花火の分野は多様で、まず打揚花火と仕掛花火。そして昼物と夜物。用途別には信号用と観賞用などに分かれています。そして花火のもう一つの分類は玉の大きさです。
打揚花火を大きさ(打ち上げ前の寸法)で分けると、ふつう日本では尺貫法の寸(約3.3センチ)を基準として、小さな2寸玉(直径6センチ)から3寸、4寸、5寸、6寸、7寸、8寸、尺玉(1尺)、更に尺2寸、尺5寸、尺6寸、2尺、3尺、4尺と直径1メートルを越えるものまであります(下記表参照)。現在ではそれぞれを3号(3寸)~10号(尺玉)と号数でも呼びます。上の写真は手前2.5号(7センチ)から10号(30センチ)後ろ中央は20号(2尺)を並べたものです。外国ではインチを採用していて、2インチから 3, 4, 5, 6, 8, 10, 12インチの玉があります。
花火大会で使用される花火玉の大きさはもちろん予算によりますが、その花火大会で打ち上げることができる最大の玉の大きさは「保安距離」によって限定されます。これは打ち上げ場所から観客や付近の建物まで玉の大きさに合わせて、一定の距離(10号で半径290メートルなど)を置かなければならないという安全距離で、法律で定め、都道府県により規定が違っています。より広い保安距離が確保できる場所では予算の範囲内で大きな玉が打ち上げられますが、逆に大都市近郊では「打ち上げ場所が狭い」ために小玉ばかりになってしまうのです。
実際の花火玉の打ち上げ前の玉の大きさ、到達高度、開いたときの大きさの見かけ上の違いは、以下の図・表の様なものになります。到達高度、開花径は平均値と考えて下さい。同じ号数でも作者や玉の種類・内容によって一定ではありません。

打ち上げ花火の諸元
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注 10号が尺玉。30号なら3尺(三尺)玉
花火の美しい色はこうしてできる
花火の色の秘密は?
花火の様々な色はどのように生まれるのでしょうか?化学の時間にやった「炎色反応」という実験を覚えていますか?ある元素を含む化合物を燃やすとその元素固有の様々な色の炎を出して燃えるというものです。ガスバーナーの中に色々な金属化合物をかざして実験したと思います。花火の色はこの炎色反応を利用しているのです。
花火の星は主に三つの薬剤の混合によってできています。色を出す焔色剤、酸素を供給する酸化剤、燃焼を促進する可燃材です。これらの混合の度合いによって色合いも変化し、また煙火業者ごとの独特の色合いを出す工夫にも結びついています。
紅色は炭酸ストロンチウム
緑色は硝酸バリウム
黄色はシュウ酸ソーダ、炭酸カルシウム
青色は花緑青、酸化銅
銀(白)色はアルミニウム。
金(錦)色はチタン合金。
これらが色を出すための薬品の例です。最近ではこれらに加え、マグネシウム等も使われて星の色はより明るくなる傾向にあります。またこれらの混合によって、かつては難しかったピンクや紫、水色やレモン色といった微妙な中間色も次々に実現されています。
菊星に使われる「引き」は主に黒色火薬を使って木炭が燃えるときのやや暗いオレンジ色を出します。
日本の花火はその構造から割物とポカ物、そしてその中間にあたる小割物の三つに分類されます。それぞれの違いは玉の割れ方と中身の飛ばし方にあるというと分かりやすいでしょう。割物では玉皮は粉々になり、星を均等に遠くまで飛散させます。ポカ物では玉皮はほぼ張り合わせた所から二つに割れ、中身を放出します。小割物はその中間です。
割物(わりもの)
球形の玉の内側にびっしりと星を並べ、中央に割火薬を収め、玉の外側を丈夫な紙で幾重にも張り固めて作るのが「割物」です。外皮の強度と割火薬の爆発力とのバランスが大きく丸く開く花火を生み出します。
小割物(こわりもの)
八方に小さな玉を放出して多数の小花を一斉に開かせるものを小割物と呼びます。割火薬は割物より少なく、ポカ物より多いもので、千輪菊、花園、百花園とも呼びます。
ポカ物
ボール状の球体の玉皮がポカッと二つに割れて、収納された星や細工を放出するものをポカ物と呼びます。割薬も少なく、花火の拡がりも狭くなりますが、内包するものによって色々な機能の花火が工夫できます。運動会などでドンドンと音を出すものが代表例です。
打上げ方を組み合わせ、リズムとテンポを生むことが観客を惹きつける大事な要素といえます。花火はどのように打ち上がるのでしょうか?
