以下の記事をカンタンに要約すると、
胆汁酸は、
腸管に分泌されて、脂質の消化吸収に働くだけでなく、
再吸収されて、全身ををめぐり、
細胞でのエネルギー代謝や
コレステロール代謝をコントロールしている。
また、腸内では、腸内細菌に代謝される一方で
腸内細菌そのものの定着にも影響している。
さらに、近年では、
百歳を超える人達がもつ特有の胆汁酸が
免疫系へ影響していることも明らかにされている。
ということ。
“胆汁酸”を介した腸内細菌と宿主のクロストーク(公益社団法人日本農芸化学会)
(抜粋)
ヒトの腸管内には数百種,約40兆個に及ぶ腸内常在菌によって複雑なエコシステムすなわち腸内細菌叢が存在している.この腸内細菌叢が生産する代謝物は宿主の生体恒常性に関与し,腸内細菌叢を介した健康維持が注目されている.なかでも,胆汁酸は宿主の肝臓で生合成され,腸管に分泌され食脂質の吸収に働く一方,再吸収され全身をめぐり,宿主細胞の受容体を介してエネルギー代謝やコレステロール代謝などの制御に働くことが知られている.また,腸内では腸内細菌に代謝され構造変化し二次胆汁酸となる一方,腸内細菌そのものの定着にも影響している.本稿では,この胆汁酸を介した宿主−腸内細菌叢のクロストークに着目して,新生児における腸内細菌の定着から成人の生活習慣病との関係,さらには近年,百寿者特有の胆汁酸機能として明らかにされた宿主免疫系への影響にいたるまで,一連の研究を紹介する.
(中略)
まとめ
胆汁酸と腸内細菌の関連性についての研究は歴史が古く,1960年代にはすでに主要な胆汁酸代謝が明らかにされていた.しかし,近年の解析技術の革新により,解像度が高い研究が行われるようになり,胆汁酸と腸内細菌の新しい機能が次々に報告されている.宿主の胆汁酸プールは腸内細菌の多様性や増殖を制御し,腸内細菌は胆汁酸を代謝することで宿主の生理機能へ影響を与えていることは確実である.この意味で,胆汁酸はヒトと腸内細菌の間の複雑なクロストークの言語として機能していることが推察できる.今後も腸内細菌による胆汁酸代謝や修飾のメカニズム,胆汁酸の宿主の健康に果たす役割が明らかになることで,宿主と腸内細菌のコミュニケーションを読み取り,制御する時代になることを期待している.