京都で迎える2回目の桜の季節。
4月になった。
うどん屋「たかの」から弥生寿司のバイトに変わった私。
「たかの」で出会い、気になって仕様がなかったKとは、
1月の送別会以降会う機会はなかった。
そして私は、京大西部講堂で観た芝居のことが、
すごーく気になっていた。
劇団に興味があった。
ブーンて頭上を飛んだ役者に興味があった。
それで見つけたのだ。
タウン誌にあった劇団員募集の記事を。
演劇行動'74というのが劇団名だった。
京都産業大学に劇団のBOXはあったが、団員は京産大だけじゃなかった。
どこの大学にもそこを母体とする学生劇団はあって、団員資格なんかないから
誰でも入れた。自由だった。
丸いメガネをかけた小柄なポチャっとした男性に喫茶店で会って、
入りたいんですけど、と言ったら、どうぞ、と言われ、
次の稽古日を教えてもらい、きちんとジャージの上下を着て、
私は京産大のピロティに立ち、初めての劇団の稽古に参加した。
ピロティ、そう、校舎と校舎の間の人工芝の広場を皆はそう呼んでいた。
稽古は基礎練からきちんとやる時もあるし、公演が決まって脚本が上がってくると、
配役が決まってとんとん拍子に立ち稽古になる時もあった。(ような気がする。)
団員は男女様々だった。
特に私は、看板女優の流衣さんに見惚れた。
めちゃめちゃ綺麗で女らしかった。
ほぇ~~~世の中にはこんな人がいるんだ~、と思った。
側に寄れてしあわせだった。
ブーンと頭上を飛んだ人は大黒屋平兵衛と言った。痩せ気味の滑舌はいまいちの人だった。
他にもたくさん、変わった人がいた。
私の頭の中から、いつのまにかKのことは、薄れてしまっていた。