ダイエット中でも、フルーツなら罪悪感がないからと気にせず食べていないだろうか。
それではやせないどころか、危ない病気になるリスクも。さらに、安いからと店頭で手に取った輸入フルーツは、海外では食べられていない“禁断の果実”の恐れもあるという──。
「野菜があまり好きではない私は、50才を過ぎてから健康を考えてフルーツをたっぷり食べることにしたんです。最初の頃は肌の調子もよくなった気がしたのですが、夏になってもつま先が氷のように冷たい“万年冷え症”になりました。その上、体重も増える一方。さらに先日、職場の健康診断で中性脂肪の値が高かったため再検査を受けたのですが、医師から『フルーツの食べすぎが原因』と指摘されました」
フルーツは自然の恵みであり、ヘルシーで体にいいもの──そう考え、積極的に食べようとする人は多い。昔から、「1日1個のりんごで医者いらず」といわれてきた。
「フルーツを適量食べると、まったく食べない人よりも死亡率が低下するという研究結果が出ています。また、大腸がんや胃がんの予防になるという報告や、糖尿病リスクを下げるとの論文もあります」
野菜不足が進む日本人にとって、フルーツは足りない栄養素を補う貴重な栄養源。だが、“食べすぎ”が逆効果となることもあるという。
「フルーツには野菜には少ない果糖などの糖類や、美容にいいとされるクエン酸やリンゴ酸などの有機酸が多く含まれています。ビタミンCや食物繊維も豊富なため、野菜が不足している人にはフルーツを食べることは有効です。
ただし、野菜にはビタミンCと食物繊維はもちろん、ビタミンKやE、葉酸など、より豊富な栄養素が含まれます。また、野菜は噛んで食べるものが多いのに対し、フルーツはあまり噛まなくても食べられるものが多い。さらに、野菜を食べすぎて肥満になることはほぼありませんが、フルーツは食べすぎると果糖によって中性脂肪が増加し、脂質異常症、脂肪肝になるといったリスクは否めません」
野菜とフルーツは同じ植物由来のため混同しがちだが、フルーツを「野菜の代わり」にするのはどうやら間違いのようだ。そして、“適量”を超えたフルーツの過剰摂取は、思いがけない病気の引き金となる。
果糖がシミやしわを増やす
もし、あなたがやせたいのなら、デザートにフルーツを食べる習慣は見直した方がいい。
「フルーツに含まれる果糖は、ご飯やパンに含まれるブドウ糖よりも脂肪になりやすいという特徴があります。人間の体はエネルギー源として糖を使いますが、それには順番があり、まずブドウ糖を最優先に使います。そのため、果糖はエネルギー源として消費されず脂肪として蓄えられやすい。だから太るんです」
フルーツをたくさん食べると、肌がきれいになると思っている人も多いだろう。ところが、これが逆効果になる場合もある。
「老化は、『AGE(終末糖化産物)』という物質によって促進されます。AGEはたんぱく質と糖の結合によって増えますが、ブドウ糖よりも、フルーツの果糖の方がAGEを増やしやすい。『お肌にいいから』と必要以上に食べていると、シミやしわを増やす原因になるのです。もちろん、外見だけではありません。血管の老化が進むと動脈硬化を招き、心臓や血管など循環器疾患の原因にもなりかねません」
フルーツに対する健康的なイメージに警鐘を鳴らす。従来、脂肪肝になりやすいのはお酒をよく飲む人といわれてきたが、実は一滴もお酒を飲まない“ヘルシー志向”の人も無関係ではない。
「中性脂肪が高い状態が1か月も続けば、肝臓に脂肪が異常に蓄積された『脂肪肝』になります。中性脂肪の正常値は30〜149mg/dlですが、ある患者は600mg/dlもあった。そこで食生活について尋ねると、頻繁にフルーツを食べていることがわかった。フルーツの摂取をやめるよう指導したところ、わずか1週間で100mg/dlにまで減少しました」
“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓だが、実は、簡単に食生活の影響を受けやすい。たった4日間、シャインマスカットを毎日1房食べ続けたことで会社の健康診断に引っかかった患者もいたと言う。
