ベン・ハー (1959年の映画)
1959年制作のアメリカ映画御紹介







『ベン・ハー』(Ben-Hur)は、1959年制作のアメリカ映画。ルー・ウォーレスによる小説『ベン・ハー』の3度目の映画化作品である。ウィリアム・ワイラー監督。チャールトン・ヘストン主演。同年アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞をはじめ11部門のオスカーを受賞。この記録は史上最多記録でその後長く続き、『タイタニック』(1997年)、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)がようやく同じ11部門受賞で並んだが、現在もアカデミー賞の史上最多受賞作品の一つである。

ベン・ハー


Ben-Hur
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監督
ウィリアム・ワイラー
脚本
カール・タンバーグ
マクスウェル・アンダーソン(表記なし)
クリストファー・フライ
ゴア・ヴィダル(表記なし)
S・N・バーマン(表記なし)
原作
ルー・ウォーレス
製作
サム・ジンバリスト
ウィリアム・ワイラー(表記なし)
出演者

チャールトン・ヘストン



スティーヴン・ボイド



音楽
ミクロス・ローザ
撮影
ロバート・L・サーティーズ
編集
ジョン・D・ダニング
ラルフ・E・ウィンタース
製作会社
MGM
配給
アメリカ合衆国の旗 MGM/ロウズ・シネプレックス・エンターテインメント
日本の旗 ワーナー・ブラザース
公開
アメリカ合衆国の旗 1959年11月18日
日本の旗 1960年4月1日
上映時間
212分
製作国
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語
英語
製作費
$15,000,000[1](概算)
興行収入
$74,000,000[1]
配給収入
日本の旗15億3000万円
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概要
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アメリカのルー・ウォーレスが1880年に発表した小説 "Ben-Hur: A Tale of the Christ" を原作に、1907年に15分のサイレント映画で製作され、1925年に同じサイレント映画で2度目の映画化でラモン・ノヴァロがベン・ハーを演じ、これが大ヒットとなった。そしてこの2度目の時にスタッフとして参加したウィリアム・ワイラーが34年後に監督として70ミリで撮影し3度目の映画化したのがこの作品である。

主人公ベン・ハーをチャールトン・ヘストン、メッサラをスティーヴン・ボイド、他にジャック・ホーキンス 、ハイヤ・ハラリート、ヒュー・グリフィス 


が出演。チャールトン・ヘストンがアカデミー賞主演男優賞、ヒュー・グリフィス が助演男優賞を受賞し、ウィリアム・ワイラーはこの映画で3度目の監督賞を受けている。

帝政ローマの時代に、国を失った民族であるユダヤに生まれた青年:ベン・ハーが苛酷な運命に巻き込まれ、ある時は復讐に燃え、ある時は絶望に陥りながらも、神が為す業により再生される迄の軌跡と、その遍歴において姿を顕して道を照す救世主:イエス・キリストを絡めて描く。原作の副題に「キリストの物語」とあるように、キリストの生誕、受難、復活が「ベン・ハー」の物語の大きな背景となっている。この映画はタイトルが出る前にキリストの生誕で始まり、キリストの処刑とともに復活で「ベン・ハー」の物語が終わり、宗教色が色濃く出ている。

1959年11月18日にプレミア公開され212分の大作ながら全米公開後、瞬く間にヒットとなった。同様に全世界でも公開されてヒットした。54億円もの制作費が投入されたが、この映画1本で倒産寸前だったMGMを一気に立て直すことができた。

日本初公開
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1960年4月1日から東京はテアトル東京、大阪はOS劇場でロードショー公開され、他都市も東宝洋画系で公開された。テアトル東京では翌年61年7月13日まで469日間に渡って上映され、総入場者数95万4318人、1館の興行収入3億1673万円を記録した。全国各地の上映の後に、配給収入は最終的に15億3000万円となった[2]。

日本での一般公開は1960年4月1日だが、これに先立ち同年3月30日にはテアトル東京でチャリティ上映が行われた。このとき昭和天皇・香淳皇后が招かれ、日本映画史上初の天覧上映となった。ヘストン夫妻もこの場に立ち会っている[3]。

