今回はBリーグからシーズン総評第4弾の栃木ブレックス編。

 

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チーム評

 

まず、栃木の今季の編成やロスターについて見てみると優勝HCの安斎HCがいなくなり佐々HC体制になった。

日本人選手では主力PGのテーブスと笠井が入れ替わり、アジア枠はジャワトからヤンへ、外国人選手はフィーラーがマブンガに変わった。

開幕前総評でも述べた通り笠井が平均20分近く出ていたテーブスの代わりでは厳しいというのは予想通りで平均10分以上出ている方が驚きというくらいPG層が薄くなった。

フィーラーからマブンガへの入れ替えも開幕前総評で懸念した通りマブンガがチームにプラスをもたらすことはなく、10試合も出ることなく契約解除と完全にフロントのミスと言える無駄な結果を産んでしまった。

テーブスから笠井への入れ替えはテーブス自身がPTを求めて出たことと資金力があっても戦力に数えられるPGの確保が難しかった今季リーグを見れば仕方ない部分かもしれない。

しかし、マブンガ獲得に関しては意図が全く読めない獲得であり、素人目で見ても失敗と分かる補強だったので成績を落とした一因になったのは間違いないだろう。

昨季リーグ断トツのディフェンス力でロシターが居なくなってもディフェンスで優勝をもぎ取ったチームにディフェンスの苦手なマブンガを入れるというのはチームのコンセプトから外れているとしか思えなかった。

ましてディフェンス面で大きい活躍をしていたフィーラーとの入れ替えだったので昨季ほどの強固なディフェンスは見られず、かと言ってオフェンス面でも有用でなかったのでマブンガ獲得のダメージは大きかった。

ただ、チーム成績は32勝28敗で昨季より勝率が下がってプレイオフ進出は逃したとは言え、プレイオフ進出チーム以外で唯一の勝率5割超えであり、編成の失敗がありながら二極化したリーグの上側にいられるのは流石栃木と言える。

中盤で負けが込んだ時は勝率5割以上は難しいのかとも思ったが、しっかり達成するあたり日本人核選手が長くプレイしているだけに栃木の組織力はやはり高かった。

なのでプレイオフ争いに関われなかったのは残念だが、あからさまに失敗というほどのシーズンではなかったように思う。

 

 

​個人評

 

主力選手や気になる選手について見ていくと、


・フォトゥ

チーム2位のスコアラーでポストアップからのフックとダイブを武器にペイント内で得点を重ねた。

3Pも高確率で決めているが、基本的にドフリーのシチュエーションでしか打たないので本数は少なく、かといって本数を増やすと確率は下がると思われるので乱発しないのが良かった。

ディフェンスでもポストディフェンス、ペリメーターディフェンスともにフィジカルに守っていた印象。

弱点はFT確率が低いこととORは強いのにDRが極端に少ないことで、平均DRは PTの少ないジェレットよりも少ないのは悩ましい。


・スコット

栃木の大黒柱だったはずだが、昨季から大きく数字を落とした。

腰の不調が原因なのか終盤は特に休みがちな上に試合に出てもらしくないプレイが多かった。

サイズとフィジカルを兼ね備えたポストプレイとダイブが強烈な選手だったが、今季はフィニッシュし切れない場面が目立ち、FG%や平均得点は大幅に下がった。

FTも昨季はビッグマンとしては申し分ない75%近い確率だったが、今季は10%近く落としてビッグマンとしても厳しい確率だった。

ただ、リバウンドでは変わらずチームトップの強さで貢献していた。


・ジェレット

マブンガの代わりの入った選手でシーズン途中の補強で限られた選択肢で仕方ないとは言え、ベストな人選だとは思えなかったがマブンガと違ってチームの戦力になった。

持ち味であるはずのシュートでは3P30%でFT67%と実力を発揮出来なかったが、ダイブやカット、ポストプレイなどシュート以外の部分で活躍。

加入からしばらく何故かボール運びもさせられてTOに繋がる場面もあって適性外のプレイからミスに繋がるなど気の毒な面もあったが、シーズン中の獲得にも関わらずチームが勝率5割を達成出来たことからもジェレット獲得は失敗ではなかった。


・比江島

もうベテランの年齢だが、大車輪の活躍で栃木が勝率5割を達成した立役者とも言うべきプレイぶりだった。

まさか外国人選手を抑えてチームのトップスコアラーになるとは全く予想しておらず、アシストでもチームトップで完全に核だった。

緩急を使ってアシストやフィニッシュに繋げるドライブや高確率のシュートなど文句の付け所がないシーズンだった。


・遠藤

C&Sの上手さは健在で昨季より3P%を上げており、アシストも意外に平均2本以上記録しているのはありがたい。

プレイスタイルを考えたらTOが少し多い気もするが、ディフェンス含めて栃木を支えている選手で比江島と並んで今季の栃木において遠藤に代わる選手はいないほど重要な選手だったと思う。


・鵤

シュートの苦手な選手だが3P%は昨季より上げており、TOも1.5と1個台で抑えておりPG2番手以降の層が薄くなった今季は鵤がいなかったら本当に大変だったかもしれない。

