あああああああああ!!!

(テンションの暴力...)

 

舞台
台風23号
@MILANO-Za公演

10/26(土)18:00
10/27(日)13:00(千穐楽)

の2公演を観劇させていただきました。

 

今まで、イベントは行きたくても行けない立場で居りました。

ついに行ってしまいました。
はい。


始めましょう。

大いにネタバレになるでしょうな。

バラ指定校。
(変換機能よ、目を覚ませ。)

バラして行こう。

+。+。+。+。+。+。+。+。+。+。+。+。+。+


配達員・・・森田剛

ヘルパー(田辺浩一)・・・間宮祥太朗

井上智子・・・木村多江

井上秀樹・・・藤井隆

菊池宏美・・・伊原六花

警官(溝口?)・・・駒木根隆介

星野純・・・赤堀雅秋

菊池雅美・・・秋山菜津子

古川勝・・・佐藤B作

※プログラム記載順(敬称略)
 

 

纏めるうちに文字起こしになっちゃったので舞台の内容をざっくり文字化しています。

順序とか流れが違うとこがあるのはわかってんですけど、さすがに緊張しながら観た2回きりで全部暗記するのは無理でした...

繋がりや流れの曖昧な部分は「・」で区切ったりしてます。台詞ややりとりもかなり端折っている上にニュアンスで脚色もしてます。

これが全てだとは思わずに捉えてくださいませアセアセ

注意全体を終えての文字数

ついに15000字を超えますガーン(正気か)

なので、感想は別で上げますお願い

 

 

覚悟のある方は先へ進んでください。

観劇済みの方はスルーしてくださいね。

時間の浪費〜もやもや

 

 


とある昼時。

菓子パンを片手に役場の前のベンチでいつものように休憩をとる配達員。
そこへ煙草を吸うために出てきた役場職員の秀樹。

海辺の町は10月とは思えない暑さにうだる

「...(鼻でにおいを嗅ぐ)クサッ、臭いなぁ、、」(秀)

配達員に気がつく秀樹

「いや、海!なんかいつもに増して臭い。クジラでも死んでんのかなぁ。」(秀)

「・・・」(配)
「暑いですね。もう、10月ですよ?...良かったら中で休んでもらっても!中、冷房ガンガンで、役場の人間なんて防寒対策してるくらいだから」(秀)

「冷房嫌いなんでぇ!!!」(配)

「?!」(秀)

「冷房にあたると喉んとこ痒くなってくんですよねぇ!!なんかこう、喉の奥が。でもかけないじゃないですか!?嫌なんですよ。喉やられるとすぐ熱とか出ちゃうんで!そしたら仕事休まなく行けなくなっちゃうから!生活できなくなっちゃう。もうそこら中室外機だらけ!!みんな自分のことしか考えてないから!!!」(配)

「確かに年々暑いですよね。心配になっちゃいますよ。ほら、僕らのうちはまだ大丈夫だろうけど、子供達の未来とか??どうなっちゃうんですかね、、、地球」(秀)



「役場の電話も鳴りっぱなしで嫌になりますよ、花火大会中止にするのかって。そんなの上に言ってくれって話なんですけどねー。でもこの調子じゃ全然できそうなんだけど、、本当に来るのかな、台風」(秀)



介護ヘルパーの男が老人を探しにやってくる。

 

自販機で水を買おうとする配達員

「あれ?入んない」(配)

「新しい500円ですか?ほかに小銭は…」(へ)
「10円足んない!!なんで水が120円もするんですかねぇ?」(配)

「これ使ってください(10円を差し出す)」(へ)

執拗に断る配達員。少しの貸しも作りたくないかの様。
「いや、たかが10円ですから!拾ったと思って!ね?」(へ)
ヘルパーは10円を配達員に渡し、老人を追って役場の中へ。


ベンチの前に置き去りにされた配達途中の荷物を物色する菊池雅美。

「ダメだよ勝手に触っちゃ!ワレモノとかもあるんだから!壊れたりしたらあんた弁償だよ?」(配)

午前中指定の荷物がまだ届かないから...という雅美。

「休憩もさせてくれないんですか?たかが10分ですよ?別にさぼってるわけじゃなくて与えられた権利ですからこれは!!!」(配)

 


「どうかされましたか?いや、大きい声がしたんで...」(溝)
「午前中指定の荷物が届かないから、それで...ちょっと気になっただけで別に。でも自分で本部に問い合わせてみます!」(菊)
「いやいやそんな細かいことは逆に本部はわかってないから私の方で確認しますから!どちらです?」(配)
「そこです。そのスナックが私の自宅です。」(菊)
「私のエリアだぁ・・・念のためお名前」(配)
「菊池です。」(菊)
「完全に私のエリア!」(配)

「じゃぁ、私はこれで…」(溝)
「あ!!見つかったの?例の事件の犯人!●●さんのお宅の犬が毒殺されたって・・・」(菊)
「いやぁまだ。。。」(溝)
「大きいの?」(菊)
「え?」(溝)
「犬!大きいの?」(菊)
「まぁ、、、ごーるでん..」(溝)
「大きいじゃない!可哀想にー!」(菊)



