摩地

制作 円谷プロダクション TBS
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 緑色に光る物質が、ある家の前に落ちる。

ウルトラアイは我が命-二話 2

ウルトラアイは我が命-いしぐろ
 この家の主人石黒達男は、地球防衛軍の隊員で、宇宙ステー

ションV3に勤務している。この日の翌朝、休暇を得た彼は宇宙か

らこの自宅に帰還する予定である。家政婦の千津が清掃中に、

達男の妻ミツコの声が響く。

 

  「千津さん、千津さん、ちょっと来て頂戴」
    

  千津「何ですか?奥様」

 

 ミツコは、庭に置かれた不気味な金属をさす。

 
  ミツコ「困るわ、あんなもの、置いたりしちゃ」

 

  千津「あら、知りませんよ。」

 


  ミツコ「知らない?変ね」  美津子、物質を蹴る。

 


  千津「およしなさいませ。爆発でもしたら、どうなさるんです。」

 


  ミツコ「大変、ロケットの着く時間だわ」


  千津「速くいってらっしゃいませ。」

 


 宇宙ステーションV3から帰還する夫達男を迎えに行く為に、ミツコ

には地球防衛軍基地に向かう予定がある。

 
 ミツコ「頼むわね」

 

 千津「いってらっしゃいませ」

 

 千津は心配そうに、金属の物体を見つめる。何者かが、肩を叩く。

ドキっとする千津。郵便の配達員だ。 

 


  配達員「小包です」   配達員は小包を渡すと去って行く。


  千津「ちょ、ちょっと郵便屋さん、郵便屋さんって。あら、送り主誰かしら?」
 


 小包の差し出し人の名は、書かれていなかった。


  ホーク2号が地球防衛軍に到着する。


 ナレーター
 「その日、宇宙ステーションV3から6か月ぶりに地球の本隊に帰ってき

た一人の隊員があった。」

 
ウルトラアイは我が命-ホーク2号 ウルトラアイは我が命-ホーク2 4
 

 石黒達男である。彼は、作戦室で、ウルトラ警備隊隊員に迎えられ、

キリヤマ隊長と握手する。

 

  キリヤマ「どうだい、宇宙暮らしも少しは慣れたかい?」


  石黒「まあね」


  キリヤマ「ま、可愛い奥さんと地球のヴァカンスをエンジョイしてくれ。」


  ダン「隊長、石黒隊員をポインターでお送りしてもよろしいでしょうか?」

 

  石黒「いやあ、そりゃ、悪いですなあ。」

 


  キリヤマ「いや、いいんだよ。差し当たって事件もないし。」


  ダン「はい。」


  石黒「ウルトラ警備隊に送ってもらうなんて光栄ですね。」


 

  アンヌがミツコを基地に案内する。石黒夫妻は再会の喜びを確かめ合う。


  ミツコ「おかえんなさい」


  石黒「ただいま」

 

  石黒邸にポインターが着く。


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 石黒、庭に置かれた巨大な金属を一瞥する。


  ミツコ「あら、まだ、片付けてもらってなかったの?」

 

  千津「はい、おまわりさんに連絡したんですが持っていけないそうです。」


 

  ミツコ「「いやあねえ」

 

 ダンは、目を光らせて金属を見つめるが、透視できない。


  ダン「(独白)おかしいぞ。どうして透視出来ないんだ。待てよ、この物質は
     どこかで見たことがあるぞ。そうだ、チルソナイト808だ。確か、ワイアー
     ル星で産出される金属だ。地球では存在しない筈のチルソナイト

808が、何故こんなところに?」

 

 夜
 ダン・アンヌが石黒の車を彼の家に届ける。チルソナイト808は、まだ、石黒

邸の庭にある。


ウルトラアイは我が命-d 02
 

  ダン「(独白)まだ、ある。警察は一体どうしたんだ?多分、普通の

金属だと思って、気にも止めてないんだろう。しかし、この

ままほうっておく訳にはいかん。」


  ミツコ「まあ、わざわさ、届けて下さったの。」


  ダン「明日、お使いになるといけないと思って。」

 

