2023.7.2(日)蔵王・二口ONE DAY敗退記その⑤敗走


ペースノート再掲

まだ終わらない夏の旅。。。





13:31 北雁戸山
トンボが舞う山頂に新しい山名板が輝く。モンベル的なジャパンエコトラックの山名板らしい。
梅雨の晴れ間、真夏のような日射の洗礼を受け、疲労を感じる。暑いのは望むところなのだ。だって今年も、もっと暑いゼロ富士にチャレンジするんだから。


気を取り直して、いきますか。

見た目通りの急降下で、ずんずんと高度を下げる。

13:40 振り返ると手前に1486峰と南雁戸山、背景は大きな中央蔵王の山塊。

13:52 名残惜しくて何度も振り返ってしまう。

13:57 下から見たガレ場。
写真ではあまり急に見えず残念だ(笑)
両手を使って後ろ向きに降りる。

14:01 山頂部を切り抜け、やっと平場に来た。
深い森に入っていく。

14:23 遭難碑

14:26 カケスガ峰
この先、再び森に入り笹谷峠に向けてまた下降に入る。景色を眺めたかったが、5、6人のパーティが輪になって談笑していたので、なんとなく写真だけ撮ってすぐに立ち去る。そういえば、数時間ぶりの人か。

樹林の下降はヤブは無いものの、足場はぬかるんで悪い。木の根も張り出しており、気を使う。集中力が切れたのか、何でもないところでつまずいたり、立ち止まってしまったり。
いよいよか。
足が動かん。
水分を取り、塩タブレットを口にしてみるが、どうだろう。厳しいか。もう厳しいか。
食欲もない。

15:18 笹谷峠が近い。
峠の周辺は遊歩道が縦横に通っていて、わかりづらい。

15:20
先人はこの大岩をどうやって静置したのだろうか。

15:21 お地蔵様
いまの時代も往来する人々を見守り続けるお地蔵様。顔はもう摩滅してのっぺりになってしまった。

15:31 笹谷峠
斎藤茂吉の句碑がある。
この奥に大きな駐車場があり、ここから雁戸山や山形神室へ登る。
ここはエスケープポイントでもあり、安全に下ることができる。

さて。どうしたものか。

ペースノートでは笹谷峠発が15:31。ちょうどCT0.8に乗っているが、これまでの貯金を食っただけだ。実際の所要時間が問題で、掛かった時間は120分。CTが102分なので、CTより余計に掛かってしまっている。ペースは落ちる一方で、もはや復活は望めないと思う。
峠周辺はなにも日差しを遮るものがなく、仕方なく茂吉の句碑の前に腰を下ろして考えていた。太陽へのせめてもの抵抗で、手拭いを頭に垂らしながら。

疲労度からしてこれからペースが戻ることはない。二口山塊は刈り払いがまず少なく、体力を余計に使うだろう。名号峰~南雁戸山以上にヤブ化しているか…。疲労困憊した身で夜間の単独行は、気持ちがつらい。怪我のリスクが上がっている。…………?

ここで止めてしまうのか。嫁様に早朝(夜中?)から協力してもらってこのザマか。おそらく今年はもうスケジュール的に再挑戦はできないだろう。それでいいのか。


………




降りよう。ここで止めておこう。熱中症の症状が出ている。力不足を認めよう。



山で判断に迷った時は、安全方向で決める。
撤退は余力のあるうちに決断する。
そんな山の大原則。


ぐるぐるぐるぐる考えていた🐱の前を下山するクルマが通っていく。物見遊山なのか、いまの時間に上がってくるクルマもたまにある。

宮城側に降りれば家が近いのかと思ったら、川崎町のバス停までロード20キロある。これはダメだ。関沢のバス停目指して山形側に降りることにする。

車道はうねうねと時間が掛かるので、直線的に降りられる古の旧道を使う。句碑の前から旧道へ入った。

入口こそ草刈りがされていたが、すぐにこんな状態に。。。
16:07 ヤブヤブ
こ、これは…。道はほぼ見えない。足探りでゆっくり進む。短パンの太ももがスレて少し痛い。おまけに誰も歩いていないらしく、クモの巣だらけで困る。ポールを前に振り回してクモの巣を払いながら進む。

何回目かに道路を渡ると、沢にパイプが差し込まれた水場があった。
16:24 水場
貴重な水場だ。手で掬って飲んでみると、とても冷たくて美味しい。一気飲みしたくなる。けれど、好きなだけ飲んでしまうと、死にかけの胃に止めを刺すことになるだろう。。それでも冷水に詰め替えたペットボトルの半分はすぐに飲んでしまった。
顔を洗い、頭に水を被ると幾分気力が戻った。


16:29 ヤブばかりでなく、敷石が施されていたり、時たま街道ぽい痕跡もある。
こういうところはほっとする。

16:32 ウツギ
やがて谷筋となり、登山道を沢が流れるようになり、靴が濡れてしまった。水流を避けることができない。ヤブ化+沢というのはなかなか大変。


16:51 冬期ゲート
なんとか街道を出た。歩きやすい。
関沢のバス停へ行くと、なんと土日は運行が無いんだと。。
仕方ない。バスを求めて下へ行くしかない。

17:27 初めは歩いていたが、一向に進まない。
東沢のバス停まで走ろう。
気温に逆上せたような状態を我慢して走り、東沢のバス停まで着いたのだが、本日の終バスはつい10分前に出発したところだった。まだ18時前なのだが、山形のバス事情恐るべし(笑)

仕方なし。バスを求めてさらに下って行くと、ついに山形県庁まで来てしまった。笹谷峠から県庁まで徒歩で来る人もあるまい。

と、目の前を仙台行の高速バスが走っていく。そうか。山形駅まで出なくとも県庁前のバス停から帰れる!(むしろJRより本数がある。)

よし。バスに乗ろう。でも、着替えた方がいいか。というのは、汗だくの身体は、ものすごく汗臭い。自分でも匂うのだから、バスの狭い空間では他人はもっと臭かろう。バスは20分に一本くらいはあり、次々来るので余裕。
さて、どこぞ脱げるところはないか。見渡してみると、人気の無い公園?があった。木立で囲われていて、誰もいない。うまいことに水道もあるではないか。
喜び勇んでいってみると、なんと通路一本挟んだところが、山形県警の本部。

18:26 山形県警本部前の公園
様子を伺うと監視しているような人もいない。防犯カメラでもあるのかもしれないが、ええい、ヤってしまえ。

18:43 ザックの中身を全部出す。
着替えを引っ張り出し、臭い服を脱ぐ。思いきってのパンイチである。手拭いを水道で洗いながら全身を拭うとさっぱり(さすがにパンツは脱げなかった。)。気持ちいいいい。持参していたきれいな服に着替えると、人心地がついた。

警察官は最後まで現れなかったが、R286の歩道をお婆様が歩いていった。こちらを見ていたような気がするが、、背に腹はかえられぬのだ。
脱いだ臭い服は、厳重に袋にくるんだ。。

高速バスに乗ると、意外に席が埋まっており、男性の隣に座らせてもらったが落ち着かない。疲れて眠るかと思ったが、頭がふわふわとした感じで、完全に熱中症がキマってしまっていた。











終わり。