著作権について
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本作は作品中(オープニングタイトル、エンドロール等)に著作権表記が無かったため公開当時のアメリカの法律(方式主義)により権利放棄と見なされ、アメリカにおいてはパブリックドメインとなった[4]。

あらすじ
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前編
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ベン・ハーを演じるチャールトン・ヘストン
ベツレヘムの星々が輝く下、馬小屋で救世主が誕生してから26年の月日が過ぎた。ユダヤ人が住む辺境のイスラエルでは、政務を覧する総督の交代が迫っていた。裕福なユダヤ貴族の若者、ジュダ・ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)は、軍司令官として戻ってきた旧友メッサラ(スティーヴン・ボイド)との再会を喜ぶ。


ユダヤの民が希望の光とする救世主の存在を、未開の頑迷と否定する一方で恐怖をも感じていたメッサラは、王家の流れを汲み人望のある友人ベン・ハーに、ローマ側に協力するよう求める。しかし、同胞の苦難に心を痛めていた彼は、その誘いを断った。

新総督を迎えた日。ベン・ハーの館より瓦が滑り落ちて総督の行列の中へ落下する。暗殺を疑われた彼をメッサラは弁護することなく見殺しにした。混乱のなか母のミリアム


(マーサ・スコット)、妹のティルザ


(キャシー・オドネル)は行方知れずに。自らも奴隷の身分に落とされ、死ぬまでガレー船の鎖に繋がれ漕ぎ手となる運命に見舞われる。刑を執行するため護送される中で水を与えられず渇きに苦しめられ、井戸を前に崩れかけたその時、通りがかった一人の男が彼を抱きかかえ、桶より水を呑ませる。

ローマ海軍の総司令官アリウス


(ジャック・ホーキンス)は、マケドニアとの戦いの前に、船倉で強い眼差しを放つ奴隷に目を止めた。それは3年間に渡り信仰と復讐の念によりガレー船の苦役を耐えたベン・ハーだった。実の息子を失い神の姿を見失っていたアリウスは海戦の混乱の最中、彼に命を救われ、心の支えを得た。



かくしてアリウスを養父とし、戦車競争の騎手として第二の人生を得たベン・ハーは、ローマ皇帝ティベリウスの恩恵により市民権を得た。自由になったその夜、彼は無償の愛に感謝しながら、母と妹を探すために故郷へ戻る決意をアリウスへ伝えた。帰郷の途上、救世主を探す博士と出会い、偉大な道を歩んでいる人の存在を知らされる。またイルデリム(ヒュー・グリフィス)からはメッサラの様子を聞かされた。アラブの富豪だが、ローマへの敵愾心に盛んなイルデリムは、戦車競争で常勝を続けるメッサラを打ち負かせようとしていた。

仇敵の名前を耳にして身の内に燃えるものを感じたベン・ハーだが、エルサレムへ戻る。荒れ果てた我が家には家宰のサイモニデス(サム・ジャッフェ)


と娘のエスター


(ハイヤ・ハラリート)が隠れていた。拷問により半身不随となっても誠実なままの友との再会を喜ぶが、ミリアムとティルザの姿はそこには居なかった。ベン・ハーの帰郷の報はメッサラの知るところとなり、母と妹を地下牢に閉じ込めたローマ側は、二人を開放しようとして凄惨な光景を目にする。業病に冒されたミリアムとティルザは、世間から離れる前に一目でもベン・ハーを見ようと、夜に紛れて屋敷に入ってきた。偶然にエスターは二人と出会い、ミリアムから自分たちは死んだ事にするように約束させられる。

後編
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戦車競争(右がベン・ハ―)


エスターは、ミリアムとティルザが既に死んでいるとベン・ハーに伝える。苦悩を深める恋人に、心の平安を求め生き直す道を歩んで欲しいと願うエスターだが、彼女への愛情を抱きながらも怒りを抑えることは出来なかった。