  ミツコ「ご親切に、どうも、有り難う。」


  
  ダン「それでは、お休みなさい。」

 

 ガレージに車を入れた ミツコに千津が小包を渡す。

 

  千津「奥様、旦那様宛に小包が届いておりました。」

  

  ミツコ「そお」


  千津「私、うっかりしておりました。」

 
  ミツコは夫の部屋く。達男はタイプライターを打っている。

 
  ミツコ「もう、お休みになったら。」


 

  石黒「もう少しだ。この書類を明日までに長官に提出しなくちゃいけない
     んでね。誰だったの?」


  ミツコ「ダンさんが車を届けて下さったの。親切な良いかたね。これ、
      あなたに(小包を渡す)。」

 


  石黒「ああ、もう、遅いから先に
     お休み。」


  ミツコ「お休みなさい。」

 

 石黒はドアを閉め、部屋の中で、笑みながら小包を開ける。庭の金属

とよく似た、小さな金属が入っていた。庭の巨大な金属が緑色に光る。

石黒は苦しみを覚える。彼の体は、緑色の植物のような肉体に変化する。
ウルトラアイは我が命-x 夜 12
 生物X、即ちワイアール星人の肉体になった石黒は、蔦状になって、家

を出て、街に向かった。

 夜の街  酔っ払った会社員が帰路についていた。


ウルトラアイは我が命-x ひと2ウルトラアイは我が命-x 人


 暗闇からワイアール星人が姿を現し、会社員に襲いかかり、彼に液体を浴びせる。


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ウルトラアイは我が命-x 16

  会社員「うわあ」


叫び声をダン・アンヌが聞く。

 
 ダン「あっちだ。」


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 二人は会社員を保護し、メディカルセンターに収容し、ベッドに寝かせる。

 

メディカルセンター

 

会社員の顔色は緑に変色し、肉体全体も、ワイアール星人に変貌し、

ウルトラ警備隊隊員に襲いかかる。

  
ウルトラアイは我が命-wai2 ウルトラアイは我が命-wai

  アンヌ「ソガ隊員、撃っちゃ駄目。ダン、パラライトを」


ウルトラアイは我が命-アンヌ二 ウルトラアイは我が命-アンヌ四

  アンヌはダンからもらったパラライトで、ワイアール星人を眠らせる。

  

  アマギ「何故撃ったんだ?」


  アンヌ「大丈夫、神経を麻痺させて、動きを止めたの。」
      

  ナレーター
  「奇怪な事件は次の夜も起こった。」

 

 救急隊が患者を収容して、救急車で移動している。患者はワイアール星

人に変貌して、運転士を襲い、救急車は高速道路から落ちて炎上する。

ウルトラアイは我が命-niwa ウルトラアイは我が命-niwa c

ウルトラアイは我が命-ワイアール


ウルトラアイは我が命-x 18

  

 ミツコは、夫の部屋にお茶を運んでくると、部屋の鍵が閉められ

てあることに、不審を抱く。ワイアール星人は、石黒の部屋に入り、

素速く人間体に戻り、鍵を開ける。


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  ミツコ「何故、鍵なんかおかけになったの?」

  

  石黒「宇宙ステーションの習慣でね。つい部屋に鍵をかけてしまう

     んだよ」

  

   ミツコ「ここは、貴方のうちなのよ(机に紅茶を置く)。」

  

 地球防衛軍


 

  タケナカ参謀「警察からの報告によれば、ここ二、三日で十数件の被害者

          が出ておる。それらがいずれも怪物化し、人間に襲いかか

          るのだ。襲われた人間が更に怪物化し、次の人間を襲う。」

 

 

    キリヤマ隊長「鼠算式で増えていく訳ですね?」

 


    タケナカ参謀「その通りだ。このままいけば、地球上の全人類が怪物

            化してしまう。これはアマギ隊員が撮った怪物の写真だ。

                             
ウルトラアイは我が命-x 白黒
            宇宙の生物らしい。これは、明らかに人類への挑戦か侵

            略である。」


       
    ダン「隊長、例のものをお持ちしました。」


  ダンが持ってきたのは、石黒邸に置かれた鉛色の物質だ。


    タケナカ参謀「何だろう?この物質は?」


 

