著者石井さんはある夜コンビニに行こうとして、黄色い軍手が片方だけ落ちているのに出会い、なぜかひらめいて携帯で撮る。それから2019年まで14年間で5000枚ほどの片手袋を撮影し「落とし物の片手袋」の研究家になってしまった不思議な人。数々の片手袋写真と風景。
なんとも変わった片手袋への興味と考察。見えてきたのは都市環境と人の生活。
毎日道歩きしないと出会えないので、「歩く」にはふさわしいモチベーションだわ!
写真も手袋の分類もふんだんにあるが、一番面白かった項目は「片手袋の聖地―築地」
1.築地は豪快
片手袋が大量に発生する。理由は1)手袋の使用率が高い。2)忙しい場所である。
2.築地は繊細
鮮魚を扱い、安全な状態で必要な場所へ届けるという、極めて繊細さが要求される仕事
場。片手袋はただ落ちているのではなく、拾われ見えるところに置かれていて、気配り
されているものが多い。忙しい人たちはやさしいなぁ
3.築地は異空間
・瞬間片手袋=配送の途中でターレーに片っぽ置かれる。片われは配達の人と一緒に
戻ってくる。
・奇数の手袋=19枚干してある、また2枚以上重ねられた二重手袋は仕事に必須で起こる
現象。
4.築地の変化
石井さんは築地に20年近く通った。築地場内市場は、2018年に豊洲新市場に移転した。
引越しまぢかには飲食店を中心に多くの観光客が訪れ、ファッション手袋、防寒手袋、
子ども用手袋がたびたび現れた。現在は豊洲市場に通っているが、豊洲でも軽作業用
片手袋と出会う。
この本、落とし物の片手袋から人の生活や仕事が見えてなかなか面白い!
私は自分の持ち物を落としたり、道でものを拾ったりすることがあったのを思いだした。
だれか、拾い物ウォッチングをして本にしてくれないかしら?それ、興味しんしん。