この夏、自作のストラトキャスター製作に取り掛かった。
12歳でギターを始めて今年で31年経つが、自作ギターの製作は初めてである。
かつて楽器屋の片隅にはよく「ギター製作キット」が売られていた。
いつかあれを組み立ててみたいなと思っているうちに、ギター製作キットはいつの間にかひっそりと売り場から姿を消していた。
ネットもない時代、付属の説明書だけで一からギターを組み立てるのはアマチュアには難しすぎたのかもしれない。
そんなことをこの春に思い出してあれこれと調べていくうちに、改めて自作ギターを作ってみたくなった。
調べていくとストラトキャスターを一台組み立てるには想像以上にたくさんのパーツが必要であることが分かってきた。ペグ、ナット、ブリッジ、ポット、配線材、ピックガード、各種ネジ……。
会社の昼休みや就寝前にスマホでパーツを調べてはメモを取り、ピックアップの試奏動画を山ほど聞き比べて、ボディ材、指板材の比較記事を読み漁った。
31年ギターを弾いてきたが、こんな付き合い方は初めてだった。しかし私はすぐに夢中になった。
それぞれのパーツにはすべて意味と役割があり、固有のサウンドがあり、それをどう組み立てていくかは製作者の設計思想とセンスに委ねられる。
まるで複雑なパズルを解くようでもあった。
設計を考えていくうちに、私は自分が知ったつもりでいたギターの世界は、まだまだほんの一部であったことを痛感した。自分が大好きなギターの世界に、まだ知らないことがこんなにたくさんあるということがうれしかった。
5月のゴールデンウィークに入るころには、私は自作ギターを作ろうと決意した。
基本スペックは王道の3シングルコイルで、アッシュボディ+メイプル指板と決めた。
理由はいろいろあるが、自分がまだアッシュボディもメイプル指板のギターも持ったことがないことと、1954年製ストラトキャスターがその組み合わせであったことが決め手だった。
基本線が固まれば次はパーツの選定となるが、これが想像以上に大変だった。むしろ組み立てよりこちらの方が大変で、最も時間を要した部分だった。
例えばブリッジである。
ストラトキャスターのブリッジと言えばシンクロナイズドトレモロであるが、一言にシンクロナイズドトレモロと言ってもその種類は実に多種多様である。
ブリッジを止めるビスは伝統的な6点支持か、それとも滑らかなアーミングを実現する2点支持か、サドルはプレスタイプかブロックか、素材はスチールかブラスかダイキャストか、それらすべての要素が完成時に出てくる音に関わってくる。
狙ったサウンドを実現するためには、こんなところまで細かく考えてパーツを発注しなければならないし、さらには国産とUSAでは弦間ピッチもビスの規格も違う。
なぜ違うのか私にはわからないが、とにかく思いもよらないことばかりだった。
そんな人間が一から考えて、調べて、細かくパーツを発注していくのだからおぼつかないことこの上ない。考えたパーツリストは何度も修正を繰り返し、当初企画した第1案から数えていくと、決定打と言えるものを完成させる頃には第5案まで変更修正を重ねた。
続く