みなさんこんばんは爆  笑

 

第四章のあらすじ

チョンホたちは14歳になった。彼らはそれぞれ決められた許嫁を持ち、背も伸びて立派な青年になっていた。チョンホは容姿端麗かつ文武両道で、女の子たちの絶大な人気を誇っていた。そんな中、恒例の弓の大会でソンは生意気な女の子ユンナと出会う。彼女は1つ年上で小柄ながらしっかりした少女だった。ユンナに関心を持ったソンは彼女をからかうが、それが気に入らなかったユンナは彼に歯向かう。2人の仲は険悪になったが、ユンナに言い寄る好色な男ハ・デヒョンの登場で関係は徐々に変化していく。ソンは自分の恋心に気付き、ユンナもソンの誠実な人となりを知ることで2人は急接近し、紆余曲折の末2人は慕い合う仲となる。ところが、親友のチョンホはそれを良く思わなかった。彼は猫を被った婚約者シミンとの交流や過去のトラウマから女性不信であった一方、親友をユンナに奪われることを恐れていた。そんな中、追い詰められたチョンホはある行動に出る。

 

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絶交の危機

 

 穏やかな夏の日のはずだった。

皆暑さにやられ活気を失くしていた。大柄なチョンジンなどは暑そうに本を扇ぎながら書堂にやって来た。

チョンジンとリョウォンはいつも早く登校した。家が近いので2人は一緒に登校しているが、やせ細っているリョウォンとごつごつしたチョンジンとは対照的でとても目立った。チョンジンの親友で小柄なイドといる時は猶更だった。

そして、書房で一番の平和主義者である2人なので、会話の内容もとても穏やかなものばかりだった。彼らは争いごとを嫌い、いつも仲裁に回った。

この日2人は、昨日のチョンホとソンの大げんかのことについて話し合いながら登校した。どうせ親友の2人だ、すぐに仲直りするだろう。今日だってきっと一緒に登校してくるだろう。2人は楽観的な気持ちで書堂に着いたが、2人の予想に反して既にチョンホは登校していた。

2人は声を掛けようか一瞬悩んだが、チョンホがあまりにも暗い空気を出していたので心配になり、中庭に佇んでいるチョンホに近づいた。

「やあ、おはよう」

リョウォンは何事もなかったかのように微笑んだ。

「・・おはよう」

チョンホはちらっとリョウォンを見て言った。

「調子はどうだ?」

「・・調子・・・?」

チョンホは上の空のようだった。

「お、おい、大丈夫か、チョンホ道令?」

チョンジンはチョンホの顔を覗き込む。

その時、大きな音を立てて誰かが門を開けた。皆驚いて振り向く。

そこに立っていたのはソンだった。だが、いつものソンではなかった。全身怒りに震え、鋭い目で彼らを睨んでいた。

驚いて固まっている彼らのもとにソンはかつかつと歩いていき、チョンホの前に来ると拳で思い切り彼の顔を殴った。チョンホは瞬く間に後ろに倒れた。

「ソン道令!!」

チョンジンは驚いて叫んだ。リョウォンは慌ててチョンホに駆け寄る。

ソンは肩を震わせて怒りに満ちた目でチョンホを睨んだ。

「てめえ・・・・・何てことしてくれたんだ・・・・・」

ソンは震える声で言った。チョンホは何も言わずソンを睨み返す。

「な、何があったんだ、ソン」

リョウォンはソンに言う。

「こいつは・・・・ユンナを口説こうとしてるのは、例のナウリじゃなくておれだって、父上に言いやがったんだ・・・・・!!!」

ソンはチョンホを睨みながら言った。

「・・ええっ?!チョンホがちくったって言うのか?」

リョウォンは驚いてチョンホを見た。チョンホはリョウォンの手を振り払い、立ち上がった。

「本当のことじゃないか。それとも何だ?父親に話せないやましいことだったのか?」

「おい、チョンホ道令、あんなこと先生に言ったらどうなるか分かってるのか?ハ・デヒョンナウリがどんな目に会ったか知らないのか?」

チョンジンは信じられないという顔でチョンホを見て言った。

「そうだよ!お前、ほんとにそんなことしたのか?」

リョウォンも加勢する。

いつの間にか辺りには野次馬の生徒が集まってきていた。

「ああ、言ったよ。だから何だって言うんだ。大体、こいつがあの女のせいで成績が下がったのを見ただろ?それに、婚約者がいるのに他の女に手を出すなんて。なんでみんなソンを庇うんだ?おかしなことをしているのはこいつのほうだろ」

