みなさんこんばんは照れ照れ

 

前回のあらすじ

14歳になったチョンホたちは、恒例の弓の大会に出場した。容姿端麗かつ文武両道のチョンホ目当てに、彼の許嫁シミンやソンの姉ホヨンを含む沢山の両班の女の子たちがお忍びで様子を覗きに来ていた。その中に、一人大きな態度で彼らを見下しているユンナという女の子がいた。ソンは自分の優勝に大金を賭けていたが、初めて見るユンナに釘付けとなり的を外してしまう。その様子を唯一目にしたチョンホはソンに不審感を抱く。大会では結局、チョンホが優勝した。

 

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最悪の出会い

 

「全く、予想通りの結果で面白くないよな」

サンミンはため息をつきながら言う。

「なに、お前が優勝するって思ってたやつもたくさんいるんだよ。そんな落ち込むなって」

イドはサンミンの肩を叩きながら言った。

「例えば誰だよ」

「ええっと、それは・・・・」

イドはもごもご言って誤魔化した。リョウォンは吹き出す。

「まあ、お陰でおれらはソンから大金をせしめたんだから、いいじゃないか」

リョウォンは笑いながら言う。

「これが闘技だったら、チョンホを女たちの前で張り倒してやったのに」

サンミンは不満そうに言った。

「おれは悔しくもなんともないよ」

チョンホは笑って言う。

「嘘つけ。みんなこいつが女に興味ないって言うけど、そんな男いるわけないと思わないか?おれは絶対演技だと思うね」

「おれが?」

「そうさ!そう言った方が女たちは夢中になるって知ってるんだ」

「さあどうかな?ソンみたいに公言してるやつが、ずいぶん人気みたいだけど?」

チョンホはそう言って後ろを指さした。ソンはすでに何人かの女の子たちにつかまっていた。

「あれ?あの子って、ハンビさんじゃ・・・」

チョンジンはソンに釘付けになっている女の子を指さす。途端にリョウォンは耳を赤くし、その子から目を逸らした。

「やめろって、リョウォンをいじめるのは」

イドはにやにや笑いながら言う。

「なんで?おれがいついじめた?」

「知らないのか?リョウォンはあのハンビって子が好・・・」

「黙れって」

リョウォンは赤面しながらイドを突き飛ばした。

「ところで、ソンはいくら損したんだ?」

チョンジンは訊く。

「さあ、お前とソン以外の全員がお前に賭けたから・・・ざっと30人分?」

イドはリョウォンに殴られた腹を抱えながら言う。

「それさすがにやばくないか?あいつが借金したらおれらまで先生に殺されるよ」

チョンジンはそう言って首を傾げる。

「あいつばかみたいに全財産を自分に賭けたからなあ」

イドもチョンジンと同じ格好をする。

チョンホは苦笑した。

「でもさ、最後のなんかおかしくなかった?何で急にあんなに外したんだろ?」

リョウォンはチョンホに言った。

チョンホは答えなかった。さっきから彼もそのことをずっと考えていたのだ。

チョンホが見た時も、その小柄な見たことのない女の子の姿はあった。ソンがきっとその子を見ていたんだろうことは確かだったが、なぜそんなに見ていたのかは彼も分からなかった。

