今回は現地23日開幕のスペイン1部リーグACBの注目チームや優勝予想について。
ACBは特殊な大会やリーグを抜かせばNBAの次にレベルの高いリーグだと個人的に思っている。
その要因はバルサとレアルの超ビッグクラブの存在もそうだが、他の低予算チームさえもタレント選手を抱えているなど有力選手が集まっていることが大きい。
そして有力選手が集まるのもレベルの高さや外国人枠が存在しないこと、平均サラリーが高いことなど様々な理由があると見ている。
予算の話で言えばバルサとレアルはヨーロッパでも資金力トップ2のチームであり、3番手に大きく差を付けてNBAの次に資金力のある2チームとなっている。
一昨季は両チーム日本円で69億近い予算を運営に充てており、そのうちサラリーには30億もの莫大な金額が割かれており、サラリーに関して言えばユーロリーグを外されたCSKAの方が上とはいえ2強のCSKAが国内に幽閉されている現状ではスペイン2強は国内のみならずヨーロッパで別格のメガクラブになっている。
この2強に加えて同じくユーロリーグに参戦しているバスコニアとバレンシアを合わせてスペインの4大チームと個人的に括っており、4大チームからしか優勝チームがずっと出ていないことからも4大チームが他のチームの大きな壁になっているのが近年のACBである。
そんな飛び抜けたチームやタレントの多いACBにおいて個人的に今季注目しているチームは以下である。
バスコニア
先述した4大チームの一角で昨季はまさかの4大チーム以外のチームに負けてプレイオフQFでスイープ敗退という期待とロスターを下回る成績に終わった。
退団選手はドライブに定評あるスイングマンのギエドライティス、昨季初のユーロリーグ挑戦だったにも関わらず大活躍したトンプソンなど主力含む4人。
新加入はフィジカル抜群なフォワードのモニーク、イタリア代表のマニオンなど有力選手7人。
残留はスペイン代表経験あるフォワードのディエス、リトアニア代表フォワードのセデカースキス、セルビア代表シューターのマリンコヴィッチ、オールラウンドフォワードのホメス、スコアリングガードのヘイデガー、リーグ屈指のスコアラーのハワード、プレイエリアの広いビッグマンのコステロ、ペイント内で強さを発揮するビッグマンのコッツァーなど有力選手の大半が残留。
ギエドライティスとトンプソンの移籍は痛いが、モニークの加入は非常に大きく、他のユーロリーグチームから声が掛かると思っていたハワードも残留したことで戦力的には少なくともダウンではないと感じる豪華なロスターと言える。
フォワードの層が特に厚く、タイプの違う選手が集まっており、ロスター全体のバランスも非常に良さそう。
ユーロリーグではビッグマンの層が不安要素かもしれないが、国内レベルなら気にならないレベルと見ている。
プレイオフを逃すとは思えないチームの一つ。
個人的注目選手はガードのハワード。
昨季が初の海外キャリアとなったが、ACBでもユーロリーグでも抜群の得点力を発揮して途轍もないインパクトを残した。
サイズはないが、ドライブもシュートも高レベルで、特にシュートは積極的に3Pを打って高確率で決めてくるので驚異的。
しかも、セレクション的によろしくないようなシュートでもガンガン打って決めてしまうのでディフェンス側からしても守り辛いことこの上ない。
今季は他のユーロリーグチームに移籍すると思っていたが、セレクションの悪さやセルフィッシュな部分が敬遠されたのかバスコニアのオファーが良かったのか分からないが、残留したことはバスコニアにとって大きい。
国内ではPTは減るかもしれないが、今季もチーム上位のスコアラーになることは間違いないと見ている。
ホーベントゥート
昨季のサプライズチームでユーロカップでベスト4、国王杯準優勝、ACBでもバスコニアを破ってベスト4という凄まじい成績を残した。
ただ、その凄すぎた成績のせいかスウェーデン代表ビッグマンのバーガンダー、茨城に移籍した万能ビッグマンのエレンソン、快進撃の立役者となったスコアリングガードのガイ、若手オールラウンダーフォワードのパーラなど主力多数含む7人が退団。
新加入はシュートの上手いガードのアンドリュース、東京でもプレイしてユーロリーグ常連チームを渡り歩いたトーマス、フィニッシャータイプのビッグマンのオヌアクなど6人。
残留はストレッチビッグマンのブロジヤンスキー、ドミニカ共和国代表ガードのフェリス、インサイドで莫大な貢献をするセブンフッターのトミッチなど12人。
昨季のホーベントゥートの強みはスーパーガードのガイとタイプの違う4人の強力なビッグマンがいたことだと思っているのでガイとバーガンダー、エレンソンがいなくなった影響は大きいと思っている。
