夢釣り行脚・南部パタゴニアの秋・その26 | 南米・鳥獣虫魚・探遊

夢釣り行脚・南部パタゴニアの秋・その26

海岸の散策の後、ガストンは市営の博物館に連れていってくれた。一昨日の晩餐のとき、オレが昔むかし、極東島で古生物学者をやってた話しをした。彼の自宅にも、新生代第三紀の貝殻化石があった。博物館には、恐竜化石もあるという。田舎の市営だから、それほどは大げさな展示はないけど、前から興味をもっていたブツがあった。

 

フロレンチーノさん

 

“アルゼンチンの古生物学の父”と呼ばれる孤高の博物学者にフロレンチーノ・アメギノがいる。いろいろな時代の脊椎動物化石を、かたっぱしから記載したけど、辺鄙な国の独学だったから、かなりのマチガイをやっていて、当時のヨーロッパ学者の嘲笑を買った男である。たとえば、二本足で疾走したテラー・バード(恐鳥)を歯のない哺乳類であるとか、カラシン科魚のレポリヌス化石を、霊長類の猿であるとか、愉快な結論をだしていた。

 

ホムンクルス頭骨

 

もっとも素晴らしいフロレンチーノの珍説は、「人類の起源は、南アメリカ大陸だぁ~!」である(笑)。論拠にしたのは、1891年に記載したホムンクルス・パタゴニクスという霊長類化石だった。ホムンクルスってのは、もともとは中世の錬金術師がフラスコの中でサピー精子と薬草や糞などで合成した人間型人工生命のことである。意味は「小さな人間」。ガリバー旅行記に出てくる小人の国の住人のリリパットだね。調子ついたフロレンチーノは、この化石をパタゴニアのリリパットと呼んだ。ホムンクルスのホミノイド(完全直立歩行する霊長類)説は、その後に樹上性の新大陸猿類だったと否定されてるけど、こういうお話しは実に楽しい。

 

カルロスさん

 

フロレンチーノには、カルロスという弟がいた。学者より現地での化石掘りのほうが性にあっていた男である。兄貴のほうは温暖なパンパ地方で化石掘りをしていたけど、弟は精力的に極寒の南部パタゴニアを歩きまくった。弟の発見ブツの白眉は、サンタ・クルス層の霊長類、すなわち猿類化石である。リオ・ガジェゴス市から60キロほど離れたエスタンシア・ラ・コスタでホムンクルス頭骨化石を掘ったのは彼である。

 

博物館展示の猿化石

 

南部パタゴニア地方は、猿化石の宝庫だ。ドリコセブス(1951年)、トレマセブス(1974年)、ソリアセブス2種(その内の1種の種小名は、アメギノラム、1987年)、そしてカルロスの名前を冠したカルロスセブス2種(1990年)などが記載されている。そして、最近の2005年、キリッキアイケという種が記載された。

 

キリッキアイケ化石

 

キリッキアイケは、色といい形といい、ダースベイダーによく似ている。それが愉快だったもんだから、前にもこのブログで紹介したことがある。市営博物館で現物(もちろんレプリカに決まっているけど)に出会えるとは思っていなかったからウレシかった。

 

続く

 

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