（画像はお借りしました）
まえがき…
【ピジョンブラッド】
直訳では
【鳩の血】
しかしこの言い回しは
最高品質の
ルビーの色を指し示すものとして
広く宝飾業界で使われている
よりによって
何故
この例え方なのかと
色々と
思うところはある
【ピジョンブラッド】
ルビーの赤
アカい色
✳︎
序章…
2月26日
ネットで見つけた
綺麗なアカ
女性が
深く濃いアカのドレスを着て
砂の上に立つ画像
一度閉じたその画面の
アカの色が心に残り
戻って探し
保存して
待ち受けにまで設定した
何故かこの時
無性に気になった
アカの色
高価なルビーの様な
深く
綺麗なアカ…
アカい色
✳︎
慟哭…
2月28日
私は駅までの道を
急いでいた
薬を受け取りに
病院に行くのだ
毎日飲む薬であるのに
このご時世
東京では電車に乗るのも怖く
なかなか足が向かず
とうとう薬は
残り３つになってしまった
仕事が休みの今日
とにかく薬を貰わなくては
急遽取れたのは
いつもとは違う医師
いつもとは違う午後
それも
夕方最終の時間に近かった
野暮用を片付けていたら
時間が押してしまった
だから
私は
駅への道を急いでいた
半分ほど歩いたあたり
歩道の端
見るともなく
視界の一部に入り込んだもの
まあるくて
尖っていて
ツヤツヤとして
フワフワとした…
えっ？
……
今のは？
何？
あー
えっーと
何時に間に合えば良かった？
私は薬を貰いに…
急いでいる…
ところ……
イヤ！
違う！
このまま行く？
イヤそれは絶対無理だ！
だって
行かれないヨ！
一瞬で
勢いのまま通り過ぎたその5、6歩を
パタパタ戻り
ちゃんと観る
首の先だけの
鳩さんが
歩道に転がっていた…
ドキドキする
どうしたの？
何があった？
カラダは
どうしたの？
少し見回すが
近くにカラダは見当たらない
よしよし
大丈夫
心配しないで
大丈夫だから
私は
バックの中をゴソゴソ探し
ポケットティシュを出した
左右から
鳩さんを包んで
一番近くの
土のある場所へと
ゴメンね
こんな出会い方
その姿が
ひどくショックで
そして悲しい
この仕業は
カラスなのか…
良い子
良い子
大丈夫
あなたは飛べるから
ここから飛んで
お空へ行ってね
お空には神さまがいるから
神さまのところへ
飛んでいくのよ
これからは
神さまのお庭の鳩に
なるんだからね
そう言いながら
周りから
かき集めた落ち葉や土や
それを
そっと
鳩さんの上に…
目を閉じて
手を合わせ
その場をあとにした
ドキドキしていた
網膜に残った
アカい血の色
✳︎
慟哭？
いいえちがう
これはきっと必要だったプロセス…
同じく2月28日
病院の診察室
血液検査の結果を見ながら
今日初めて会う
おじいちゃん先生が
（失礼！それほどのお歳でも無い？）
ちょっと首を傾げる
数値の変化がよろしく無い
…ってことらしい
触診をしてそれから
今日はエコー検査をしてみましょう
となった
おじいちゃん先生のエコーは
驚くほどソフトで滑らかで
これまでいつも
エコーのたびに
ぎゅうぎゅうぐりぐり
押されて痛かったのは
一体何だったのかしらと
そう思いながら
そして
おじいちゃん先生のお言葉
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
腫瘍がね
ふたつ出来てますね
5ミリと2ミリ
どちらも右側
今日採血して
前回取らなかった
○○の数値
ちょっと詳しく
調べてみましょう
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
予想してなかったのは
【腫瘍】ってコトバ
あっ！
はい！
まだ
実感のない私は
他人事みたいに
精密検査的な？
良性か悪性か
調べる感じですかね？
現状見る限りは
良性の様だけど
あとは
血液検査の結果だね
と
おじいちゃん先生はにこやかで
そっか
腫瘍ね
綺麗に写ったエコー画像を
確かに丸いわと
見やりながら
何故かずっと
何処かで冷めている私
もしも悪性ならば
がんという意味なのに
この日の採血は
何本もかなり大量に抜かれた
元々体重がギリギリラインだから
一度もしたことが無い献血だけれど
献血ってこのくらい？
もっと？
採血のせいで
くらくらする頭で考える
同じ病院に
もう何年も通っているのに
何故今まで
発見されなかったのだろう…
この日は
急遽入れた予約
病院の掲示を確認したら
おじいちゃん先生は
この病院の
副医院長先生だった
経験値
みたいなもの？
ぼんやり思いながら
抜き終わった針の跡
真っ赤な血が玉になる
アカい色
✳︎
心の中…
もしもこの
イレギュラーな予約が
無かったら
偶然
おじいちゃん先生に
診てもらわなかったら
これはまだ
発見されていなかったんだろう
きっと幸運だった
今のところ
結果を聞くまでは
とりあえず良い方でいいや
そう思っている私
✳︎
あとがき…
病院でのことを
結果はまだとしても
経緯は家族に知らせようと
携帯を開く
あっ！
待ち受けは
アカいドレス
ルビーみたいな
アカい色
二日前
何故
これにしたのだっけ
ドレスの待ち受け
あの鳩さん
病院での採血
みな
同じ色を
私に残した
ふと
浮かんだ言葉が
ひとつある
鳩さん…
ありがとう
きっと私に
してくれたでしょう
✳︎
ブログを放置していて済みません
こんな私を訪ねて下さる優しい皆様
いつもいつもありがとうございます
ami