役場から出てきたヘルパー
「うぁぁ出たら出たで暑い」(へ)
「そりゃそーですよそこら中室外機だらけなんだからぁ!!」(配)
「もー、どこに行けばいいんだろー、俺」(へ)
「・・・(荷物を運ぼうと動き出す)」(配)
「どーしたんですか!?それ!血出てますよ?(配達員の肘を指す)」(へ)
「ええ?あ!本当だ!さっきそこの段差でつまづて転んだんですよ!もうそこら中段差だらけ!!!」(配)
「なんか応急手当てとかした方がいいんじゃ..」(へ)
「そんな暇ないから!時間ないから!みんなAmazonばっかだから!!」(配)
「そーですよねやっぱもうみんなAmazonですよねぇ」(へ)

 

配達員の携帯が鳴る。

「嫁です(ニヤッとする)」(配)

「何?仕事中!今仕事中!なに?茂(息子)がうるさくて聞こえない!え?単三電池?何に使うの?え?とりあえず買って帰ればいのね?...」(配)

にこやかに見守るヘルパー

 

「勤務先の住所教えてもらえます?」(配)

「え?」(へ)

「借りたお金返しに行けるから。いや流石に自宅はいやですよねぇ?」(配)

「いや本当に大丈夫なんで!!」(へ)

 


「なんか付いてる...(ヘルパーの左肩の背中側)」(配)
「え?」(へ)
「いや、これ。スーパーとかの値段書いてあるシールだ」(配)
「あぁ・・・いたずらです。老人たちのイタズラ」(へ)
「¥898...意外と高いねぇ(笑)」(配)
「どーいうことですか!?!僕が¥898の価値もないってことですか!!?」(へ)
「いや違、スーパーとかのこの値札シールって大体100いくらとかだと思うじゃないですか!スーパーで898円て結構高いなと思って」(配)
「・・・ッハハハハハハハ!確かに!そういうハハハハハッ、結構良い値段付けてくれたんですね、そりゃそーですよこっちも100いくらとかじゃ腹立っちゃいますもんねッッハハハハハ」(へ)
「??ちょっと何言ってんのか全然わかんない!」(配)

 

 

「何時までです?勤務時間」(配)

「はっきり決めてないですけど、だいたい17時とかですかねぇー。」(へ)

「じゃあ17時すぎにここで待ってるんで」(配)

「はい?」(へ)

「いや10円!」(配)

いやぁ、、、と首を傾げ聞く耳を持たず役場へ戻るヘルパー

 



一度家に帰っていた菊池雅美が再び外へ出て鉢植えの植物に水をやる。
日傘に花柄のワンピースでにこやかに現れたのは井上智子。

「菊池さぁん!こんにちはぁ!」(智)
「あら、智子さんどうしたの?」(菊)
「タッパー返しに!ほら!この前の!!」(智)
「タッパー?そんなことあったっけ?いつの?」(菊)
「そんなに前じゃないわよ?かぼちゃの煮物!ほんとに美味しかったぁ。」(智)
「ああ、あの時の!作りすぎちゃったからお客さんに持って帰ってもらったのよね。でもタッパーなんてよかったのに…」(菊)
「でも本当に美味しかったぁ。普通のレシピと何か違うの?特別な調味料が入ってるとか?」(智)
「ううん全然!本当よくある、普通のレシピ」(菊)

智子の手から雅美の元へ返ってきたのはかぼちゃの煮物が入ったままのタッパー。。。



「そういえばね、うちのお父さん、また踊ってるかしら?この前のダンスすっごくわかいかったぁ!老人会の皆でね!ヘルパーさんに教わって、すっごい楽しそうに踊ってたの。ほら~!あの最近すっごく流行りの!!ぁのー、ほら!最近(体でリズムを刻みながら秀樹に答えを求める)」(智)
「韓国?!」(菊)
「韓国じゃない!…ほらー!あのー!最近すっごく流行ってるぅ(体でリズムを刻みながら秀樹に答えを求める)」(智)
「いやもうちょっとなんかヒントとか…」(秀)

(会話の途中で間を走り抜けて配達に行き来する配達員)

役場から出てきた老人は智子の父、古川勝

後に続いてヘルパー

「お父さん!今日ヘルパーさんの日でしょ?なんでここにいるの」(智)
「(耳に手を当て)え?」(勝)
「ヘルパーさん!」(智)
「ゲルゲさん?」(勝)
「えなに?(ヘルパーの方を見て)ドイツ人だったの?」(秀)
「いやぁ、古川さん、本読むの大好きだからいっつもここで本読んで、ね?」(へ)
勝の服の乱れを直しながら話すヘルパー



「あれ、俺のメガネどこだ?ずっとかけてたよな?どこやったかな?」(勝)
「あ、これ、ロビーにあったんで(メガネを差し出す)」(へ)



ラフなスタイルで雅美の店から出てきたのは娘の宏美。
「今起きたの?」(菊)
 「(電子タバコを取り出す)」(宏)
「そっか宏美ちゃん帰ってきてたんですね!」(秀)
「(アゴで会釈するように頭を下げる素ぶり)」(宏)
「挨拶くらいちゃんとしなさい!、、あんた煙草吸ってんの?!!」(菊)

「いや、これ煙草じゃなくて電子タバコだから。」(宏)

「タバコじゃない!!」(菊)

「これはその煙草っていうか、電子の、あのー、やつだから...っていうか、それ私のTシャツ!!勝手に着ないでくれる?」(宏)

「どーりで今日の菊池さんなんか若く見えると思った!」(秀)

「どー言う意味よ!」(菊)

「いや褒めたつもりだったんだけど…」(秀)



「あー腰が痛いちょっとここに座りたい(階段に座る)」(勝)
「やだーそんなとこ座らないでよ!そのズボン洗濯したばっかなのに。それにこんなとこいたら熱中症になっちゃう」(智)
「え?」(勝)
「熱中症!!」(智)
「殺虫剤?」(勝)

