その日の朝、ジョンキーユには、冷たい風が吹いていました。それは、秋の終わりが近いことを知らせていました。空は、どこまでも青く澄んでいます。
エミーリアは、その日もいつものようにエッセンスの森にある小さな石碑の前で、幼馴染のミゲルと遊んでいました。
森の木々達は紅く色づき、その艶やかさを競い合っています。
そんな森へ、北の彼方から小さな山鳩がやってきました。山鳩は、エミーリアを見つけると側に降り立ち、「クルッポー、クルッポー」と鳴きました。エミーリアは、「どうしたの? 山鳩さん」と尋ねると、山鳩は、あたりをキョロキョロと見渡し、また「クルッポー、クルッポー」と鳴きました。
すると、遠くの方から山鳩が2羽と黒いカラスが飛んできました。山鳩の内、1羽はとてもスマートで、メガネをかけています。もう一羽の山鳩は、少し元気がなさそうで、やっとの思いで飛んできたようです。黒いカラスは、少し奇妙で普通のカラスと違い、くちばしはとても短く、横に大きく開いています。そして、丸々と太っていて、短い羽と足がついていました。
4羽の鳥達は、エミーリアとミゲルの前にある木の梢にとまりました。エミーリアは、「鳥さん達は、お友達なの?」と尋ねました。すると、最初に飛んできた小さな山鳩が「クルッポー、クルクルポー」とエミーリアの方を向いて鳴きました。エミーリアには、山鳩の言葉はわかりません。
「ごめんなさい、鳥さん達の言葉は、私にはわからないわ」とエミーリアは言いました。小さな山鳩は、羽をバタバタさせて「クルッ・クルッ・ピー!、ピーピーピー!」と鳴きました。しばらくして、元気のない山鳩が「クルッパー、パーパー」と鳴きました。メガネをかけた山鳩は静かにその様子を見ています。どうやら、エミーリア達に何かを訴えているようです。でも、エミーリアにはわかりません。
すると、突然、黒いカラスが空を見上げ、「ガァーガァー・キーグヮー・キーキーキー!」と空を切り裂くような声で泣き出し、最後にフンをしました。その様子を見ていたミゲルは、この黒いカラスは病気なんだと思いました。
4羽の鳥達は、しばらくすると突然、石碑の側に飛んでいき、くちばしでつつき始めました。
その石碑は、エミーリアにとってとても大切なものでした。「どうして、そんなことをするの?ここには、私の大切な想い出が詰まっているの、やめてちょうだい!」エミーリア言いました。
でも、鳥達にはエミーリアの言葉は通じません。エミーリアは、力を振り絞って「やめてちょうだい!! ここは私と私のママの大切な場所なの!」と森が震えるほどの声で叫びました。その目には、涙が溢れています。でも、鳥達には何も伝わりません。 黒いカラスが「キーキー・ゴゲゴ・ピコー!」と薄気味悪い声で鳴き、エミーリアを睨みながらフンをしました。
小さな山鳩が「クルッポー、ポーポー」と鳴いたかと思うと、4羽の鳥達はバッサバッサと空へ向かって、舞い上がり北の方へ飛んで行きました。
石碑は、鳥達の落とした羽とカラスのフンで汚されていました。エミーリアは、その様子を見て、とても悲しくなりました。