    キリヤマ隊長「未知の物質です。」

 


    タケナカ参謀「キリヤマ隊長、科学班に渡して
           分析だ。」

    ナレーター「又、夜が来た。人々は恐怖にじっと息を潜めていた。

           獲物を失った怪物ワイアール星人は無人の街から

            血に飢えて戻ってきた。彼が次に狙うものは?」
           
ウルトラアイは我が命-x19

  ミツコは、自宅の窓に映ったの姿を見て、叫び声をあげる。


   ミツコ「きゃあ、貴方、助けて!」

  

   千津「奥様!」

 

 ワイアールは慌てて逃げ、すぐに石黒の姿に戻って、ミツコの側にかけよる。

 

 

   石黒「ミツコ、どうしたんだ?」


   ミツコ「怪物が、あたしを、あそこ」


   石黒「誰もいないじゃないか」


   千津「警察に連絡しなくちゃ!」


   石黒「やめなさい。地球防衛軍の隊員の家が襲われたなんて、

      物笑いの種になるだけだ。」


   千津「だって、旦那様」


   ミツコ「千津さん、彼の言う通りにして。」

 
   千津「はい」


   石黒「ミツコ、東京は物騒だ。明日の朝、二人で箱根の別荘へ行こう。」

 

 
 翌朝
 ダンとアンヌは、千津から連絡を受けて石黒邸に向かう。達男の部屋の机の

引き出しから怪しい音が聞こえると言う。

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 ダンは机の引き出しから、鉛色の物体を取り出す。形は小さいが、

作戦室に収容されたチルソナイトと酷似している。千津はダンに頼ま

れ、金槌をもって来て渡す。


  ダン「割れるかもしれない」


  アンヌ「そんなことをしても大丈夫なの?」
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 ダンは金槌で物質を叩き割り、中から電子頭脳を発見する。地球防衛

軍に置かれたチルソナイトも割れる。その中には、眠る石黒隊員の姿が

あった。

 
  キリヤマ隊長「石黒!石黒!」

 

 アマギがこの事をビデオシーバーで連絡する。

  
  千津「嘘ですよ。旦那様は奥様と御一緒に箱根行きの電車の中です。」


  小田急ロマンスカー
ウルトラアイは我が命-小田急 2

 ミツコはみかんの皮を剥いている。贋石黒は自身の腕が緑色に変色して

いることに気付き、ハッとする。

 

 ミツコ「剥けたわ」


ウルトラアイは我が命-x 12

 ミツコが、みかんを夫に食べさせてあげようとすめた時、座っている夫は、

緑色の怪物となっていた。ワイアール星人は美津子に襲いかかり、車内は

パニックになる。電車はトンネルに急停車し、乗客は一斉に逃げる。ポイン

ターでかけつけたダン・アンヌは、ロマンスカー内で、ワイアール星人に

ウルトラ・ガンを浴びせ、ミツコを救出する。

 
ウルトラアイは我が命-緑11

乗客の一人が、巨大化したワイアール星人を見つけ、驚く。

 

ウルトラアイは我が命-p x

 


ウルトラアイは我が命-みどり10
 

 トンネル近くで一人の老人が助けを求めている。ダンがかけつけ、

老人を介抱し、彼を休ませて、ウルトラ・アイで、赤色の宇宙人に

変身する。


ウルトラアイは我が命-ダン変身2 ウルトラアイは我が命-7 14

 


ウルトラアイは我が命-7 x 02 ウルトラアイは我が命-x 投げ
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ウルトラアイは我が命-p7

 

ウルトラアイは我が命-x


ウルトラアイは我が命-やま 7

  アンヌ「ウルトラセブン、頑張って!」


ウルトラアイは我が命-アンヌ 2
 

ウルトラアイは我が命-7x7



ウルトラアイは我が命-7 x9
 
 

