全く眠れないまま

事件の翌朝を迎えた



夫と子供を送り出し

自分も仕事に行く準備をする



普段通りでいることで


被害のことを忘れたかった




職場では

有り得ないミスを連発した


寝不足もあってか

明らかに集中力がなく

めまいがしていた



どうやって定時までやり過ごしたか

ほとんど覚えてない


いつも通りでいなければと必死だった


「被害なんて無かったのだから」


そう言い聞かせた





その日の夜


いつも通り、子供の学習塾の送迎があった


塾は、昨日の交番のすぐ近くにある


塾の時間は

近くのカフェで時間を潰して待つことが多く

今夜もそうしようと思い

カフェで温かいコーヒーを注文した



飲みながら

涙が溢れて仕方が無かった


昨日も

あの男と一緒に飲んだ


コーヒーが好きだと話をしたことを思い出した




「すごく嫌なことをされた」


「ハッキリやめてと言ったのに」


「悔しい」



マスク越しに

ポロポロと泣きながら


その時はっきりわかった


「自分はレイプされたのだ」



塾の授業終了まで

あと1時間あることを腕時計で確認し



昨日の交番に向かって歩き始めた