・ 


「今日も楽しく踊ってるのかと思ってたのにー!ほら、この前ヘルパーさんが優しく教えてくれて!あのーほら!最近はやりの曲で…ほらー、あの…」(智)
「パプリカ!」(へ)
「あそうそう!パプリカ!!」(智)
「最初は嫌がってたのに△△さんたちに誘われてだんだんノリノリになって!」」(へ)
「もうほんとに可愛かった。お父さんのあんな顔久しぶりに見た!いや、初めて見たかも…」(智)
「あれ、、、財布がない。俺の財布。どこやったかな」(勝)
「役場のロビーには?」(菊)
「いやぁ、僕が見た限りではこれ(メガネと本)しか…」(へ)
「あの財布には10万円入ってるんだ!」(勝)
「なんでそんなに!何に使うのよ」(智)
「いや何にも使わない。ただ何かあった時のためにいつも10万円いれてるんだ!!」(勝)
ザワザワと探す面々
「お前だろ!(ヘルパーを指す)」(勝)
「いや待ってくださいよそんなことするわけ無いじゃないですかぁ!!」(へ)
「いーや、お前しかいない。いつもオカマみたいに人の体をベタベタ触って!お前しか考えられないだろう」(勝)
「勘弁してくださいよ...」(へ)
「あのー!それじゃないですか?」(宏)
勝が座っていた階段に落ちている財布を拾い秀樹に渡す宏美。

秀樹から「俺のだ!」と財布をもぎ取り中身を確認する勝…

「ああ、腹が減った、智子、何か作ってくれ、そうめんでもなんでも」(勝)

「・・・謝ってよ!!!」(智)

「・・なんで謝るんだ」(勝)

「犯人扱いしたでしょ!ヘルパーさんの事!謝って!」(智)

「疑われるようなことするから悪いんだろう!」(勝)

「はぁ?…昔っからそう。いっつも自分勝手で。お父さんが他の女のところほっつき歩いて好き勝手して、お母さんがどれだけ苦労したかわかってる?…私、あなたなんか大っ嫌い!!!」(智)

「智子!」(秀)

 

 

よろめき倒れ込む智子

駆け寄ろうとする秀樹…を差し置いてすかさず「大丈夫ですかぁ!」と寄り添うヘルパー。

「僕が支えますね!立てますか?せーのっ…少し休んだ方がいいかもしれないなぁ。歩きますよ!(役場の)中借りますね!!休んだ方がいいなーこれは…」(へ)

「アッ、、よかったら上に畳の部屋ありますんでー!!」(秀)

 

 

雅美と宏美の親子のシーン

「てか、病気って言うから飛んで帰ってきたのに、元気じゃん!?私を帰らせるためのドッキリ?そんなのいらないから。」(宏)

「だってあんた全然連絡もよこさないし」(菊)

「忙しいの!わざわざバイト休んで帰って来たんだよ?」(宏)

「バイトってなんのバイト?飲食業だって前は聞いたけどそれも前の話でしょ?、、今は何のバイト?時給いくら?彼氏は居るの?もしかして厨房の人?その人はあんたのことちゃんと大事にしてくくれてるの?時給いくら?まさか不倫じゃないでしょうね?どんな人?」(菊)

「・・・」(宏)

「男なんて体に飽きたらすぐ捨てるんだから!お母さん今まで何回もそういう目にあってきてるから!あんたには同じ苦労をしてほしくないのよ」(菊)

「いや彼氏とか居ないから。」(宏)

「じゃあお母さんが紹介してあげる。あんたに合いそうな人何人か知ってるから!」(菊)

「いや、、、、。てかあのオッサン誰?さっき起きたらここ(顔面の前)に知らないオッサンの顔あって私もうびっくりしすぎて心臓止まるかと思ったからね?」(宏)

「ああ、星野純さん。母さんの今の恋人。個人タクシーの運転手やってる人。待ってるつもりが寝ちゃったんでしょ。自分家帰って寝ればいいのにねぇ!」(菊)

 「・・・」(宏)

「あの人と結婚しようと思ってる。ごめんね、母さんばっかり幸せになってぇ、、」(菊)

星野純が店から出てくる

「あ、これ娘の宏美!」(菊)

「あ、うん。さっき見た」(純)

「ほら宏美も挨拶して」(菊)

「どうも」(宏)

「なんで起こしてくんねぇんだよ!(宏美には目もくれず)行ったんか?、、いや、コンコルド!!!行ったんか?」(純)

「・・・うん」(菊)

「っんで1人で行くんだよ!ワンワンパラダイス今日からだから一緒に行こうつってたじゃねぇかよ!」(純)

「昨日仕事終わりにLINEしたら行くの厳しいかもっていうから」(菊)

「うん、行かねぇとは言ってねぇよな?厳しいつったけど俺行かねぇとは一言も言ってねぇよなぁ?」(純)

「・・・」(菊)

「で?いくら負けたんだよ?言ってみそ?・・・いや怒らねぇから!!言ってみそ?」(純)

「・・・4万」(菊)

「・・・。ま、そうなるわな!!うん。だから言ったじゃねぇかよワンワンパラダイスは難しいから!お前1人じゃ太刀打ちできるわけねぇって!!梶田さん(仮名)が難しいつってんだから。あの人は遊びでやってねえから一本筋通ってっから。ああいう人間になりてえよなぁ、うん。」(純)

 

 

