「ケイレブ」ハーバードのネイティブ・アメリカン 2018年刊 著者ジェラルディン・ブルックス 柴田ひさ子訳  アメリカの小説です

1620年清教徒102人がメイフラワー号でアメリカ東海岸プリマスに到着した 1630年にイギリスの植民地と定められ1636年ニュータウンの大学(後のハーヴァード大学)が設立される 1650年ハーヴァード憲章「イギリス人とインディアンの若者を教育する」が制定される 1659年ワンパノアグ族の少年ケイレブは先住民で最初にハーヴァード大学を卒業した

その歴史記録を背景に少女ベサイアの物語は書かれた

 

清教徒の祖父は入植後マーサズ・ヴィニヤード島の統治を望む 1642年ワンパノアグ族酋長は祖父を信用して土地を売る 少女ベサイアの家族は島に引っ越す

父は宣教師 インディアンと友好的につきあい島に学校を作る 優しい母と弟が亡くなる 残された赤ん坊ソレスの世話をするが亡くなる 15歳になったベサイアは酋長の息子ケイレブに出あい親しくなり英語を教える 父は聡明なケイレブとその弟ジョエルに高等教育をさせたいと考える 兄で長男メイクピースに宣教師となるための大学受験を考え ケイレブとジョエルにも同じ教育を授けようと考える しかし父は3人の授業料の援助を求めて出かけた船旅で遭難し亡くなる

祖父は知恵を絞る 3人をケンブリッジのコールレット教授のラテン語学校(ハーヴァード大学の予備校)に行かせる、そのための学費 それはベサイアを学生たちの寮母として伴わせ4年間の年季奉公を提案する

 

ベサイアは本が大好きで自由になる時間が欲しかった 家事や畑仕事が課せられる女子には許されないお父さんの本をこっそり読んでいた 私も仕事の合間に本が読める ラテン語講義を耳にする環境! ベサイアはこれを喜んで受けた ケイレブはこれを聞いて「いいか、奴隷になんかなるな!」といさめる 「私は神様以外の者の奴隷にはならない みんなが生きていけるためなら私は奉公人になるわ」

ベサイアはケンブリッジのコールレット教授の予備校で寮母をしながら学生たちの受ける講義を隣の配膳室で聴く ラテン語・ギリシャ哲学・倫理学・幾何学・天文学 それは至福の時間だった

ベサイアはコールレット教授の息子でハーヴァード大学のフェローのサミュエルの目に止まる サミュエルは彼女に結婚を申し込む

 

ベサイアは4年間の年季奉公が明けた 兄メイクピースは勉学を断念して島に帰った コールレット教授から「もういつでも島に帰っていいんだよ」と言われる

「先生、別のメイドの話がありそこに勤めたいのです」「それは息子サミュエルのそばにいたいからだろう?」「いいえ、先生、私が長年抱いてきた願いはわたしたち女性に閉ざされている教育を受けることです 私が9つの時父は私に教えるのをやめました。ラテン語やヘブライ語を学んでほしくなかったのです 私はただこの仕事に支障のない範囲で耳を傾けていただけです でも、次の職場は配膳室の隣でチョーンシー学長の講義が聴けるのです、それも毎朝」

 

ケイレブとジョエルは学業を優秀な成績で修めた 4年の厳しい勉学に耐えてチョーンシー学長の入学許可書を受け取ることができた しかしジョエルは1665年学士の学位授与式に向かう船で海難事故に遭い命を落とす 晴れて学位を得られたケイレブはなんと、翌年肺結核で死去したのだ

 

信教の自由を求めて新大陸に移り住んだ清教徒たちの先住民への教育と宣教、やがて戦争にいたる歴史を読む ベサイアを通して女性の地位の低さ 男より賢くてはいけない、男をしのいではいけないという重い時代の制約を知る その70歳の晩年 一人息子アンミ・ルハマについて 「あの子は本を読むのが好きでなかった 大学進学は聞き入れず実務向きなのね 彼は船大工 評判がよくて素晴らしい仕事に私は誇らしい この島に暮らす者の誇りだわ」とほめる

夫サミュエルに見守られる なんと心豊かな終わりの時なのだ 幸いなるかなベサイアの人生!