再現答案:知的財産法 | Takaの司法試験やるよやるよブログ

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2022知的財産法

 

第1 設問1

1 Xは、Xデータベースはデータベース(著作権法2条1項10号の3)の著作物(2条1項1号)にあたると主張する。

2 著作物性が認めらえるには、「思想又は感情を創作的に表現」することが必要である。

 これをデータベースの著作物に引き直すと、データベースの「情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有する」(12条の2第1項)ことが必要である。

3 Xデータベースは、A県内に実在する全ての2階建ての建売住宅約3万件が選択され、そのデータ項目として、販売開始年月日、坪単価、床面積、間取り、販売状況、住みやすさという各項目が選択され、これらの項目がこの順序で端末の画面上に表示されるように構成されている。Xデータベースは、X社が選択した上記項目の選択及びその構成にX社独自の創作性が現れたものということができる。

 また、Xデータベースは住みやすさという項目においては、駅からの距離、治安の良さ、公共施設の存在、買い物のしやすさなどを基に、Xのベテラン従業員のセンスと感覚により、5段階のランク付けをするなど、創意工夫に富んだものである。

4 したがって、Xの主張は妥当である。

第2 設問2

1 YデータベースはXの著作権を侵害するものといえるか。

 Yの行為には、複製(21条)か翻案(27条)のどちらを検討すべきか。

2(1) 「複製」とは、元著作物に依拠しつつ、思想又は感情を創作的に表現することなく、元著作物を直接感得できる、元著作物を同じ著作物を作成することである。

(2) 「翻案」とは、元著作物に依拠しつつ、思想又は感情を創作的に表現し、元著作物を直接感得できる、元著作物とは異なる著作物を創作することである

3 Yデータベースは、Xデータベースの建売約3万件のデータから、販売年月日の新しい順に取り出した1万件分のデータを格納するものであり、そのデータ項目及びその画面上の順序は、Xデータベースのものと完全に一致している。

 Yデータベースは、Xデータベースからデータをそのまま映してきた反映であり、Yの思想又は感情を創作的に表現した要素が含まれていないので、Xデータベースの「複製」にあたる。

 確かに、Yデータベースは、Xデータベースにない最新の販売分500件が含まれているが、1万件のうちの500件にちか過ぎず、また、住みやすさの項目にも独自の創意工夫が見られるものではないから、上記結論に影響はない。

4 以上により、YデータベースはXの複製権を侵害する。

第3 設問3

1 Xデータベースに著作物性が認められないときに、YがYデータベースを販売した行為には、Xの著作権を侵害するか。

 著作権の侵害が認められるためには、著作物性が認められる必要があるか。

2 112条1項は、著作権の侵害を認めるには、著作物性があることを前提としている。

 同2項も同様に、「著作者」、「著作権者」、「著作権」という文言を使用しており、著作権の侵害に著作物性が認められることを前提としている。

 また、著作権法は、著作物を保護することをその目的の一つとしており、著作物性を有する著作物について適用されることを前提としている。

 そして、著作物性が認められず、著作権が成立しないということは、民法709条の「権利若しくは法律上保護された利益」の基になる、権利そのものの存在が認められないということに帰着する。

 したがって、著作権の侵害を主張して、不法行為による損害賠償を請求する場合には、目的物に著作物性が認められる必要があると考える。

 著作権法で保護されない権利については、不正競争防止法などで保護すれば足りる。

3 本件でも、Xデータベースに著作物性は認められないので、Xの著作権の侵害は認められない。

 以上により、Xの主張は妥当ではない。

第4 設問4

1 PはQに対し、Q製品の販売差止めおよび損害賠償を請求することができるか。

 PはXから著作権を許諾されているに過ぎないが、Pの請求は認められるか。

2 確かに、112条1項及び2項は、「著作者」、「著作権者」、「著作権」という文言を使用しており、著作権を有する者による請求を前提としている。

 もっとも、Pは独占権をXから付与されており、Q製品が市場に出回ることによる自己の製品の販売の減少を観念することができ、損害はあるといえる。

 また、Pが付与されているのは、特許法における専用実施権(特許法77条1項)にあたるものであり、特許法であれば、差止及び損害賠償の請求が認められる(特許法100条1項、民法709条)。

 したがって、独占権を付与されている状況では、被許諾者に上記請求権を認めるべきである。

3 本件でも、PはXより独占的な許諾を与えられているので、上記請求をすることができる。

 Qの主張は妥当ではない。

以上