「なんか食べる?昨日作った焼きそばでよかったらチンするけど‥」(菊)

「おん」(純)

「宏美も食べる?」(菊)

「、いぃ、いらない。」(宏)

店へ戻っていく雅美。

「イイ女だよなぁ~」(純)

苦笑いの宏美。

「おっぱい取りたくねえって。そんなもんまたあとで手術でもすりゃあどーにでもなんのにな。」(純)

少し表情を曇らせる宏美…

「今は薬で散らしてるみてぇだけど、取っちまえば一発なのになー!・・・(宏美に向かって)何カップ?」(純)

ぎょっとした顔で純を見る宏美…

「いやわかってるよ、コンプライアンスだろ?そんぐらい知ってるよ俺めちゃくちゃテレビとか見てっからぁ!」(純)

そういって店に入っていく星野純。

 

宏美は呆然とした様子でどこへともなく歩きだす

 

 

しばらく休んだ智子が役場から出てくる。

後を追ってでてきたのは、ヘルパー。

「ちょっとー!なんなんですかぁ?これ!ロビーで汗拭こうと思ってポケットから出したら、これ!!!」(へ)

「フフそれ、私のパンティ」(智)

「いやそれはわかってますけど勘弁してくださいよーもう。(パンツを智子へ返そうと差し出す)」(へ)

「やだ!返さないで!今日だけでいいから、持っててほしいの。お願い。今日だけでいいから…」(智)

しぶしぶパンツをポケットに戻すヘルパー。

「そういえば!今度ね、隣町のイオンモールに有名なアーティストが来るんですって!ほらあの、今流行の…」(智)

「へぇ、、」(へ)

「とにかく、絶対楽しいから、よかったら一緒に行こう!」(智)

まんざらでもなさそうなヘルパー…

「あ、、、風が変わった。もう何年も前に、戦後最大級って言われる台風がこの街を襲って、建物とかも全部跡形もなくなったことがあるらしいんです。。。いよいよ来るんですかね、台風23号」(へ)

 

 

ドンドコ~♪

(突然の太鼓の音とともに暗転)

 


 

辺りは暗くなり町の街灯が灯る。夜。

 

 

ベンチに腰掛ける雅美。

追って出てくる宏美

「お母さんだって一人になりたいことくらいあんのよ。」(菊)

「いやでもお客さん待ってるし」(宏)

「お願いだから、一人にして」(菊)

母の様子を気にかけながら店へ戻る宏美

 

そこへやってきた智子。

「あら菊池さん、なにしてるのこんなとこで」(智)

「ちょっと休憩。智子さんだってどうしたの?こんな夜に一人で。危ないわよ」(菊)

「誰もこんなババア襲ったりなんかしないわよ」(智)

「フフフ、智子さんもそんな冗談言うんだ」(菊)

「冗談なんかじゃないわよ?ほんとにそうだから。」(智)

 

 

配達員がやってくる

「そこ!!!困りますよ予約してたのに!」(配)

「予約?・・・あ、これ?(自分の横に置いてある配達員の帽子を手に取る)。ごめんなさいね、気が付かなくて。」(菊)

雅美から譲られたベンチに腰掛けパンを開けようとする配達員。

まだ届かない自分の荷物が気になる様子の雅美。

「休憩もさせてくれないんですかぁ?」(配)

いやいやを遠慮がちに首を振り店に戻る雅美。

~♪配達員の社用スマホが鳴る

「はい?いやピンポン鳴らしたけど出てこなかったから!結構何回もピンポンしたんですけどねー?え?お風呂に入ってた?いやそんなこと言われましてもこちらは指定の時間内に伺ってますからー!大きい声出さないで下さいよこっちも人間なんだからあ!クレーム?良いですよ別にこっちは何も悪いことしてないんでぇ…」(配)

 

 

そこへ、‶父の行方が分からないから一緒に探してほしい”と、就業後の時間帯にもかかわらず、警察ではなくヘルパーを頼ってきた智子の頼みを断れず一緒に探すことになったヘルパーがやってくる。
「小さい老人見ませんでした?古川勝さんって言うんですけど…」(へ)

「いやぁ、」(配)

「老人なんてみんな小さいか。ハハ。…大丈夫だと思うんですけどねぇ、、ほら長年の経験上?いやもう何人も老人相手にしてきましたから。しかも勤務時間外ですよ?あれ、なんで俺知らない人にこんな話してんだろ…」(へ)

「ずっと待ってたんですけど?!」(配)

「はい?」(へ)

「僕言いましたよね?17時にここで10円返すって。なんですか?着替えたりなんかして、もしかして一回家に帰ったとか言いませんよねぇ?」(配)

「いやそれ本気で言ってます?」(へ)

「いや私ずっと待ってましたから!!」(配)

「だから要らないって言ってるじゃないですか!!」(へ)

「…!!ここ(前歯)の差し歯が取れてる!大きい声出したからだー!接着剤で止めてたけどやっぱだめかぁ、アロンアルファ…」(配)
「接着剤?!?絶対歯医者行った方が良いですよ」(へ)
「だからそんな時間無いから!!‥落ちたとしたらこの辺りだよなぁ。…一緒に探してよ!!!」(配)
「いや僕老人探してるんで!!!」(へ)

そしてついには配達員が返そうとした10円を「要らないです!!!」を突っぱねて去る。

 

 

宏美が店から出てくる。

地面に顔を近づけて何かを探している様子の配達員

「何か探してるんですか?」(宏)

顔をあげ若い女を見るなり口元を隠し

「いや、、」(配)

