私には長い首があり、とおりの良い耳があり、さまざまなものをかぎ分けられる鼻がある。
いや、私は、実は犬なのだけれども、分類学上はどこに所属するのだろうか。
いや、動的な種の概念の中で、所属が問題になるのだろうか。
いや、所属していなければ、そもそもひとつの個体として存在しえないわけで、やはり”何かしらの枠組みに”収まっているといえる。
いや、概念的な話ではなく、実際問題として風呂桶に私は収まっている。
種の概念は動的なものかもしれないけど、個体としての私は動的でなく、非動的である。
ミクロレベルでは、代謝によって物質あるいは電気的な信号は動いている。
いや、もう悪あがきはしないよ。
実際、うごけないんだ。
「うごけないキリンの話」おわり