さて、前回の旅の続きです。
深夜2時過ぎ。
西はりま天文台で星空を満喫し、駐車場に戻って車中で眠ることに。
寒さに震えながら目を閉じます。
眠っているのかいないのか、よくわからないまま時間が過ぎてゆきます。
そして、ふと目を覚ますと、真正面にひと際明るい星が輝いていました。
金星です。
時間は午前4時くらいだったかな。
太陽よりもひと足早く東の空に昇ってきていました。
西の空はまだまだ暗く、たくさんの星が見えていますが、東の空は明るんでいて、
夜の終わりと朝のはじまりのその境界線上に浮かんでいるようでした。
まだ早いのでもうひと眠りしようかとも思ったのですが、
なんせ寒いし寝づらいので、眠るのを諦めて散歩することに。
天文台に来る途中に、朝霧の絶景ポイントの看板があったので、そこに向かうことにします。
車で通ってきた道を歩いていくのですが、真っ暗でめっちゃ怖いです(笑)
スマホの懐中電灯で照らしながら進んでいきます。
30分くらい、歩いたでしょうか。
なんとか絶景スポットに辿り着きました。
その頃には、空はずいぶんと明るくなってきていました。
日の出より30分ほど前の、東の空。
唯一見えている星が、金星です。
この時間帯の空が、世界で一番美しいかも。
後で調べてわかったのですが、朝霧が出るのはどうやら秋から冬にかけてとのこと。
それでも、夜明け前の幻想的な風景に見とれてしまいます。
そして数十分後、
太陽が顔を出しました。
夜の星はとても綺麗でしたが、やはり太陽は別格。
地球の夜を朝に変えることができるのは太陽だけ。
大地を照らす、果てしないエネルギー。
この日の私の夜は、限りなく穏やかに明けていきました。
朝の光をたくさん浴びた後、天文台に戻ってしばらくすると、
管理人のおじさんが駐車場の門を開けてくれたので早速車を出すことに。
今回の旅のもう一つの目的地である「シワガラの滝」に向かいます。
「シワガラの滝」は、関西一?と名高い秘境スポット。
西はりま天文台もかなり山奥にあるのですが、
シワガラの滝はさらに遠く、天文台から車で2時間はしっかりかかります。
星空と日の出に満足しきっていた私は、ろくに眠れていないこともあって、
いっそのこともう帰ろうかとも思いましたが、
「今日を逃したら、二度と行けないような気がする」
というわけで、やはり行くことに。
ナビに滝付近の住所をセットして車を飛ばします。
この日も快晴。
途中のコンビニで軽く食事をとった後、ひたすら北に向かいます。
そしていつの間にか、車は鳥取県に侵入。
なんか思ってたルートと違う(笑)
少々道を間違えながらも、ネットで調べたりしながらなんとか滝への入り口に辿り着きました。
駐車スペースは4台分あり、先客が3台。
ぎりぎりセーフです。
(少し先の方にもありそうだったけど)
この場所にくるとき、結構な山道を登ってきましたが、そこも絶景でした。
なんかすげーところにやってきた!
そんな興奮に包まれながら車を降り、山の中に入っていきます。
しかしこの滝までの山道が、結構大変で(笑)
完全に舐めてましたが、そこそこハードな道のりだったのです。
山の中を進んでいきます。
山を一旦登ったかと思うと、下りていきます。
途中、危険な場所にはロープを張ってくれているのでそれをつかみながら。
そして、
見えました。
奥に見える穴が、シワガラの滝のある洞窟です。
ちなみに、右の方に写っている白いものは雪。
5月の初旬にもかかわらず、まだ融けずに残っていました。
滝まではあともう少し。
が、ここで少々問題発生。
洞窟の方に近づくと、先に訪問されていた男性が休憩されていました。
その人と少し話をしたのですが、私の恰好を見て、
「その恰好じゃ無理ですよ」
な、な、なんですと!?
どうも、洞窟に入るには、川の中に入っていかなければならないとのこと。
膝のあたりまでどっぷりと濡れるらしい。
マジっすか!?
いやいや、聞いてないんすけど?
私は普通の靴にジーンズという恰好だったのですが、準備不足だったようです。
裸足でいくという手段もありますが、岩場がゴツゴツとしていて痛そう。
そして水は、雪解け水のような冷たさです。
しかし、ここまで来て諦めるという選択肢はあり得ない!
裸足で行くか、靴ごと入ってずぶ濡れになる覚悟でアタックするか悩みます。
すると、その男性が、
「これ、良かったら貸しますよ」
と、サーフィン用のブーツのようなサンダルを貸してくれました。
おおー、なんていい人なんだ!
ありがとう!
ということで、奇跡的に貸してもらえたサーフブーツに履き替え、洞窟に向かいます。
途中、岩越えの難所。
ロープをつたいながら登ります。
以前は梯子があったらしいのですが、流されてしまったらしいです。
巨大な雪のかたまり。
まるで戦艦みたいでした。
歩きやすそうな足場を探しながら進んでいきます。
洞窟はもう、目の前。
このあたりからは、川の中を歩いていきます。
そしてついに、なんとか到着!!
シワガラの滝。
洞窟の中に流れ落ちる、小さな滝。
小さな洞窟内で、瀑布の音が響いています。
水と緑の世界。
「青の洞窟」と呼ばれる場所が世界にはありますが、
ここは「緑の洞窟」とでも呼ぶべきでしょうか。
本当に神秘的な光景でした。
日本にも、すごいところがあるものです。
苦労して辿り着いた先にあるからこそ、感動もひとしお。
ちなみにこのポイントは足場がないので、完全に水に浸かりながらの撮影でした。
滝との一体感がすごいです(笑)
洞窟からの帰り道では、これから滝に向かうわりとたくさんの人たちとすれ違いました。
雑誌やテレビ等でも紹介されているので、人気スポットになりつつあるようです。
私のように軽装備で行くと、洞窟を前にして引き返すなんて羽目になるかもしれませんので、
行ってみようという方は、サンダル(ブーツタイプが望ましい)を忘れずに!
(あと、なんか熊も生息しているようです)
「満天の星空」と「緑の洞窟」を存分に味わった私は、温泉で疲れを癒して帰路につきました。
この旅で手に入れたのは、自由感とでも呼ぶべき感覚かもしれません。
一人旅の醍醐味は、「自由」。
自由気ままに、好きなときに、好きなところへ行って、好きなことをする。
もしかするとそれは、わたしたちが忘れてしまいそうになる「大切なもの」のひとつなのかもしれません。
この惑星に生きているだけで幸運なわたしたちは、本当は何ものにもとらわれるようなことなんてないのに、
いつも何かにとらわれている
と、思い込んでいる。
自由を感じるために、あえて不自由に生きてみる。
それがこの世界の本質なのかもしれないな、と、ふと思いました。
そんな、五月のぶらり旅。
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