 アンヌから「ウルトラセブン」と呼ばれた、赤い巨人は、ワイアール星人を

アイスラッガーで真っ二つに斬る。
ウルトラアイは我が命-pict000008 ウルトラアイは我が命-あ3


ウルトラアイは我が命-アイス 17


ウルトラアイは我が命-x

 

ウルトラアイは我が命-ふたつ6


ウルトラアイは我が命-緑9ウルトラアイは我が命-緑8

 「ウルトラセブン」と呼ばれる赤い巨人は、エメリウム光線で、ワイアール

星人の肉体を炎上させる。


ウルトラアイは我が命-pict000004 ウルトラアイは我が命-7飛翔

 赤い巨人は、飛び立つ。

 彼は、人間体のダンに戻り、かけつけた隊長や同僚のもと

に向かう。保護された石黒も一緒だ。


  石黒「ミツコ」


  ミツコは怯える。

 

  キリヤマ「奥さん、ご心配はいりません。本物の石黒ですよ。」


  石黒「ミツコ」


  ミツコ「あなた」


  石黒「心配かけたな」


 

  ソガ「しかし、敵はどうやって石黒隊員に化けたんでしょう?」

 

  ダン「あの鉛色のマシンですよ。あれに石黒隊員を閉じ込めておいて電送
     に似た方法で石黒隊員の姿を借りたんですね。そして、この電子頭
     脳で行動をコントロールしていたんですね。」


  
 地球防衛軍隊員は、警視庁からの連絡事項として、被害者全員が人間の姿に

復活したことをキリヤマに報告する。
 
  石黒「さ、久しぶりの地球だ。オゾンを一杯吸ってヴァカンスを楽しむぞ。」


 

  夫妻はポインターに乗る。
 

  アンヌ「あたしも一緒に行くわ」

  

 ポインターは出発する。

 
ウルトラアイは我が命-p16

  ナレーター「事件は終わった。だが、宇宙からの侵略が終わった訳

         ではない。
         あの鉛色の物体が何時貴方の庭に落ちてくるかしれな

         いのです。明朝、目が覚めたら庭をご覧下さい。」
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ー緑色の光ー


 

 夜の石黒邸。庭に置かれた鉛色の物質。妖しい緑色の光を放つ。自室の

石黒隊員の姿をした者は、苦しみ出し、緑色の怪物と変化し、街の人間を

襲って行く。

 第二話「緑の恐怖」の前半部分の怖さは強烈で、幼児の頃、ドキドキ震

えました。

 野長瀬三摩地(1923年8月30日ー1996年5月23日)監督は、ミステリード

ラマの巨匠ですが、この第二話は、監督が撮られた傑作群の中でも、一際

鮮やかな輝きを放つ怪奇ドラマの金字塔であります。

 

 『ウルトラQ』「ガラダマ」(脚本/金城哲夫、監督/円谷一)「ガラモンの逆

襲」(脚本/金城哲夫、監督/野長瀬三摩地)は、「緑の恐怖」の原点になっ

たドラマであると申せましょう。
 落下した隕石。そこから現れた巨大生物ガラモン。小型隕石から発せられ

る電波によって活動的になり、電波が遮断されると倒れてしまう生物です。

 「小型隕石の中の電子頭脳」という設定を、金城哲夫は、「緑の恐怖」のチ

ルソナイトの大小の描写において、見事に再生産したと言えると思います。
 

 ミツコが、感じる物質への疑問。家政婦千津さんも同様に不安を覚えま
す。この場面の心理描写も、シナリオは冴えを見せます。

 石黒の変身、それにより、彼が贋石黒であり、正体は生物X、ワイアール

星人であることが明らかになっていくシーンの怖さは絶大です。

 

 メディカルセンターで保護されたサラリーマンが苦しみ出し、ワイアール

星人になるシーンも怖いですね。 

 ワイアール星人は一言の言葉も発することなく、地球人を襲い、自分達

と同じ姿にしてしまう。その理由や動機は一言も説明されません。それ故

に、「ワイアール星人は何故、人間を狙うのか?」という問いが、視聴者の

心に一層強く湧き起こります。

 