「探すの手伝いましょうか?何探してるんですか?」(宏)

「(口元を隠したまま)いや、、大丈夫です!」(配)

「ちなみに何探してるかだけ教えてもらってもいいですか?」(宏)

「あー、いやぁ…」(配)

~♪電話が鳴る

「今仕事中!なに?茂がうるさくて聞こえない!え?単三電池ね!?買って帰ればいいのね?」(配)

電話を切ってまた配達へと立ち上がる。

 

 

雅美が店から出てくる。

「宏美!何してんのよ。溝口さん待ってるじゃない。いい人でしょう」(菊)

「いやぁ・・・」(宏)

「あんた、見た目で判断してんの?そりゃあ、ちょっと太ってるかもしれないけど公務員だし真面目だしそれくらいいじゃない!お母さんそれでいっぱい失敗してんだから!見た目で選んだって良いことないわよ」(菊)

「お見合いとかいいから…」(宏)

「お客さん待ってるから行くわね。」(菊)

入れ替わるように店から溝口が出てくる

「なんか食べる?ナポリタン?」(菊)

「いやぁ、、お腹減ってないんでぇ、、大丈夫です」(溝)

あそ、と店に戻る雅美。

「これでも3㎏瘦せたんですけどねぇー、いや特に何したわけではないんですけど、この前健康診断でお医者さんに目の前で”このままじゃ死にますよ”って言われてぇ。ママ、マジかぁーーってなってえ。さすがにまだ死にたくないじゃないですか。あ、僕お風呂上りは絶対にアイス食べたい人なんですけど、最近ずっと我慢しててぇ。そういうので気づいたらまあ3㎏くらい?はぁい。」(溝)

「そんなに生きたいですか?」(宏)

「どちらにお住まいなんですか?」(溝)

「へ?」(宏)

「あ、や、別に変な意味とかないですよ」(溝)

「なんかそこから話広がるかなあとか思って。僕も友達に誘われてたまに東京行ったりするんでぇ。幕張メッセとか?行ったことあります」(溝)

「はぁ・・・」(宏)

「どちらです?」(溝)

「上石神井…です」(宏)

「ん??」(溝)

「カミシャクジイ…」(宏)

「あぁーー。」(溝)

「クックックックック(突然笑いだす)」(溝)

怪訝な顔で見る宏美

「あーいやいや、クックックックックヒャッヒャッヒャッヒャ、いや全然、ブハハいやあの、これ、落ち聞いたら絶対笑うと思うんですけどぉ、ヒッヒッヒッヒ、この前ショッピングモールに行ったら、エスカレーターで前に居た女の人の背中に綺麗な金のボタンついてんなあと思ったら、カナブンでぇ、クックックック、よくよく考えてみたらそんなボタンとかついてるような服装じゃなくて、普通にあのTシャツにGパンみたいな?で、僕目が良くないんでぼんやりなんですけど、その背中のボタンをジーっと見てたら、ちょっと動いたんです!!で、だんだんそのボタンが女性の襟元に向かって登ってくんですよ!!!ヒッヒッヒッヒッヒ、隣にいる男性も全然気づいて無くてぇ。そしたら次の瞬間パァァァァって飛んだんですよそれが!!!何だったと思います?」(溝)

「いや、だからカナ..」(宏)

「カナブンだったんですよおおお!!クックックックもう僕そん時一人で腰抜かすかと思いましたよ!はー、、ね!!?面白いでしょー?!!」(溝)

「・・・あー、私ちょっと、歩きます、あ、まだ結婚とかそういうの全然考えてなくて。すみません」(宏)

「あ、じゃあ僕も行きます」(宏)

「や、一人で。・・・」(宏)

置いて行かれる溝口。

 

 

電信柱の陰に智子が現れる。

店に戻ろうと踵を返して歩き出しふと見上げて智子に気づいた溝口。

「びっっっくりしたああああ!見えちゃいけないものが見えたんかと思いましたよ!!」(溝)

「私、生きてます?」(智)

 「はい、い、生きてます」(溝)

「よかったぁー、、あら!よく見たらお巡りさん!?、、そう言えばあの事件、解決したの?」(智)

「いやぁ、まだ、、全力で捜査してるんですけどねぇ。」(溝)

「その格好で??」(智)

Tシャツに短パンの溝口。

「いや流石に今はプライベートですけど」(溝)

「ああ、そっか!!、そういえばね!この前...」(智)

「じゃ、僕、店、、、」(溝)

そう言って雅美の店へ戻る

 

ヘルパーが戻ってくる智子に気づく

「居ました?」(へ)

「ううん、、よく行くお店とか飲み屋さんにも電話してみたけど居ないって。」(智)

「☆☆☆は?△△さんがよく行くっていってたから、そこなら居るかも」(へ)

「じゃあ尚更居ない。お父さん△△さんのこと嫌いだから」(智)

「へ?、、いつもあんなに仲良さそうにしてるのに」(へ)

「家では悪口ばっか言ってるから」(智)

 

 

「あ、ねぇ!あの●●さん家の犬が殺されたって、あの事件まだ犯人見たかってないんですって!そしたら××さんとこの犬もやられたんだって!!・・・まぁでも、××さんも××さんよねぇ、あの人人に恨まれる様なことしてるからぁ」(智)

「その話やめません?」(へ)

「?」(智)

「もうその話はやめてくださいよ。(苛立ちながら自販機の前で財布を開く)...10円持ってます?」(へ)

「え?」(智)

「10円!!!」(へ)

