セルゲイ・パラジャーノフ「ざくろの色」とジュノ・リアクターの楽曲コラボを鑑賞して | 日本アニメ視聴館  アニメ公式配信紹介

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どもですφ(.. )。

先日、面白い映像を貼ってゆくブログ記事で紹介した
ソ連時代の映画監督セルゲイ・パラジャーノフの映画
「ざくろの色」ですが、先日、エレクトロミュージック集団の
ジュノ・リアクターによる映画祭でのライブに使用した音源との組み合わせによる
「ざくろの色」を観て、またも作品の比類なき美麗映像にとらわれてしまいました。

ただ、「面白かった」で済ませるのはあまりにもったいないと思ったので
新たに別ページで記すことにしました。

この作品、めくるめく映像美にただただ浸ることが心地よいのです。


最も美しい映画作品と言うかについては
「映画」という枠に入るかどうかで幾分異論が出そうなのではありますが
最も美しい映像詩篇だと1番ではないかと思います。
映画でも5本の指には入る屈指の作品かも。

舞台となるアルメニアの歴史・異文化・服装・風習・宗教が日本と大きく異なることもありますが
異種独特な演出とあらゆる色の扱い具合、フレームの中に納められたからくり仕掛けのような人たち、
あるいは絵画のような構図でなおかつ動く映像はまるで夢でも見ているかのような
インパクトを何度見ても与えてくれます。



セルゲイ・パラジャーノフの来歴についてはネットですぐに詳細が確認できるので
割愛しますが、私が「ざくろの色」の映像を知ったきっかけは1997年にリリースされた
ジュノ・リアクターの「God is God」でした。
テクノミュージックをわりと聞いていたのでたまたま出くわした感じです。

Juno Reactor - God is God (YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=v8LY2VgiikE

ジュノ・リアクターの中心人物ベン・ワトキンスは以前からこの作品を知っていたようで
パリでアルメニア文化大臣にアプローチしてこの映画のライセンスを購入したそうです。


楽曲もさながらその異種独特な映像に驚き、「一体何の映画なんだ!?」
すぐに調べてセルゲイ・パラジャーノフの名前を知りました。

物語映画を作るうえでのセオリーを度外視したような作品ですが
パラジャーノフ本人はロシア国立映画大学監督科で制作法を学んでいるので
敢えてこの観念的な映像世界を作ったのだと思います。

登場人物の台詞によるストーリー展開はほとんどなく、
ストーリーを観念的に映すきわめて感覚的な映像世界。

固定アングルでパンフォーカス・ズーム・ワイドなども一切行わないスタイルで
カメラ演出に制限をかけているようにも思えますが
そのかわり動く絵画、詩篇のように視覚的に新鮮さをもたらす効果が活きたのだと思います。
アングルは柔軟に見上げたり俯瞰だったりといろいろな角度から撮影しています。

注意深く見ると、配置されている人物や小物の位置からフレーム内に
極力何もない無駄になりそうな空間を与えない配慮がなされています。
絵画的ながら映像作品なので空白に思える場所にボールや動きを入れて
間の抜けた感を与えない=単調にさせない工夫が読み取れます。

ストーリーは18世紀アルメニア生まれの詩人サヤト・ノヴァの一生を8章に分けて
描いたもの。個人的には第1章少年時代から第3章青年期のシーンが
若く女性への関心のメタファーや恋愛の演出を色鮮やかに表現していて
まさにめくるめく美麗世界に浸れる感覚です。

演出で興味深かった点は演者の動きが
日本で言えば能や狂言に似た節があったこと。
そういったところも観念的という点で共通していると思います。


フレーム内で一定の動きを見せる演者のシーンとは対照的に
アルメニアの文化がわかる、制作中の絨毯を水洗いするシーン、
毛織物を制作したり染色の作業シーンなど日常的なシーンは
実に生活感に溢れるもので、考えてみるとこういった素朴な演出を
時折挟み込むことで作品の映像世界にメリハリをつけていたのだなと思わせます。

アルメニアの伝統文化と生活に根差した行動シーンは
異文化とはいえ、日本でも年中行事に親しみがあるように
観た者に一種の安堵感を与える効果があるというのは、小さくも大事な発見かな。
生糸の染色のシーンは綺麗でした。

そういったシーンがなく、ひたすら夢の中のようなシーンが続くと
ちょっと肩ひじ張ったような構えてしまうしんどい作品だったかもしれないです。

役者は主役の青年期から、恋人、神、など主要な役柄をソフィコ・チアウレリという女優さんが
何役もこなしていたという点も驚くべき点です。





アルメニアの伝統音楽や文化がわかる「ざくろの色」ですが
2013年9月にポーランドの映画祭で「God is God」ミュージックビデオで
映像を採用していたジュノ・リアクターの中心人物ベン・ワトキンスに
「ざくろの色」の映画を用いたライブの依頼があったことから
今回、ジュノ・リアクター楽曲によって新たに再構成された
21世紀の「ざくろの色」ともいえる映像がYouTubeジュノ・リアクターのページで公開
されています。

元の1971年公開「ざくろの色※」はアルメニア民族伝統楽器によるBGMだったのが
民族楽器を取り入れた最新のエレクトロミュージックが加わったことで
一気に若い世代にも受け入れられやすい作風になったと思います。

ただ、最初の楽曲以外はこれまで発表してきた楽曲を活用していることもあり
アルメニア文化・伝統に即したBGMとは異なる点は作品をつかさどる要素として
伝統文化の要素も大事と考える映画ファンにとってはマイナスになるかも。

※元々は「サヤト・ノヴァ」という題で1969年公開したが、国家映画委員に問題視※され
上映できず、1971年に再編集版として「ざくろの色」のタイトルで上映。


※アルメニアがソ連支配下の複雑な環境下にあった。


それでも雰囲気に飲まれる威力・美麗世界観は強力に保ち続けていますので
興味のある方はぜひご覧ください。  不思議で美しい世界そして、眠くなるかも?

とても観念的な映画。考えるのではなく感じることに重きを置いているような作品。

振り返ると最近の映画はセリフだらけで説明的過ぎる作品が多いことを認識させる
効果もあるかも。

The Color of Pomegranates - Juno Reactor Score (1時間10分)
https://www.youtube.com/watch?v=J38sX_amtMY

※動画が共有可能になりました。



ちなみにジュノ・リアクターのベン・ワトキンスは
映画『マトリックス』シリーズのBGMを担当していた人です。
最近は柴咲コウに楽曲提供していてなんだか意外な組み合わせ・・。


あと、パラジャーノフ監督映画作品が2015年2月7日(土)東京 新文芸坐で
オールナイト上映する模様。


滅多に上映されることがないうえ、「ざくろの色」も上映予定なので、
興味のある方は行ってみるのもいいかも。


上映劇場 
http://www.parajanyan.com/common/theater.html


以上、「セルゲイ・パラジャーノフ「ざくろの色と」ジュノ・リアクターの楽曲コラボを鑑賞して」でした。
ご覧いただきありがとうございました。ではまた。

パラジャーノフ 生誕90周年記念映画祭(開催期間は既に終了です)
http://www.parajanyan.com/index.html