チョンジンとリョウォンはありえないという顔でチョンホを見た。

ソンは怒りを通り越して呆れた表情になった。

「なあ、お前、本気で言ってるのか?正直に言えよ。本当に、それだけの理由で父上にちくったのか?」

「ああ。他にどんな理由があるって言うんだ!」

チョンホは開き直った表情でソンを睨んだ。

「呆れたよ。お前がそんなにくずだったなんてな。これまで親友って言ってたのが馬鹿らしいよ。なんでお前みたいなやつと仲良くしてたんだか。自分でも自分に吐き気がするね」

ソンはチョンホに向かって吐き捨てるように言った。チョンホは何も言わずソンを睨む。

「まあ勝手にすればいいさ。お前は一生そうやって言い続けて、金と権力以外では何も手に入れられない奴になるだろうな。ざまあみろってもんだ。お前とは金輪際話さないし、親友でもなければ、友達でもない」

ソンは言った。誰も彼を止めなかった。チョンホは依然何も言わない。

ソンは懐から小筆を取り出した。2人が幼い頃、互いに贈った物だった。それを彼らは何年も使い続け、親友の証として常に携帯していたのだ。

だが今、ソンはその小筆を真っ二つに折ってしまった。黙って見つめるチョンホの足元に、ソンはその小筆を投げ捨てた。

チョンジンらが唖然とする中、ソンはそのまま背を向け、教室に入っていった。

チョンホはソンに殴られた方の頬を押さえる。皆一斉にチョンホの方を見た。

「・・何見てるんだよ!」

チョンホは自分を見る生徒たちに向かって怒鳴りつけ、本を拾ってそのまま教室に入っていった。

 

 

ソンはチョンホを敢えて避けるようなことはしなかった。彼はチョンホには無関心だという態度を取り、教室内で気まずい雰囲気を作ろうとはしなかった。だが、チョンホの方は違った。ただでさえ寡黙なのに、あれからは不機嫌に黙り込んで友人たちや先生の目を避けた。

彼らの友人たちは、チョンホの行為が全面的に非難されるべきもので、ソンに非はないと思っていた。だが、チョンホの本来の温厚な性格を知っているため、何か事情があってそうしたのだと彼らは信じていた。ソンがいなくなって孤立していたチョンホだが、リョウォンやチョンジンは積極的にチョンホに話しかけた。一方のイドやサンミン、ホンソはチョンホを無視し、完全にソンの味方に付いた。これによって親友であるイドとチョンジンはお互いの立場が分かれてしまい、この2人まで喧嘩する羽目となってしまった。

チョンホにとってソンの次に信頼している友人は他でもなくリョウォンだった。リョウォンは親友と呼べる友人がおらず、八方美人を貫いているところがあった。だが、繊細で内向的な点がチョンホと似ており、昔から時折2人で行動することもあった。何よりリョウォンは儒医を父に持つため、自分は他の子たちとは違うという劣等感があった。医員になりたければ科挙の雑科を受けるのだが、科挙の中では、文科、武科、雑科の順に地位が高かった。そのため、他の子たちは文科を合格した文官の家に生まれているのに、自分だけがそうでないことを卑下していたのである。

しかし、チョンホだけは医学の知識豊かなリョウォンをいつも称賛していた。彼の称賛は本心からのもので、時々医学書の豆知識をリョウォンに求めることからもその気持ちが伺えた。元々ソンたちと親しくなかったリョウォンだが、チョンホと仲良くなって急速に彼らと距離を縮め、いつの間にか一緒に行動するようになったのである。リョウォンはチョンホを心の中で恩人だと思っていた。

そんなリョウォンにとって、今やみんなから非難されているチョンホを放っておくことは出来なかった。彼はどうにかチョンホが心を開いてくれないかと願い続けたが、2人が仲直りしないまま何日も過ぎた。

その日は久々にスボクの授業だった。チョンホは早くから登校し一人で本を読んでいた。リョウォンやチョンジンはチョンホに声を掛けたが、定刻になってもソンが来ないことに気が付き彼らはそわそわし始めた。