ハイリスクであるにもかかわらず、「フルーツはたくさん食べても大丈夫」と多くの人が思い込んでいるのは、こんな理由がある。
「フルーツは、ご飯やパン、スイーツなどと比べて、食後の血糖値の上昇度合いを示す『GI値』が低い。そのため、糖尿病などの病気になりにくいとして、摂取を推奨する専門家もいます。しかし、果糖は小腸での吸収がほかの糖よりも速く、肝臓で中性脂肪に変わりやすいのです。脂肪肝になれば、血糖値を下げる働きをするインスリンが出にくくなることがあり、糖尿病リスクが格段に上がります」
つまり、フルーツは血糖値を急上昇はさせないものの、結果的に糖尿病を招くということ。
「フルーツはあくまでも嗜好品です。『朝食はフルーツだけ』『おやつにフルーツを食べるようにしている』という食習慣はやめましょう。
また、『夜のフルーツは毒』といわれますが、エネルギーが消費されにくい夕食以降にフルーツを食べるのは、肥満街道まっしぐらだと心得てください」
1食で食べていいのはバナナ3分の2本まで
とはいえ、四季折々の味わいを届けてくれるフルーツを完全にやめてしまうのは味気ない。「摂取目安は1食10g」と話す。
「医学的に、やせたい人の糖質摂取量は1日60g以下とされています。3食食べるなら、1食あたり20gです。主食を筆頭に、あらゆる食べ物に糖質が入っていることを考慮すると、フルーツは1食につき10gまでにした方がいい。バナナなら、3分の2本程度の分量です」
いちごならば糖質量が低いため、粒が大きめのものを3~4粒食べても構わないが、干し柿ならば半分残しても糖質オーバーとなる。とはいえ、生のフルーツなら食べる量も調整しやすく、食物繊維も含まれているため、それほど敬遠する必要はない。
最も避けるべきはある種の「フルーツジュース」だ。
「フルーツジュースの問題点は、生のフルーツを食べるよりも果糖を簡単に大量摂取できることです。特に『100%濃縮還元』のタイプは要注意。これは、フルーツから搾った果汁の水分を飛ばして濃縮し、ジュースを作るときに水や人工香料、果糖などを加えて飲みやすくしたものです。食物繊維が少なくなっているものも多く、フルーツを生で100g食べるのと、濃縮還元のフルーツジュースを100g飲むのはまったく別物です」
野菜ジュースをよく飲むという人も例外ではない。
「野菜ジュースと銘打った商品でも、その原料の半分以上がフルーツの場合もある。“野菜不足を補っている”と思って積極的に飲んでいると、果糖の過剰摂取で血糖値が上がり、さまざまな病気のもとになりかねません」
ジュースは自宅で手作りするのが最善策だ。
防カビ剤を散布しても猛毒のカビが発生している
「果物は皮に栄養がある」と聞いたことはないだろうか。実際、りんごやぶどうは皮にポリフェノールが豊富に含まれている。ヨーロッパでは、食事を手軽に済ませるため、スナック感覚で買ったりんごをそのまま丸かじりする習慣もある。しかし、これをまねするのはやめた方がいい。
「EU(ヨーロッパ連合)は、農薬の残留基準などのレベルが日本よりずっと厳しいからこそ、買ったりんごをそのまま丸かじりできるのです。
一方で、日本はアメリカから輸入するレモンが船便輸送中にカビが生えないよう、収穫後に散布される禁止農薬である『ポストハーベスト農薬』を『食品添加物』として受け入れてしまった。こうして日本は世界の中でも輸入フルーツに対する基準が最も緩い国の1つになりました。これはまさに“外圧”に屈したことによるものです」
その悪影響は年々拡大しているという。近年は輸送事情がよくなったことから、南の国から生鮮マンゴーが入ってくるようになった。スーパーでも気軽に手に入り、身近なフルーツとなりつつあるが、手に取ってはならないものがあると言う。
「マンゴーは毎年、輸入時の検査で食品衛生法に違反した事例が多数挙がっており、輸入元も台湾、タイ、メキシコなど幅広い。それらの輸入マンゴーからは、発がん性を指摘される残留農薬が検出されています。