 ワイアール星人は、植物型の宇宙人です。緑は、現代では、エコカラー

として人々に親しまれています。それはそれで、緑色の尊い個性でもあり

ます。
 金城先生は、ワイアール星人の不気味さを描きながら、人間にとって未

知の植物の怖さを、深緑の色に投影されたのかもしれません。

 

 石黒は贋者であり、正体はワイアール星人で、彼はミツコを襲い、仲

間の宇宙人にしようと狙っている。このことは、視聴者は知っていて、ミ

ツコ本人は知らない、という筋の展開です。

 美しいヒロインに危機が迫る。身近な男が不気味な存在感を光らせ

彼女に近付く。このサスペンスの展開には、『レベッカ』『断崖』『疑惑の影

』といった、アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画の影響が窺

えます。

 千津の通報すべき、という提案をはねつける夫石黒に不審を募らせる

ミツコ。怪しいけれども、愛する人を信じたい、というミツコの献身的な

優しさも、印象的です。
 「達男さんを信じて、彼の言う通りにしていきたい」というミツコの一途

な愛情は、小田急ロマンスカーの中で、ワイアール星人に変身した夫(に

化けた生物X)に襲われ、無惨に、裏切られることとなります。無垢な愛

情は踏みにじられ、痛めつけられることもある、という展開に、金城さん

の視座の鋭さを感じます。

 

 ダンは赤い巨人に変身して、ワイアール星人と戦います。

 この赤い巨人と緑のワイアール星人、という二者の鮮やかな色の対比

も印象的です。

 緑色のワイアール星人と赤い巨人の激闘は、視覚的にも鮮明な印象を

視聴者に与えます。
 カラーテレビの時代になったからこそ、テレビドラマにおいても、こうした

緑色の敵役と赤いヒーローの激突という、色を体現する存在二者の対決

が鮮やかに描けるようになったのです。

 ワイアールの緑は、言うまでもなく、植物を象徴しています。

 赤い巨人の「赤」は、何を示すか?赤とい色は血の色であり、情熱の色

でもあります。
 このドラマの主人公であり、ダンの宇宙人としての真の姿である「赤い

巨人」の「赤」は一途で愚直な迄の熱さを現しているのではないでしょうか?

 

 アンヌは、赤い巨人に、「ウルトラセブン、頑張って」と声をかけ、激励

します。この瞬間から、地球人にとって、赤い巨人の名は「ウルトラセブ

ン」となりました。

 実は第1話のラストで、、「赤い巨人」を、キリヤマ隊長が、「ウルトラセ
ブン」と呼ぶシーンが脚本に書かれていましたが、本編ではカットされて

しまいました。(1)

 

 アンヌの激励により、ウルトラセブンは勇気と力を回復し、難敵ワイアー

ル星人をアイスラッガーで倒します。愛する存在の為に立ち上がり、愛す

る人の励ましによって、主人公の男性はより強く、より逞しい存在となって行く。

 アンヌの母性がダンを包み支える、という金城先生が大切にされた設定

も、この第二話から本格的にスタートしたようです。


 ワイアール星人は、何故、地球人を狙い、侵略しようとしたのか?
 金城脚本、野長瀬演出は、その解答を出さず、あえて、問いのままに開い

ておられます。本物の達男は自分が本物であることを確約し、愛妻美津子

を抱きしめます。

 

 愛し合う夫婦を引き裂くものへの痛みが、第二話にこめられています。本

来ひとつの場で暮らすべき人々を引き裂くもの。そこに悲しみを感じ、分断

されている人々の再会と交流を回復せしめて行きたい。

 

 このダンのテーマに、琉球(沖縄)と大和(日本)の架け橋になろうとした

金城哲夫の願いを感じます。       
      

  

                                   文中一部敬称略

 
                                                         

 2007年10月8日・200810月8日 に発表した感想を2010年6月10日に改訂

しました。

                  
註・出典(1)『別冊宝島 僕たちの好きなウルトラセブン』(2007年、宝島社)

       23頁

参考資料『ウルトラセブン』 DVD.vol.1

 

                                          合掌