巨大な戦車競技場で両者は対決の日を迎え、神への許しを求めつつ復讐に燃えるベン・ハーは、イルデリムが提供した駿馬を戦車に繋ぎ、大観衆が見守る中でメッサラとの闘いに臨む。壮絶なレースの末、ついに彼に勝利した。ユダヤの誇りを守った英雄を包む熱狂の影で、メッサラは戦車に引き潰され瀕死となる。

結果的に復讐は達成されたが、ベン・ハーは余りに無残な姿に変わった仇敵を前に言葉を失う。しかし、メッサラから戦いは未だ終わっていないと告げられ、母と妹が生きている事、業病の者が隠れ住む死の谷にいると知らされる。


そして密かにエスターの後を追って洞穴で生きながらえる母と妹に再会した。ベン・ハーは家族や親友を不幸にしたローマを憎み、市民権を放棄する。

悩むベン・ハーにエスターは救世主と言われるようになったイエス


の話をするが、いっこうに聞く耳を持たない。やがてイエスが裁判にかけられて磔にされるという話を聞いて、すがる思いで母と妹を連れて街に繰り出すが、十字架を背負ったイエス


を見て、あの時に水を恵み自分を救ってくれた人であったことにベン・ハーは愕然とする。母と妹を帰らせて彼は後を追いかけ、そして倒れたイエスに今度は自ら水を飲ませたが、役人に蹴とばされる。やがてゴルゴタの丘でイエスは磔の刑に処せられた。その直後に俄かに天から雷雨と大風が舞い、イエスの流した血が大地を流れていった。

絶望したベン・ハーは重い心で邸宅に戻った。しかしエスターは微笑みながら彼を迎えた。ふと上を見上げると母と妹が元の健康な姿に戻っていた。あの雷雨の中で洞穴に退避した2人は、急な激痛の後に病が癒えていたのだった。ベン・ハーは母と妹を抱きしめながら喜びを分かち合い、神の奇跡を知る。


スタッフ
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監督:ウィリアム・ワイラー
製作:サム・ジンバリスト
原作:ルー・ウォーレス
脚本:カール・タンバーグ
撮影:ロバート・L・サーティース
音楽:ミクロス・ローザ
音楽指揮:カルロ・サヴィーナ
音楽演奏:ローマ交響楽団
助監督:セルジオ・レオーネ
キャスト
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役名 俳優 日本語吹替声優
フジテレビ版 日本テレビ旧版 テレビ朝日版 日本テレビ新版 テレビ東京版
(BSジャパン追録部分)
ジュダ=ベン・ハー チャールトン・ヘストン 納谷悟朗 石田太郎 納谷悟朗 玄田哲章 磯部勉
メッサラ スティーヴン・ボイド 羽佐間道夫 佐々木功 羽佐間道夫 大塚芳忠 山路和弘
クインタス・アリウス ジャック・ホーキンス 島宇志夫 内田稔 鈴木瑞穂 渡部猛 稲垣隆史
エスター ハイヤ・ハラリート 鈴木弘子 吉野佳子 武藤礼子 松岡洋子 日野由利加
族長イルデリム ヒュー・グリフィス 相模太郎 立壁和也 内海賢二
ミリアム マーサ・スコット 寺島信子 中西妙子 谷育子 吉野佳子
ティルザ キャシー・オドネル 塚原恵美子 小山茉美 勝生真沙子 幸田夏穂
ポンティウス・ピラトゥス フランク・スリング 小林清志 家弓家正 小林修 佐古正人
(世古陽丸)
サイモニデス サム・ジャッフェ 松村彦次郎 矢田稔 宮内幸平 大木民夫
バルサザー フィンレイ・カリー 宮川洋一 金内喜久夫 北川米彦 小林勝彦
(小島敏彦)
ドルーサス テレンス・ロングドン 富山敬 幹本雄之 諸角憲一
セクスタス アンドレ・モレル 大木民夫 石井敏郎 廣田行生
皇帝ティベリウス ジョージ・レルフ 高島忠夫[5] 仲木隆司 内田稔
フレビア マリナ・ベルティ
ローマ人 ジュリアーノ・ジェンマ
イエス・キリスト クロード・ヒーター
ナレーション - 小林清志 矢島正明 小林修 




②ヘと続く



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