アンドリュースとトーマスはユーロリーグレベルのタレントだが、ガイの穴とビッグマンの層に関しては不安要素と見ている。
戦力ダウンしたと思われる今季のロスターで昨季のような成績が残せるか楽しみなチーム。
個人的注目選手はビッグマンのブロジヤンスキー。
非常にシュートの上手いストレッチタイプのビッグマンで日本で見たいと何年も前から思っている選手の1人。
オフボールでの得点も可能で、シュートの上手い選手の多いホーベントゥートではスペーシング以外にも活躍の場面や役割が多そう。
グラン・カナリア
昨季ユーロカップ優勝チームで今季はロスターが強化されたと感じるチーム。
退団はブラジル代表ガードのベニーテ、フィジカルとリバウンドに長けたビッグマンのイングリスなど主力含む6人。
新加入はスコアリングガードのランズバーグ、ペイント内で高い得点力を発揮するハップ、ベルリンで長らく主力だったロールマンのラマーズなど有力選手含む7人。
残留はユーロカップMVPのシュルナや機動力抜群のスイングマンのブルッシノ、フランス代表経験のあるガードのアルビシーなどコアメンバーが残った。
シュルナやブルッシノは他からも需要が多かった選手だと思うが、引き留められたのは大きい上にラマーズとハップの加入でビッグマンの層は非常に厚い上にタレントも揃って強力になった。
昨季もかなり強いチームだったのに戦力比では間違いなくアップしたと思うので今季も国内外で好成績を残せそう。
個人的注目選手は新加入のラマーズ。
機動力と身体能力が高く、ダイブやカットが得意。
ミドルも意外に上手く、リムアタックだけに気を取られていると決めてくる。
日本で見たかった選手の1人で非ユーロリーグチームに移籍するのは意外だった。
シュルナ、ハップとは住み分け出来る上に3人とも強力なビッグマンなので2人との相乗効果も期待したい。
バルセロナ
スペイン2強の一角で昨季のACB王者。
圧倒的な資金力で毎年凄まじいロスターを作り上げるが、今季もヨーロッパ屈指のメンバーとなっている。
退団は恐らくヨーロッパNo.1プレイヤーであろうミロティッチ、スロベニア代表ビッグマンのトビーなど主力含む5人。
新加入はNBAドラ2のパーカー、スペイン代表エースのエルナンゴメス、オールラウンダーフォワードのパーラの3人。
残留はチェコ代表ビッグマンのヴェセリー、アルゼンチン代表のラプロヴィットラ、シューターのキュリッチ、セルビア代表フォワードのカリニッチ、リトアニア代表ガードのヨクバイティス、チェコ代表ガードのサトランスキー、抜群のシュート力を持つアブリネスなど9人。
見ただけで分かるように強豪国代表主力や有名選手がズラリと並ぶ意味分からない布陣となっている。
昨季もNBAからサトランスキーを獲得していたが、今季もパーカーとエルナンゴメスを獲得するなど話題に事欠かない。
ミロティッチの移籍は意外であり、チームのエースがいなくなったわけだが他のメンバーも強力すぎるので結局のところ戦力的には大きな違いはなさそう。
ヨクバイティスはもう一度NBAから声が掛かると思っていたので全く接触がなかったのは驚いた。
スタメンが全員怪我をしたとしてもプレイオフを逃すことはあり得ないくらいの豪華ロスターなので何かしらタイトルを取れなければ失敗くらいのチームと言える。
個人的注目選手はヴェセリー。
オフボールタイプのビッグマンでダイブやカットはもちろん抜群に上手いが、ミドルも高確率で決めてくるメイン武器になっている。
昨季のプレイオフ決勝ではこのミドルがバルサの大きなアドバンテージとなって優勝に大きく貢献した。
ディフェンスも素晴らしく、ペイント内では体を張り、ペリメーターではビッグマンとは思えないフットワークを見せる。
ミロティッチの代わりに入ったエルナンゴメスとのコンビも楽しみにしたい。
昨季は3割後半の高確率で3Pを決めており、正直ユーロリーグ参加チームに移籍すると思っていた選手の1人。
シェルマディーニがかつてほどの支配力を発揮出来なくなって来ているのでリスティッチの活躍が期待される。
レアル・マドリード
スペイン2強の片翼で昨季のユーロリーグ王者。
バルサと同じく桁違いの資金力で豪華ロスターが揃うのは毎度の光景。
退団はハンガリー代表フォワードのハンガ、身体能力抜群なビッグマンのコーネリ、スタメンガードのウィリアムスゴスなど主力3人。
新加入はNBAから戻ってきたカンパッソなど5人。
残留はフランス代表ビッグマンのヤブセレ、ユーロリーグ最強ビッグマンのタバレス、205センチのスイングマンであるムサ、スペイン代表フォワードのフェルナンデス、フランス代表ロールマンのポワリエ、スペイン代表シューターのリュル、シュートの上手いコウセル、アルゼンチン代表フォワードのデック、クロアチア代表フォワードのヘゾーニャ、スペイン代表レジェンドのロドリゲスなど錚々たる選手が残った。
