将棋や囲碁がAIに勝てなくなった理由は?
近年、AIを進化させている技術が、「ディープラーニング」です。例えば従来、AIが写真を解析して「ネコ」だと判断するには、その特徴をインプットしておく必要がありました。“耳が尖っている”“目が大きい”“ヒゲが長い”などが、ネコの特徴として言えるでしょう。
しかし実際には、耳が尖っているイヌもいますし、耳が倒れているネコもいます。そうした場合には、このような特徴による判断ではネコとイヌを誤ることがありました。
それに対し、ディープラーニングでは、1000万枚ものネコの画像をAIに見せることからはじめます。AIはたくさんの例を見ることで、自ら特徴を見いだして、学ぶ仕組みになっているのです。これは、人間がモノを学ぶ仕組みに近いと考えられます。
将棋や囲碁の場合も同様です。従来は、場面に応じて打つべき手をあらかじめプログラミングしておく必要がありました。しかし、ディープラーニングでは、AI同士を自己対戦させ、短期間に数百万局も対局もさせることで、勝つための方法を自ら学ばせることができます。そのため、時としてAIはこれまで人間が考えたことが無いような一手を打つことさえしてきます。
身近な生活に入ってきたAI
AIが登場するのは、すでに特別なシーンだけではありません。昨年より国内でも家庭向けにスマートスピーカーの販売がスタートしました。また、自動車を自動運転する研究は、世界中で進んでいて、実用化も近づいています。
そしてもっと身近なところで、実は多くの人がディープラーニングによるAIの便利さを実感しています。Googleが提供しているさまざまなサービスは、ディープラーニングにより、ここ数年でグッと精度を向上しているのです。例えば、“自然な言葉を使っての検索”“外国語の翻訳”“音声認識“といったサービスが向上したと実感する方は多いのではないでしょうか。
AIのデメリットはある?
AIの進化により、生活がどんどん便利になっていくことは間違いありません。でも一方で、AIやロボットが人間の仕事を奪うのではないかという心配があります。また、さらには“シンギュラリティ”が起こってAIが人間の知力を追い越すのではないかといった心配する人もいるでしょう。
また、例えば自動運転の自動車が事故を起こしたときに、責任を取るのは所有者なのか、メーカーなのか、プログラマーなのかといった議論も起きています。
AIによって置き換えられる仕事
オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン准教授が、“今後10年でなくなる仕事”というセンセーショナルな発表をして話題となり、その中には、AIやロボットに置き換えられる仕事が多く含まれています。その後もさまざまな研究者や作家がAIによって置き換えられる仕事について述べています。
いずれの発表でも、基本的にはルーチンの作業、マニュアル化できる作業は置き換えられることになっています。さらには、ビッグデータの解析により、これまで非ルーチンだと思われていた仕事もルーチン化できるようになりました。例えば、データに基づいた判断を行う、銀行の金融担当者、弁護士といった専門的な職業さえも、置き換え可能だという考えも あります。
これからの仕事はどう変わる?
それに対して、置き換えられない仕事として、クリエティブな仕事、緊急時に自ら判断する必要がある仕事、人間によるケアが必要な仕事は残っていくと考えられます。
一方で、AIが仕事を置き換えることで、人間にとって自由な時間が増えるという見方もあり、その先には、「ベーシックインカム」という考え方があります。
ベーシックインカムとは、政府が国民の生活を最低限保障するため、年齢・性別等に関係なく、一律で現金を給付する仕組みのことです。しかし、現状の仕組みでは、AIやロボットを所有する経営者や企業のみが高い生産性を実現し、少ない労働力で富を得る一方で、一部の仕事がAIやロボットに代替されることにより、仕事を失う人が増え、結果的に格差が増大することになるでしょう。
技術の進歩は恐れることなく、妨げることなく、推し進めていくべきですが、一方で誰もがメリットを享受できるような仕組み作りが必要です。その1つの提案として、“ロボット税”という考え方があります。
企業が既存の仕事をAIやロボットに置き換えて収入を得たら、それに応じた税金を支払うという制度です。欧州議会で提唱されるなど、欧米では議論がはじまっていて、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏なども賛同しています。
ロボットの活用によって得た税収を国民に還元することで、「ベーシックインカム」制度の導入も現実的になります。ただし、ロボットの定義はどうするのかといった議論があるほか、ロボット税を特定の国だけが導入することになれば、その国の企業が他国に比べて競争力を失ってしまう懸念があります。各国が同時に導入するような約束作りが必要なのです。
かつて産業革命の時には、“今後はあらゆる労働を機械が代替えし、すべての人たちが貴族のような暮らしができる”という考え方がありました。たしかに、先進国の生活は格段に便利で豊かになりましたが、一方で、労働がなくなったわけではありません。
AIやロボットの進化により、今度こそ、全員が貴族のような暮らしを実現したいものです。それには、誰もがメリットを得られる制度作りが必要です。それにより例えば、ベーシックインカムなどの制度が普及すれば、人間は余裕を持った生活をして、やりたい仕事に挑戦するなど、ライフスタイルや人生そのものが大きく転換することになるでしょう。