「あ、ごめん、財布持って来てない...」(智)

「はぁ、、、」(へ)

「××さん、ヘルパーさんのこと好きだと思う!、、ほら、どう思ってるかなんて顔を見てればわかるから!たぶんそうだと思う。」(智)

「そうだ!アーケードにね、新しくカフェができたんだって!テラス席とかもあって、なんかランチとか結構人気で、よく並んだりしてるみたい。でもお料理もちゃんとしてて、カフェって言うよりレストランって感じかなぁ!良かったら今度行って見ない?」

智子は父を探しているより、何かにつけてヘルパーと話していたいだけかのようなやり取りを続ける。

「もう、別れましょう、、、正直もう、しんどいです。だから、別れましょう」(へ)

 

別れたくない、とヘルパーに抱き着く智子

「ちょっと、やめてくださいよ...誰が見てるかわからないじゃないですか!」(へ)

抱きしめ返すこともなくただ受け身で抱かれるまま天を仰いで嫌そうに突っ立っている

「誰に見られたっていいじゃない!」(智)

「離れろよっ!!(智子の体を突き放す)」(へ)

 「・・・私、気持ち悪いでしょ。ほんと、気持ち悪い!」(智)

そう言いながら腹の前に抱えた右腕を左の拳でガンガン殴り身を屈める。。

 

気まずい空気の中今度はそこへ秀樹が現れる

「旦那さん!!」(へ)

何事も無かったかの様を取り繕ってすぐさま反応するヘルパーと、智子のただならぬ様子をうかがいながらも、自身もまたなんとなく繕いながらの秀樹。

 

 

「勝さんが居なくなって!それで智子さんと探してたんです。」(へ)

「えっ!そうなの?心配だね…」(秀)

そう言いつついつもの飲み屋にいるのでは?などなどもうとっくに済んだ話をして智子を追い詰めている。父の介護にいつもどこか他人事で自分の事ばかり、智子の抱く秀樹に対する嫌悪が空気をよぎり。

「私、もう一回アーケードの方探してくる…」(智)

気落ちした様子で進む智子に「僕も行こうか?」と上辺の声かけをするも断られ。

その夫婦のやり取りと自分の立場の気まずさから逃げるように智子を追ってまた勝を探しに行こうとするヘルパーの背中に向かって秀樹が発した確信。

 

「別れないであげてね!」(秀)

「え?」(へ)

「別れないであげてね。…智子ホント綺麗になった。」(秀)

「え、、いや何のことですか?」(へ)

「あなたが来てくれるようになってから、本当に変わったんです」(秀)

「いや何言ってるんですか僕はそんなこと…」(へ)

「やめて。今何かが崩れたら私あなたの事を殴り続けると思う。力の差で負けるのはわかってるけど、それでもずっと殴り続けると思う。…智子、前は本当に気圧の変化に弱かったりで、寝室から出てこなかったり、洗濯物なんて1カ月ぐらい平気でほったらかしで。もちろんできる範囲で僕がやってましたよ。でもあなたが来るようになって、毎日化粧もするようになって、いつも何かのサイトをチェックしたりして。別にそれはいいんです!智子が欲しいものを買うくらいの金額はたかが知れてるし。それよりも元気になったから。それがすごい嬉しくて。だから、、別れないであげて…」(秀)

「・・・気持ち悪。あんたら夫婦揃いもそろって気持ち悪い!!!」(へ)

そう言い残しうんざりした様子でその場を立ち去る。 

涙を堪えながらの秀樹の訴えが空気に漂って切ない...

 

 

ただならぬ様子で店から飛び出て来た雅美

慌てて表情を整える秀樹。

「あ、今から店、行こうと思ってて、今時の奴らって平気で断りますよねぇ!花火大会の残念会、後輩何人か連れてたのに、もう僕1人っすよぉ。お店にボトル、まだありましたっけ?」(秀)

秀樹の言葉など聞こえていなさそうな雅美。

その後を追って出て来た星野純、

それを見てまた逃げる様に駆け出す雅美

「おい!待てよ」と追う純

それを見届けるかの様に出て来た溝口

「え、何事?」(秀)

「ひやぁ、なんか喧嘩が始まってぇ。最初は?なんか真面目に話してたんですよあの2人、雅美さんの方があの男の人に教えを請うみたいな感じで?雅美さんも時々チラシの裏側にメモとったりなんかして?そしたらなんかそなやりとりが次第にエスカレートしちゃって。いや僕も客なんでぇ、ちょっとくらい気を遣ってくれよって話なんすけどねぇ。おかげでいいちこのボトル、1本空けてやりましたよ。下町のナポレオン?はぁい。」(溝)

「へぇ...」(秀)

「あ、ワンワンパラダイスがどうとか言って」(溝)

 

 

配達員は昼間と変わらず右へ左への荷物を運ぶ

 

 

別の道を全速力で走り抜ける雅美

後を追う純

 

近くで救急車のサイレンが鳴り響く

 

1人散歩から戻って来た様子の宏美

 

サイレンの方に向かって純の声が木霊する

「雅美ぃーーー!!!」

 

 

その場にいた秀樹と溝口に言い寄る宏美

「何かあったんですか?」(宏)

「いやぁ、別に」(溝)

「もしかして、お母さん?」(宏)

「いや、そんな大したことじゃないから」(秀)

「隠さずに教えてください」(宏)

「いやいや、本当宏美ちゃんが気にすることじゃないというか、大人には大人の事情があって、ね」(秀)