スボクが入ってきてもソンは来なかった。スボクは何もなかったかのように授業を始めた。生徒たちは気まずい雰囲気になったが、スボクは我関せずという風に授業を進めた。

チョンホは授業中、時々スボクの顔色を伺うように見た。また、彼は途中から帳簿を取り出し、授業の内容を書き留めだした。

その日から4日続けてスボクの授業だったが、ソンは一度も授業に来なかった。チョンホは毎度授業内容を書き留め、それを誰も指摘しなかった。

ソンとチョンホは常に教室の中心的存在だった。そんな2人の仲が険悪になったことを簡単に触れられる生徒はいなかった。だが、あまりに長く続く喧嘩に、イド、リョウォン、チョンジン、サンミン、ホンソは集まって話し合った。このまま2人が和解しなければ、自分たち全員の損失だと言うリョウォンの言葉に全員が同意した。かくしてチョンホを無視していたイド、サンミン、ホンソも態度を改めて2人の和解に尽力することとなった。

 

スボクの授業を休んでいる間、ソンはユンナに会いに行っていた。

「ねえ道令様」

2人は人気の少ない小径を散歩していた。

「どうした?」

ソンはユンナを見た。心なしか生気のない顔だった。

「まだチョンホ道令様と喧嘩なさってるんですか?」

ソンは顔を背けた。

「・・・それは君には関係ないよ」

「ありますわ。いくらチョンホ道令様が間違ったことをなさったとはいえ、仲の良かったお2人が私のせいで仲違いなさるなんて、心苦しいです」

「頼むから気にしないでくれ。あいつとはもう親友でも何でもないんだ」

ユンナはソンの手を引き、立ち止まらせる。

「あれだけずっと一緒だったのに?何でも話し合う仲だったのに?」

「おれがそう思っていただけかも」

ソンはぶっきらぼうに言った。

「・・・たった一度の過ちで、全てなかったことになさるんですか?」

ソンはユンナの顔を振り返って見た。

「道令様が一番あの方をご存知なんでしょう?あの方の考え方も、気持ちも・・・・どんな時も、いつも味方になってあげるのが親友じゃないんですか?」

「あいつはそうしなかったんだ」

「ええ。でも、普段はそうじゃないんでしょう?」

ソンは答えなかった。

「道令様、人と人との絆というのは築くのには何年もかかっても、壊れるのは一瞬なんです。だから、それを守るためにはただじっとしていてはだめなんです。常に努力して保たないといけないんです。きっと私たちの関係もそうです」

ソンはユンナの目を見た。

「道令様と信頼関係を築くのにかかった時間、労力、楽しい思い出、全て無駄にしてしまうんですか?もう二度とそんな親友は手に入らないかもしれないんですよ?よく私たちにチョンホ道令様の話をして下さったじゃないですか。道令様が本当にあの方を大事に想っているのが伝わってきました。そのお気持ちに、蓋をしてしまわれるんですか?」

ユンナはソンの腕を固く握りしめて言った。

「お前は優しいな」

ソンはそう言って苦笑いした。

「幼い頃、おれとチョンホは互いに小筆を買って贈り合ったんだ。それはおれらの親友の証だった。でも、あの時、おれはあいつの前でそれを折ってしまったんだ。いくらあいつに怒っていたとはいえ、あんなことをしてあいつがおれを許すわけがない」

ソンは弱弱しく言った。

「何を言ってるんですか。チョンホ道令様がなさったこともそれに匹敵することだとお思いだったんでしょ?それに、詫びの気持ちは口で伝えないと決して伝わりませんよ。持っているだけでも、態度で示すのでもだめです」

そう言ってユンナはソンの腕を叩いた。

「・・・確かにな」

「それに、それだけ仲が良かったんだから、私の存在を良く思わないのも仕方ないでしょう?あなた様だってチョンホ道令様にしっかり説明なさってこなかったって聞きましたし。不快に思われるのも仕方ありませんわ」

「そうかもな・・・あいつにしたら、嫌な気分だったかもな。おれがあいつを捨てて君の所に行っているように見えたのかもしれないな」

ソンはそう言ってため息をつく。

「明日、チョンホと話してみるよ」

「ええ、どうかそうなさってください。私のためにも」

ユンナはそう言って微笑んだ。

 

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今回はここまで。皆さんまた次回爆  笑