ポワリエの退団やタバレスのNBA挑戦など主力の退団が示唆されていたが、実際はハンガのみで痛手を伴うことはなく相変わらず強力な布陣となっている。
カンパッソの出戻りもツルヴェナに残るわけないのは明らかなのでNBAから戻った時点で誰もが予想していたのではないだろうか。
新加入はほとんどが下部組織から若手が入っただけで主力は昨季と変わらないと思われる。
各ポジションともに層が厚く、バルサとともに毎度ながら優勝候補筆頭格なのは間違いない。
個人的注目選手はヘゾーニャ。
シュート、ドライブともに高水準でトランジションでのフィニッシュ力も魅力的なスーパーフォワード。
3番でも4番でも問題なくプレイ出来る器用さも持ち味。
強力なビッグマンが多くリバウンドの強いレアルにおいてはデックとともにブレイクで得点を稼ぐパターンは今季も健在だろう。
ウニカハ
昨季の国王杯王者で2強を倒して優勝したサプライズチーム。
ブリズエラのユーロリーグ移籍の話も出ていたが最終的に退団選手はなく、新加入はスイングマンのテイラーなど4人で主力を1人も流出させなかったのは見事。
主力選手はフィジカル抜群なビッグマンのトーマス、得点力と身体能力が高いモンテネグロ代表PGのペリー、スペイン代表ガードのブリズエラ、オールラウンドビッグマンのオセトコウスキ、スコアリングガードのカーター、3Pまで打つようになった効率的フィニッシャーのクラヴィッシュ、カナダ代表フォワードのエジム、シューターのカリノースキ、ロールマンのシマなどバランスも実力も備えたロスターになっている。
流石に国王杯を連覇するのは難しいと思うが、昨季の偉業を見ていると何かを期待せずにはいられない。
個人的注目選手はビッグマンのクラヴィッシュ。
過去に日本のチームに移籍を予想した選手でオフボールからのフィニッシュとミドルを得意とするビッグマンであったが、昨季は3Pもフリーであれば積極的に打って高確率で決めていた。
元々ミドルの上手い選手なので何故3Pを打たなかったのか謎な選手だったが、これでトーマスやペリーにスペースをより与えられるようになったのは大きい。
バレンシア
4大チームでは1番格下で昨季はRS中盤までプレイオフ当落線上を彷徨いていてロスターの割に危ない時期もあった。
退団は長年バレンシアでエース格だったモンテネグロ代表ビッグマンのドゥブリエヴィッチ、得点力高いフォワードのウェブ、フィジカルが強いロールマンのリヴェロなど主力含む6人。
新加入はオールラウンドビッグマンのリューヴァース、フィジカルと身体能力抜群なフォワードのオジェレイ、かつてはヨーロッパNo.1センターの呼び声も高かったデイビスなど有力選手含む6人。
残留は攻撃的ガードのロバートソン、高水準コンボガードのジョーンズ、スペイン代表フォワードのプラディラ、オールラウンドフォワードのロペス、スコアリングとゲームメイクともにハイレベルなガードのハーパー、高いシュート力を誇るヘルマンソン、スペイン代表フォワードのクラベールなど主力が多数。
ドゥブリエヴィッチがいなくなったのは痛いが、元々豪華だったロスターにデイビスやオジェレイが加わるのは凄まじい。
このメンバーがバレンシアの予算内で収まるのは意外なほど各ポジションが充実したものになった。
デイビスは他の資金力あるユーロリーグチームが獲得すると思っていたのでバレンシアはかなりお得なサラリーでデイビスを獲得出来たのではないだろうか。
昨季はメンバーの割に成績が振るわなかったので今季は最低でもRSで昨季以上の成績を取れないと失敗と言えるかもしれない。
個人的注目選手はジョーンズ。
得点力もゲームメイク能力も備えたコンボガードで、ドライブは特に上手い。
東京の外国人予想をする際にコブスの代わりに考えていた選手の上位候補で好きな選手でもあるので今季もプレイを楽しみにしたい。
以上見てきてやっぱり4大チームはタレントが充実し過ぎているが、ウニカハやホーベントゥートもスター選手こそいなくてもバランスが良かったり中堅トップレベルが多くいたりでACBのレベルの高さが分かる。
選手単位で見れば取り上げたチーム以外にも優秀な選手は多数いるので今季もハイレベルな試合が下位チーム同士のカードでも見られそうで楽しみである。
優勝予想はバルサと悩んだがレアル。
チームNo.1プレイヤーのミロティッチが退団したバルサと比べるとハンガの退団は些事に思える。
ウィリアムスゴスの退団は痛いかもしれないがカンパッソが戻っているのでウィリアムスゴスの穴は埋まっていると考えられるのが予想の決め手になった。
国王杯の行方も楽しみにしたい。