また、すべての輸入フルーツが検査されているわけではなく、食品衛生法違反で廃棄処分になっているのは氷山の一角です。市場に出回っている商品もかなり危ないと考えた方がいいでしょう。海外から輸入される珍しい果物はアレルギー発症リスクも懸念されるため、なるべく食べない方がいい」
50年近く続いてきたポストハーベスト農薬の問題は、新たな課題に直面している。
「多いのは、乾燥いちじくなどから検出される『アフラトキシン』という自然界最強の猛毒を持つカビで、肝臓がんを発生させます。輸出前に防カビ剤を散布しても、アフラトキシンが発生しているのです」
これは、ポストハーベスト農薬に防カビ剤を使い続けてきた結果、薬への耐性を備えたカビが生まれていることを示す。
「輸入フルーツに使われているポストハーベスト農薬は、耐性を持つカビが出現したことから、複数の種類の農薬が散布されるようになりました。80年代に比べて使用できる農薬の品目数も大幅に増えています」
残留農薬に関する心配は、ますます複雑化するかもしれない。
皮をむいても農薬のリスクはある
リスクの高い輸入フルーツだが、しっかり水洗いし、皮をむけば安全だとされてきた。しかし最近、新たな事実がわかってきた。
「2年ほど前に『農民連食品分析センター』がりんごを用いて食品分析をした結果、皮から実の部分まで農薬が浸透していたことがわかりました。いくら洗ったり、きちんと皮をむいても安心とはいえないのです」
現在、輸入フルーツに使われたポストハーベスト農薬については、商品のパッケージに記載されたり、売り場に注意書きが添えられていることが多い。だが、必ずしもそれが危険なフルーツを見分ける手段とは言いきれない。
「アメリカは、農薬を記載することに反発しています。これまでのアメリカと日本の関係から見ても、近い将来、こういった表示がなくなることはほぼ間違いないでしょう」
食品基準が厳しいヨーロッパ産でも安心は出来ない。
「ヨーロッパは、自分の国で売る商品に関しては厳しいが、輸出するフルーツはそうとは限らない。自国の農家が使うことを禁じられた農薬を、日本に売っているという一面もあります。『危ないものは基準が緩い日本に持って行け』というのが世界の考えです」
フルーツは、農薬を使わずに育てることが非常に難しい。果樹園などで行われている“フルーツ狩り”に苦言を呈する。
「もいでそのまま食べるフルーツ狩りが人気レジャーの1つになっていますが、あれは農薬をダイレクトに食べているのと一緒です。もしフルーツ狩りに行ったのなら、食べる前に必ず水洗いすること。いちごは、ブツブツした種の部分に農薬がたまりやすいので、そこまで気にして洗いましょう。できれば、行く前にどういう栽培方法をしている農園なのか調べるといい。特別栽培でやっている農園もあるはずです」
特別栽培とは、農薬の使用量をその地域の半分以下に減らした栽培法だ。通常、りんごならば40種類程度の農薬が使われるが、特別栽培の場合は20種類程度に減らしている。
ほかにも、フルーツ栽培には工夫が見られる。近頃、フルーツを食べていて、決定的に昔と違う変化を感じることはないだろうか。かつて、果物は「酸っぱいもの」というイメージもあったが、最近、フルーツを食べて「酸っぱい」と感じることが減ってきたはずだ。これは糖度が高く、おいしいフルーツを作るために品質改良が重ねられた結果だが、人為的な“操作”のツケはいつか私たちに降りかかってくるかもしれない。
「特にももは、私が子供のときに食べていたももとは別物レベルに甘くなりました。糖度を高くする品質改良には、植物成長ホルモンの投与が不可欠ですが、それらが人体にどんな影響を与えるのかはまったくの未知数です。何を食べても甘くておいしいということは、普通に考えておかしいと疑わねばなりません」
見た目も鮮やかで、いい香りがして、家族みんなが大好きなフルーツ。「甘くておいしい」「安いから買いやすい」と思って闇雲に食べ続けていると、思わぬ悲劇につながるかもしれない。