「そうそうそう、別にそんな、うん」(溝)

「私もう25ですから!受け入れる準備できてますからぁ!、、もぅ、、もぅ(顔を伏せしゃがみ込む)。。。なんもない、、、なんも、ない」(宏)

「いや、そんな、泣かなくても、、」(秀)

「...ません、本当すみません、ふふ、別に泣くつもりなかったんですけど、、でもやっぱりお母さんには生きてて欲しい...」(宏)

 

 

再び走ってくる雅美、息を上げて立ち止まる、、、

「??」(宏)

「ヒィー、、、ヒィー、、、ホマエ、、ヒィー、マテッテ、ヒィー、、、」(純)

雅美を追い続け息を荒げ、何を言っているかわからない星野純。

「ヒィー、ヒィー、ホマエ、、、、ん、で、、、逃げんだよ」(純)

「あんたが、他人の話聞かないで馬鹿にしてくるからでしょ!!私だって真剣にやってるよ!ワンワンパラダイス!それなのに...」(菊)

「お前がパチンコのこと馬鹿にするからだろ!たかがパチンコとか言うから!所詮お前の気持ちはその程度だってこと!たかがパチンコだとしか思ってないってこと!若い時の俺だったら横っ面2.3発殴ってるぞ」(純)

「殴ればいいじゃない!」(菊)

「若い時の俺だったらつってんだろ」(純)

「それに私たかがなんて言ってない!たかがなんて一言も言ってない!あなたが勝手に付け足したんでしょう!!私そんな軽い気持ちであの遊びやってないから!」(菊)

「はい、言ったな?今お前遊びっつったよな?今こいつ遊びっていったの聞いたよな?(周りに問いかける)それが全て。あなたにとってはその程度ってこと。そんなんじゃ俺梶田さんに合わせる顔がねぇよ。もう結構ですお前とはやってられねぇ。ありがとうございましたー」(純)

踵を返して去っていく純

「そんなこと言わないでよ!!!私それでも頑張って勉強しようとしてんじゃない!一生懸命やってんじゃない!あんたといたいから!あんたとずーっと一緒にいたいから!!、純ーーー」(菊)

立ち止まる星野純。振り返って

「ほら、一緒に勉強すんだろ?ワンワンパラダイス」(純)

「・・・うん!」(菊)

 

 

「腹減ったな」(純)

「ナポリタンでいい?、、あ、井上さん、確かまだボトルあったと思う!!溝口さんも、ナポリタン、食べる?」(菊)

「あ、じゃあ僕もちょっと食べようなぁ、」(溝)

純に続いて店に入っていく秀樹と溝口。

最後に入ろうとする雅美

「お母さん!・・・手術、受けた方がいいと思う。やっぱり私、お母さんには生きてて欲しいし」(宏)

「あんたに何がわかんの?お母さん、これでも必死に生きてるの。あんたのために生きてるんじゃないの。」(菊)

そう言って店に入る雅美。

 

 

配達員はまだ配達が終わらない。

 

 

抱えられるだけの荷物を抱え、もう何度目かの階段を登る、、途中でよろめき倒れ込む配達員

「大丈夫ですか!!?え、救急車とか、」(宏)

「大丈夫、、!こうしてれば大丈夫だから」(配)

♪個人携帯の奥さんからの着信に出る配達員

『仕事中!今仕事中!だから何回もかけてこないでって言ってるじゃ..おおおお茂かぁー?どした?お母さんは?え?なに?サナギが何?興奮してて何言ってるか全然わかんない!サナギ?え!なに?サナギが羽化して?カブトムシになったの?えええ!!すごいじゃん!その瞬間に立ち会えたの?すご、良かったなあああ!凄いことだよ!すごおおおいじゃん!えー、生きててよかったなぁ。うん、え?お父さんまだ仕事!まだ帰れない!泣かなくていいじゃん。もうすぐ終わるから!そしたら帰って一緒に見れるから、ね。』

通話を終えてまた立ち上がる配達員。

「大丈夫です、、か、」(宏)

宏美の言葉を置き去りに配達へ向かう。。。

 

 

 一人残され物思いにふけっている宏美の前に、傘をさして歩いて現れる勝。

「雨、もう降ってないですよ!」(宏)

「え、もうやんだ?...まったく、嫌になっちゃうねぇ。雨が止んだことにも気づかず歩いて…」(勝)

畳んだ傘をベンチに投げ置いて腰掛ける勝。

「大丈夫ですか?」(宏)

「え?」(勝)

「いや、お疲れの様だから…」(宏)

「おつかい?」(大)

「お つ か れ !の様だから!!!」(宏)

「おつかいはいつもヘルパーさんがやってくれる。言えばなんだって買ってきてくれる。あの人がやるとなんでも早いんだ…」(勝)

 

そして一人しゃべり続ける勝を置いてそっと立ち去る宏美。

ふと「ね?お嬢さんも…」と振り返り誰もいないことに気づく。

「とうとう亡霊と話すようになってしまったか…。煙草が吸いたい。・・・タバコ」(勝)

 

そこへ荷物を運ぶ配達員が通りかかり立ち止まると、

ドンッと地面へ配達中の段ボールを叩きつける。

再び拾い上げまためいっぱいドンッ!!!

