美容室での転倒からはじまった闘い(体験記)
【1月13日 美容室での転倒】
1月13日、美容室に行きました。最初に10〜15分ほどのカウンセリングを受け、「それでは、シャンプー台へ移動しましょう」と案内された時のことです。シャンプー台へ向かう途中、小さな段差につまずき、手も出せずに両肩から床に倒れ込んでしまいました。
しばらく動けず、うつ伏せのまま10〜15分ほどその場に倒れていました。スタッフの方が「大丈夫ですか?」と何度も声をかけてくださる中、申し訳ないという気持ちから、なんとか力を振り絞って起き上がりました。![]()
【救急搬送と診断】
しばらく待てば痛みが引くかと思っていましたが、呼吸もつらく、大きな病院に電話したところ、「整形外科の医師がいない」と言われ、当番病院を紹介されました。
そこはスポーツ整形で有名な病院。2時間待ち、レントゲンの結果、「両肩骨折」と診断。ズレはないため、三角巾で両腕を固定されて帰されました。![]()
【翌日、総合病院での診断】
翌日、より詳しい検査のため総合病院へ。CTの結果、「右肩の骨折がズレているため、緊急手術が必要」と言われました。
両手が使えないため、入院生活はすべて看護師さんの介助のもと、食事もトイレも一人では何もできませんでした。![]()
【入院生活と食事】
病院食は薄味でしたが、それなりに美味しく、けれどもやや物足りなさもありました。もちろんお菓子は禁止です。
3週間の入院後、リハビリのため転院。転院先の病院では食事がとてもまずく、特にお魚は毎日同じもので、半分ほどしか食べられませんでした。徐々に体重が減っていきましたが、体に苦痛は感じませんでした。![]()
【その後の再手術】
3ヶ月の入院の後は、3ヶ月間の外来リハビリ。やっと自由になれると思った矢先、定期検診で「プレートを支えているスクリューが胸に当たっている」ことが判明し、再手術が必要に。
3週間後、スクリューを外し、短いスクリュー3本に付け替える手術を行いました。![]()
いつもなら病室で目が覚めるのに、今回はオペ室で目が覚めました。目を開けた瞬間、息ができない――その事実に気づきました。声も出ず、看護師さんが私の名前を呼んでくれているのがわかるのに、答えることができない。ただ苦しい、息ができない、助けて、と叫びたいのに声が出ない。必死で訴えようとしても、声にならず、体も動かない。血液中の酸素濃度は92%。すぐに酸素マスクをつけられ、病棟に戻りました。死を覚悟しました。
それからも息苦しさは続き、心電図、エコー、CTなどの検査を受けた結果、「無気肺になっており、肺炎も併発している」と伝えられました。すぐに抗生物質の点滴が始まり、3日間続きました。翌日には、ようやく息苦しさがやわらぎ、少しずつ呼吸が戻っていきました。
息ができる――ただそれだけのことが、こんなにもありがたいと感じたのは、人生で初めてでした。

再び不安と向き合う
けれど、体はまだ思うように動かず、咳をすれば胸が激しく痛み、食事をとるのも時間がかかりました。片方の腕はプレートが入っており、もう片方も動きづらく、体を支えることすら難しい状態。
「本当に、元通りに戻れるんだろうか?」
そんな不安が、心の奥にずっとありました。
少しずつ、日常へ
点滴が終わるころには、熱も下がり、呼吸も落ち着いてきました。体力はかなり落ちていましたが、リハビリを再開することになりました。ベッドから起き上がる練習、歩行器を使って病棟内を歩く練習――できなかったことが、少しずつ「できる」に変わっていくことは、私にとって何よりの励みでした。
退院の話が出たとき、正直なところ、不安もありました。今度こそ何事もなく過ごせるだろうか、またどこかで体を痛めてしまうのではないか――そんな思いが頭をよぎりました。でもそれ以上に、「やっと自宅に戻れる」という喜びのほうがずっと大きく、私は前を向くことにしました。
その一方で、毎日のように顔を合わせ、支えてくれたリハビリのスタッフや、同じ病室で励まし合ってきた患者さんたちとの別れが、思っていた以上に寂しく感じられました。辛い時間を共に乗り越えた仲間たちと離れるのは、心にぽっかりと穴があくような思いでした。
その後、外来でリハビリを週2回続けています。
自宅に戻った日、玄関の段差を越えるだけで涙が出そうになりました。病院では当たり前のように手伝ってもらっていたことが、家ではすべて自分でこなさなければならない現実に直面し、思っていた以上に戸惑いもありました。腕は少し動かしただけで、上腕二頭筋がパンパンになり激痛で痛み止めを使っていました。
食事、洗顔、着替え――片手ではできないことも多く、ほんの些細なことに時間がかかる毎日。それでも、病院のベッドとは違う、自分の布団で眠れることに安心し、小さなこと一つひとつに「戻ってこられたんだ」と実感しました。
退院してからも外来でのリハビリが続きました。病院では顔を見れば声をかけてくれたスタッフや、頑張る仲間がそばにいましたが、自宅では一人でモチベーションを保つことがとても難しかったです。それでも、あの日々を無駄にしたくないという思いだけで、なんとか通い続けています。
時には「どうしてあんな小さな段差で…」と、自分を責めたくなることもありました。でも、あの日から今日までのすべての時間が、私にとっては生き方を見つめ直す大きなきっかけになったと思っています。
心も体も、すぐには元に戻りません。でも、「少しずつ」「焦らずに」と、自分に言い聞かせながら歩いています。今は、また笑って過ごせる日々が戻ってきたことに、ただ感謝の気持ちでいっぱいです。
と同時に、体重はリバウンドして元に戻りました。![]()