まず玉ごとに打ち上げ筒が必要なのはいうまでもありません。(写真右2.5号から20号までの打ち上げ筒の例)
筒を固定して立て、底に打ち上げ用の発射火薬を入れます。それから花火玉の外に出ている導火を開きます(着火しやすいように)。竜頭にローブを通してこの玉を静かに筒の底に収めると準備完了です。小さい号数の玉では筒が短いのでロープを使わなくて装填が可能です。この状態で筒の口から「投げ込み」または「落とし火」という火の塊(マッチのようなもの)を落とします。ここでわずかの火の粉でも発射火薬に着火します。電気点火なら発射薬に挿入した点火玉に通電して着火します。続いてこの発射火薬の爆発と生み出されるガス圧で、花火玉は空高く放出されます(下図上段)。この瞬間、花火玉の導火線にも着火し、導火線内部で所定の時間燃え進んだ後に、中心の割火薬に着火。この割火薬が全ての星にも均等に着火させ、さらにその爆発力で玉皮を粉砕すると同時に星を四方に飛ばします。これが打ち上げと開花のメカニズムです(下図下段)。
以上のような「打ち上げる」ための玉への着火方法は、従来から普通に行われてきた人手による直接点火といえます。現在では小さな号数の玉でも、予め筒に装填した上で電気で遠隔着火させる電気点火方式が増えつつあります。花火が打ち上がって開くまでのプロセスそのものは上のような「投げ込み」による方法と変わりません。電気点火の場合は右の写真(5号玉の単発打ちの装填)のように玉の底(下側)に予め発射火薬がセットされ、玉と一体になっている場合もあります。
打ち上げの方法にはいくつかあり、ひとつの花火大会ではこれらを組み合わせてプログラムが進行します。
・単発打ち―信号花火や特に7寸以上の大玉などは一玉ずつ打ちます。
・早打ち一ひとつの筒で数十玉を連続打ちする方法です。
・連発―数十、数百の筒を並べて、導火線で短い間隔の差をとり、一度に打上げるものでスターマインがよい例。また電気点火で遠くから数カ所に置いた複数組の筒を同時に点火する(ワイド一斉打ち)ことも可能です。
・対打ち一2本の筒から「せーの」で、同時に打ち上げます。二つの玉があたかもひとつのように同時に開かねばなりません。従来は二人の打ち上げ担当者が同時に呼吸を合わせて点火しましたが、今では電気点火で容易にタイミングを合わせられます。
・重ね打ち一重ね玉ともいいます。一本の筒に2個以上の玉を積み重ねていっぺんに打ち上げます。スターマインにもよく使われる方法です。
・一斉打ち(同発=同時発射)一スターマインが束ねた筒の端から順に打ち出していくのに比べ、いくつかの筒に装填された複数の玉(10~20発ていど)を同時に飛ばします。花束などとも呼ばれます。
とくに早打ちは、一本の筒から連続して多数の玉を発射できる、という日本独特の打ち上げ方で現在でも一般的な方法です。ただし普通は、5号玉以下の小さい玉が多いようです。これは筒の底に、焚き火やバーナーなどで真っ赤に熱した「焼き金」という鉄片を入れます。焼き金にはいろいろな形状があり、鉄の鎖なども使います。筒の準備はここまでです。この中に早打ち玉というあらかじめ玉の方に発射火薬を取り付け済みの、早打ち専用の花火玉(写真右)を落とします。あとは単発同様に、玉の底についた発射火薬が焼き金の熱で着火し発射します。(上図右)次々に打ち上げる時に扱いやすいように玉には写真のように、それぞれ取っ手がついています。早打ちでは次の玉を防火シート内から取り出す人、打ち上げる人に渡す人、打ち上げる人と最低3人くらいの連携作業が必要です。筒口から早打ち玉を落とすと、瞬時に打ち出され危険なため、打ち上げ担当者は熟練が必要な方法です。
花火の種類と名前
花火大会で見ることができる花火には色々な種類があります。このページでは今日打ち上げられている花火の中から代表的な花火を選んで紹介します。いわば花火のスタンダードなスタイルカタログです。打ち上がった花火の名前や種類が解るだけで、花火大会は何倍にも楽しくなるでしょう。もちろんここで紹介できるのはほんの一部です。素敵な花火、気に入った花火に自分なりの名前を付けてしまうのも楽しいですね。
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