その3・トカンチンス河からシングー河・3
トカンチンス河の下流
60年代半ばから70年代前半に奇跡の経済成長を見せたブラジルだったけど、その裏だては先進国からの融資だった。しかしオイル・ショック後、外資の導入が止まると経済は急激に低迷してしまった。そしてハイパーなインフレが始まった。累積債務に苦しんでいた政府は、アマゾン地域の熱帯雨林に眠る鉱物資源開発に目をつけた。
鉱物資源開発には、巨大な電力が必要だった。トカンチンス河を堰きとめたトゥクルイ・ダム湖は、琵琶湖の三倍半という膨大な熱帯雨林を水没させ、1984年に完成した。当然のことながら先進国の自然保護団体が黙っている筈がない。まず地球の貴重な生態系が大規模に破壊されたことに非難が集中した。また熱帯密林に造られたダムでは、冠水して死滅した樹林などのバイオ物質が急激に腐敗し、底層で大量の硫化水素を発生させる。これが酸性雨を起こす原因になるとして取り上げた。上層の水は栄養化しアオコのような状態となり、ほとんどの水棲生物は生きていけないと論じた。またインディオ村の住民の強制立ち退きも、人権保護上の問題があると非難した。
アマゾン・アルミやカラジャス開発に大きな政府間融資や民間企業投資をした日本は、その槍玉に挙げられた。途上国が開発を行なうことに関して、とやかく言う立場にないけど、もちろん自然が消えていくのは悲しいことである。
トゥクルイ・ダム湖では建設直後、富栄養化による酸欠で多くの水棲生物が死滅した。幸いなことにトカンチンス河は流量が大きいため、湖の水は数十日単位で入れ替えられていった。水質は次第に落ち着いてきた。一時の生物大量死により、そこは生態的に巨大な空き家になっていた。そして止水に適応した生物が猛烈な増殖を始めたのである。
まず藻類を食べる淡水エビや小魚が増えた。そしてそれらを食べるニベ科の淡水イシモチPlagioscion sp.とシクリッド(シクラ科)のピーコックバス類Cichla spp.が爆発的に増えた。喜んだのは漁師である。現地でペスカーダと呼ばれる淡水イシモチ、トゥクナレと呼ばれるピーコックバスは、共に食用魚として商品価値が高い。ダム湖のサシ網漁では、毎日大型トラックで何度も往復するほどの漁獲があった。生態的な空き家に新しい生物が入りこむと、始めのうちよく増える。エサとなる生物は防御に慣れていない。だから赤子の手をひねるように簡単に捕食できる。しかし、トロかったエサたちも減ってきて、また敵のいない場所にだけ棲むようになる。そうなると捕食者の数も減ってしまう。日本の闇放流ブラックバスがそうだった。トゥクルイ・ダム湖では人為的な採取も手伝って、ピーコックバスの数が減り、同時に漁師の数も減った。とはいえ巨大な水域である。まだまだ魚ストックのキャパシティは高い。
トゥクルイ・ダム湖に生息するピーコックバスは、3種類だ。まずは、もともと下流の住人、ピニーマ・ピーコックバス(シクラ・ピニーマ)。これはツクナレ・アスー(ジャイアント・ピーコックバス)の系統。ピニーマとは、トゥッピ系インディオ語源で、「斑点がある」を意味すると思う。昔むか~し、トカンチンス河下流のカメタ近郊で始めてニュースタークラウンプレコを発見したとき、現地のインディオ末裔がアカリ・ピニーマってのを造語したもんね。同種の詳細は、下のURLを参照。東北ブラジル地方のダム湖で12キロ近いのが釣れてるけど、一般に8キロ以下くらいまで。
http://amazonfishing.blog134.fc2.com/blog-entry-34.html
ケルベリィ&ピキティの2種は、アラグァイア・トカンチンス水系の特産種たちだけど、サン・フランシソコ河水系やラ・プラタ河水系に移植されている。
ケルベリィは、イエロー系だけど、「腹ビレ、尻ビレ、尾ビレの下半分に、細かい明るいスポット、あるいはレオパード模様がある」、が特徴。大きくて2キロくらい。同種の詳細は、下のURLを参照。
http://amazonfishing.blog134.fc2.com/blog-entry-27.html
ピキティは、ハイランド系で、現地でツクナレ・アズール(ブルー・ピーコックバス)と呼ばれる種。大きくて4キロくらい。同種の詳細は、下のURLを参照。
http://amazonfishing.blog134.fc2.com/blog-entry-35.html
アマゾン猛魚・頭骨博物館
http://amazonfishing.blog134.fc2.com/blog-entry-81.html
シングー・クラフト、カタログご案内
http://amazonfishing.blog134.fc2.com/blog-category-11.html
グランデ・オガワとアマゾンの猛魚を釣ろう!
フィッシング隊員募集中





