私は最初、美優紀の言ってることが理解できなかった。
アイドル…?
テレビでよく見る歌ったり踊ったり
バラエティ出たり雑誌に載ったり
華やかな世界にいる人たち…
美優紀はもう私の学校のアイドルじゃないか~!
とか冗談で返せる空気じゃなかった
しばらく沈黙が続き
先に口を開いたのは美優紀だった
「私な、小さい頃からずっとアイドルになりたかってん。ずっと、ずっと。
そしたらこの前オーディション受けたらな
受かってん。
主に関東の方で活動してる、今けっこう人気になりつつあるグループ。
やから私、行くことにしてん」
『え…関東に…?』
「うん。」
『い、いつ?』
「……明日」
私は言葉が出なかった
急すぎて頭もついてこなかったし
何か言わなきゃと思ったが何をどう言葉にしていいかわからなく、何も発することができなかった
「彩ちゃん…今まで…ありがとう
ごめんなぁ。」
そう言うと美優紀は
自分の家に入っていった
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私は自分の部屋のベッドの上に仰向けで寝ていた
目に直接入ってくる部屋の明かりが眩しい
でも意識はそこにはむいてなくて
『…まじか…』
美優紀が昔からアイドルになりたがっていた事も、もうすぐいなくなることも、何も知らなかった。
何も気づかなかった。
私、意外と美優紀のこと知らないんだな…
しかも明日って…
私と美優紀が付き合った日
記念日じゃないか…
『ははっ…ドラマかよ…笑』
それにしても美優紀、あっさりしてたなぁ
美優紀からしたら私はそこまでの存在じゃなかったのかもしれない
昔からアイドルを目指してたんだもんな…
このまま…あっさり終わるんだろうか
美優紀の気持ちも知らないまま。
”行くな”
そう言ったら美優紀は行かないでいてくれるのだろうか?
私は明日、美優紀にどんな顔で会えばいいんだ?
私は一体どうしたらいいんだろう