「ソンに直接聞いてみようぜ」

イドはそう言ってリョウォンの腕を掴み、無理矢理ソンのもとに連れて行った。みんなも後に従う。

嫌がっていたリョウォンだったが、ハンビの視線に気づくと大人しくなった。

「や、やあ・・・」

リョウォンは戸惑いながら声を掛ける。

ハンビは小さく一礼したのみで、すぐにソンに向き直った。

「・・・でも、ほんとに惜しかったですね!私ぜったい道令様が勝つと思っていましたから」

「ふふん、そりゃ、いつもおれのほうがチョンホより出来てるんだからそう思っても当然だよな」

ソンは自慢げに笑う。

「なあ、さっきお前どこ見てたんだ?」

チョンホはソンの横に来て言う。

「さっきって?」

「最後の勝負の時だよ」

「・・どこも見てないけど」

「嘘つくな。お前、遠くを見たまま弓を持つ手を緩めたじゃないか」

「そんなことないけど」

「いいや、お前はよそ見してた。そんな奴に勝っても嬉しく・・・」

「ハンビ!そんなとこにいたの?」

急に甲高い声が響いたので全員驚いて振り向いた。そこには、ソンがさっき気を取られた例の小柄な少女がいた。

「あっ、ユンナ姉さん!」

ハンビはその少女に向かって叫ぶ。

ユンナはハンビに手を振り、駆け寄ってきてハンビと腕を組んだ。チョンホら男の子たちには目もくれない。

「・・・姉さん?」

イドは驚いてハンビに訊いた。

「ええ。ユンナ姉さんはこう見えて私の1つ上なんです」

ハンビは言った。

ハンビに紹介され、ユンナは初めて男の子たちの方を見た。

「ああ、さっきの方たち?」

ユンナはつまらなさそうに言った。

みんな驚いた。目の前にチョンホがいて、興味を示さない女の子は初めてだったからである。だが、チョンホの方もまるで無関心だった。彼はソンの様子をずっと観察していた。

ソンはユンナが現れた瞬間から彼女をじっと見ていた。

「し、紹介しますわ、オム家のご長女のユンナ姉さんです」

ハンビは少し戸惑いながら男の子たちに言った。

ユンナは彼らを一瞥するとそっけなく礼をした。

ソンはむっとした表情になった。

「おれらの1つ年上だって?こんなにちびなのに?」

ソンはそう言って鼻で笑った。みんな驚いてソンを見る。

当然ユンナもソンの方を見た。

「ちょっと、どなたか知りませんけど、書生の恰好をなさって礼儀はご存知ないようですね」

ユンナはハンビと組んでいた腕を離し、腕組みして言った。

「腕組みする女に言われたくないけどな」

ソンは相変わらす嘲るように言い返した。

ユンナは呆れた表情をする。

「ああ、思い出しました。さっき、よそ見をして的を外された方ですよね?どれだけ悔しいのか知りませんが、人に当たるのはやめてくれます?」

「ちょっと、ユンナ姉さん・・・ホヨン姉さんの弟さんなのに・・・」

「そんなこと知らないわ。いくら弟だからって、同一人物じゃないんだから。こんなに失礼な人に愛想笑いしてる暇なんかないわ」

「おい、お前、ふざけてんのか?」

ソンはかなりむっとしたようで、そう言うとユンナの方に近づいていった。チョンホとリョウォンが急いでそれを止める。

「ソン!」

チョンホはソンを押さえつけ、顔を見て言う。

「なんだよ、あのくそやろう」

ソンはユンナに向かって悪態をつき続けたが、ユンナはそれを鼻で笑ってハンビらを連れ去って行った。

ソンはチョンホの手を振り払い、ユンナの後姿に向いて叫んだ。

「二度と来るなよ、この性悪女!」

「いいから落ち着けって」

イドは鋭い口調でソンに言った。

男の子たちは興奮するソンを無理矢理引っ張ってその場から去った。

 

 

彼らの書房での生活は大きく変わってはいなかった。

体の大きくなった彼らにとって教室は既に窮屈な場所であったが、彼らが密着するほどぎゅうぎゅうに詰め込まれていることは授業中春画を回すのにかえって好都合だった。

彼らはもう年かさなので先生たちに鞭で叩かれることは少なかったが、怒鳴られたり本で殴られたりする機会は何倍も増えていた。

この日、いつものように一番前で授業を受けていたソンは、詩作の時間にスボクが見回りに立った隙にチョンホを小突いた。

「なあ」

「何?」

チョンホは真剣に考えている途中だったが、ソンの声で彼の方を見た。

「ちょっと悪いんだけど、金貸してくれない?」

ソンは声をひそめて言った。

「この間の賭けた金のせいか?」

チョンホは呆れて言った。

「さすがおれの親友、物分かりがいいじゃないか」

ソンはにやっと笑う。

チョンホはやれやれと首を振り、周りを見回してスボクが見ていないことを確認すると懐からお金を出しソンに渡した。

「出世払いだぞ」

「・・うわあっ、こんなに?やっぱり名家の子息は違うよなあ。ほんとありがとよ」

ソンはお金をまじまじと眺めた後それを懐にしまった。

「どうせその金も返済に充てるんだろ」

「いや、今回は違うんだ。姉上の誕生祝にノリゲを買ってあげようと思ってさ。なあ、おれああいうのどんなのがいいか全然分からないんだけど、どう思う?黄色かな?それとも赤かな?」

「現物を見ないと分かるわけないだろ」

「じゃあ一緒についてきてくれないか?」

「嫌だね」

「・・ちぇっ、いいだろ。またイドと行ったらどうせ変なのを買わされるだけなんだよ。頼む!まじでついてくれよ」

「うるさいなあ。ちょっとだけだぞ」

「よし、それじゃあ・・・いって!」

二人が会話に夢中になっている間にスボクが彼らの背後に迫ってきており、2人の後頭部を本で思いっきり殴った。

「パク・ソン、ミン・ジョンホ、静かにしないと居残りだぞ」

「・・はーい」

ソンはやる気のない声で返事した。

「・・・今のまじで痛いな」

「ほんとに」

チョンホは後頭部をさすりながら言った。

「・・・あ、そうだ、参考にリョウォンも連れて行こうか?」

チョンホはふと思い出したように言った。

「え?なんで?」

「あいつ、この間ハンビさんにノリゲか何かあげたらしいよ」

「えっ?!」

ソンは驚いて声を上げる。

「しっ!うるさいな」

「・・ごめんごめん。えっ、ほんとにあげたのか?」

「うん。渡してるところも見たんだけど、ハンビさんほんとに怖がってる感じだった」

「へへ、だろうな。だっていきなり、普段喋りもしないやつからそんなの貰ったら女の子絶対怖がるよ」

ソンはそう言って笑った。

「お前ハンビさんと仲いいんだから、リョウォンのこと良く言ってやってもいいのに」

「おれが?ハンビに?リョウォンを?はは、ありえないね」

「なんでだよ」

「おれは仲介とかしたくないし、第一ほんとに好きなら自分から話しかけたらいいじゃん」

ソンは腕を組んで言った。

「リョウォンはそれが出来ないから困って・・・うっ!」

相変わらず話し続けている2人のもとに戻ってきたスボクが、今度は二人の頭を思いっきり机に押し付けた。

「2人とも10日間居残りで硯の片づけだ」

生徒たちは2人を見てけらけら笑った。2人は額を押さえながら顔を見合わせた。

 

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今回はここまで。皆さんまた次回てへぺろ