…目線をあげて勝の視線に気づいた配達員。

「いや、別にワレモノとかじゃないんで全然問題ないです。」(配)

 

ベンチの横の灰皿を除き吸い殻の中から煙草を選ぶ勝。

「汚いですよ?」(配)

「そんなことわかってる!それでも俺は煙草が吸いたくて1番長いのを探してるんだ。、、、これか?こっちのが長いかな...、ライター持ってない?」(勝)

「え?」(配)

「火!!!」(勝)

ああ、と慌ててライターを差し出す配達員。

勝は灰皿から選んだ吸い殻に火をつけ一口吸って

「・・・不味い」(勝)

それを横目に自分の煙草を出して吸い始める配達員。

 「持ってたの?」(勝)

 「はい?」(配)

「新しいの、持ってたの?」(勝)

「あぁ、はい」(配)

 「なんでくれないの!」(勝) 

 「いやライターって言うからそれでいいのかと思って」(配)

「新しいのが吸いたいに決まってるだろ!1本くれ!」(勝)

新しい煙草に再びライターの火をもらって...

「まずい!身体に悪い感じがする。細胞の一つ一つが拒否してる。煙草を一口吸う度に1秒寿命が縮むらしい。緩やかな自殺だなこれは。」(勝)

「クククッ」配達員は笑う。

 

「俺だって死ねるもんなら早く死にたい。さっきもずっと死のうと思って陸橋の上から道路を見下ろしていたけど、30分もすれば腰が痛くて立ってられない。自分で死ぬこともできない。情けない話だよ。娘たちもヘルパーさんもみんな笑顔で“長きしてね”といってくれるが目の奥が笑ってない。娘なんか特にわかり易くて良い。いかにも”早く死んでくれ”と心の底から叫んでる。俺だって迷惑をかけていることくらいわかっている。みんなに助けてもらっている。感謝してないわけじゃない…みんなそーやって誰かに迷惑をかけて生きてくんだ...」(勝)

 

勝と配達員は2人並んで煙草を燻らし、身から溢れ出た様な他愛もない会話をしている。

 

「僕は荷物を運ぶだけです。ただ運んでるだけでもそうやって仕事してないと生きていけない。だから僕は運び続けます。」(配)

「いいね、そーゆうの、いいと思うよ」(勝)

 

そしてまた配達へ立ち上がる配達員。

 

そこへ現れ勝を見つけたヘルパー「居たぁ・・・」

 

「がんばれよぉ、、、がんばれーーーーーーー」

腹の底から配達員の背中に投げかける勝

 

怪訝な顔でその光景を眺めながら勝の方に歩み寄るヘルパー。

「古川さん、どこいってたんですか!みんな心配してさがしてたんですよ?田舎の道なんて暗いし危険じゃないですか。もう帰りましょう」(へ)

「もう何年住んでると思ってるんだ!お前が生まれるずっと前からこの町で暮らしてるんだ!目を瞑ってたって逆立ちしてだって帰れるよ!!!」(勝)

「何に言ってんですか足腰だって弱ってるんですから…」(へ)

あれこれ言いくるめながらスマホを手に取る

「誰に電話してる?」(勝)

「智子さんですよ心配して探してると思うんで!!!・・・っなんでこんな時に出ないんだよ!!まさか着信拒否してるとかじゃないですよねぇ!!ハァ...もう」(へ) 

 

「・・・、お前だろ!!!」(勝)

「え?」(へ)

「近所の犬殺して回ってるの、お前だろ!△△さんが見たって言ってたんだよ!朝早くにお前が●●さんの家の庭から逃げるように出てくのを。ポロシャツを着てたって言うから間違いない」(勝)

「はぁ?僕な訳ないじゃないですか。だいだい△△さんなんて半分ボケた老人の話がなんの証拠になるっていうんですか?それにあの人緑内障で目も良く見えてないだろうし。ホント勘弁してくださいよ…」(へ)

 

智子が現れる…

 

「・・・ホントもう何なんだよどいつもこいつも!!!好き勝手言いやがって、僕いっつも真面目にやってきましたよね文句ひとつ言わずに!正直だれもやりたくないですよこんな仕事!!!それでも一生懸命やってんですよ。それなのになんなんですか」

 

― 足で地面を割るように地団駄で踏みつける音が地響きのように空気を揺らす ―

 

「もう…なんで!誰も評価してくれないんですか!!?…犬の1匹2匹殺したって器物損壊なんだからそれくらい勘弁してくださいよぉ...もぉ...いい加減にしてくれよ!!!」

 

何度も地に怒りを踏みつけながら顔をぐにゃぐにゃにして泣き叫び喚き崩れ落ちる田辺浩一。。。

 

「殺してくれ。それでお前の気が収まるなら。俺は感謝してる。最後に恩返しができるならそれでいい。この暗い海に向かって背中を押してくれ。幸い俺はカナヅチだから、今なら事故で処理されるだろう。さあ、背中を押してくれ...」(勝)

 

取り返しのつかないところまで陥った田辺は顔を崩して泣いたままトボトボと立ち上がり一歩一歩勝の背後へ近づく‥

 

「ヘルパーさあああん!!!」

恐れた智子が叫ぶ

 

ドンッ

 

ド、ド

ドーンッ花火ドーンッ花火

ヒュ~~~ドーンドーン気づき気づき

 

田辺は突然の爆発音に腰を抜かし、マヌケな顔をして泣いている。そしてまたヨロヨロと立ち上がり逃げ去った

 

物凄い花火の音に菊池の店からかけ出てくる残りの面々

 

「戦争か?」

 

「これは怒りだ…」

 

・・・

 

配達員が一つの荷物を抱えて駆け下りてくる。

昼間午前指定で届けることのできなかった荷物を雅美に差し出す。

 

 

暗転