せっかく屈指のフィジカルを持っているのでもう少しフィジカルを活かしたプレイも見たい。


・竹内

もう全盛期のようなプレイは見られないが、リバウンドに飛び付く姿勢やフリーのミドルやFTをきっちり決めるところなど出来ることをする姿勢が素晴らしかった。

ディフェンス面で厳しい面があるが、この年齢でこのサイズの日本人選手ということを考えればそこは仕方ないと思える部分で責められない。


・ヤン

球際への執念やディフェンスへの姿勢などで栃木に合うと考えていたのでもう少しPTがあると思っていた。

PTは平均10分を切っており、貴重なアジア枠を使うには勿体無い結果になってしまった。
 


​主要チームスタッツ比較

 

・平均得点

平均得点は昨季が79.8点でリーグ13位、今季は73.7点でリーグ22位に得点と順位が大きく下落。

下落幅があまりにも大きいので最遅だったペースが更に下がったことやテーブスがいなくなってオフェンスの円滑さが欠けたことなど原因は様々あるかもしれない。


・平均失点

平均失点は昨季が69.1点で少ない順でリーグ1位、今季は72.1点でリーグ2位と数字も順位も落ちた。

しかし、依然上位はキープしており、フィーラーが抜けても上位ならばネガティブな結果ではないだろう。


・平均3P

平均3PAは昨季が21.5本でリーグ19位、今季は25本でリーグ15位にアテンプトと順位が上昇。

平均3PMは昨季が7.4本でリーグ18位、今季は8.5本でリーグ15位に成功数と順位が上昇。

平均3P%は昨季が34.5%でリーグ10位、今季は34%でリーグ9位と確率は下がったが順位は上昇。

3Pはアテンプト、成功数、確率の全てで順位が上がっており確率だけ数字も下がっているが、リーグ全体で低下傾向にあったので確率が下がっても順位は上がった。

シュートの上手いと言える選手が遠藤と比江島のみだけなのにこの順位なのはポジティブな要素と感じる。


・平均2P

平均2PAは昨季が42.6本でリーグ6位、今季は38.6本でリーグ16位にアテンプトと順位が大きく下落。

平均2PMは昨季が22.5本でリーグ5位、今季は19本でリーグ21位に成功数と順位が大きく下降。

平均2P%は昨季が52.7%でリーグ10位、今季は49.1%で23位に確率と順位が大幅にダウン。

2Pはアテンプトと成功数、確率の全てが大きく下がっており、3Pの成功数が増えても2Pで3点ほどマイナスとなってしまったのも平均得点が下がったことの繋がっているだろう。

スコットのゴール下でのフィニッシュミスも目立っていたが、それだけではこれほど異常な急落は起きないと思うのでチーム全体で2P確率が悪かったと思われる。

2P%が5割を切るのは相当にまずい。


・平均FG

平均FGAは昨季が64.1本でリーグ16位、今季は63.6本でリーグ20位とアテンプトと順位が下落。

平均FGMは昨季が29.9本でリーグ9位、今季は27.5本でリーグ21位の成功数と順位が大きく下落。

平均FG%は昨季が46.6%でリーグ9位、今季は43.2%でリーグ20位に確率と順位が大幅に下落。

2Pと3Pを見ての通りFGもアテンプトと成功数と確率全てが昨季より大きく減少しており、今季の栃木のオフェンスがかなり深刻な問題だったことが分かる。

逆にFG43%の低さで勝率5割以上を記録しているのはすごい。


・平均FT

平均FTAは昨季が17.3本でリーグ12位、今季は14.8本でリーグ23位にアテンプトと順位が大きく下落。

平均FTMは昨季が12.6本でリーグ11位、今季は10.3本でリーグ24位で成功数と順位が急落。

平均FT%は昨季が72.7%でリーグ16位、今季は69.6%でリーグ21位と確率と順位が大幅にダウン。

FTもアテンプトと成功数と確率全てが順位とともに大きく昨季より下がっており、アテンプトは攻撃回数が減ったので仕方ないとはいえ、元から低かった成功数と確率が更に下がるのは大きな痛手になった、


・平均リバウンド

平均オフェンスリバウンドは昨季が12.1本でリーグ5位、今季は12.4本でリーグ6位と本数は増えたが順位は下がった。

平均ディフェンスリバウンドは昨季が26.2本でリーグ10位、今季は25.4本でリーグ17位に本数と順位が下落。

平均トータルリバウンドは昨季が38.3本でリーグ4位、今季は37.8本でリーグ10位に本数と順位が下落。

順位は下がったとはいえORが増えているのは素晴らしいが、やはりフォトゥがDRを取れないのはDRが少ない要因にもなった。


・平均アシスト

平均アシストは昨季が20.4本でリーグ13位、今季は19.2本でリーグ19位に本数と順位が下落。

フィニッシャーとして優秀だったフィーラーがいなくなったことやスコットのフィニッシュミスなどもありアシストは減ってしまった。


・平均スティール

平均スティールは昨季が6.9個でリーグ11位、今季は5.7個でリーグ23位に個数と順位が下落。

堅守速攻が持ち味だった栃木にとってブレイクのきっかけとなり得るスティールが減っており、リバウンドも減った栃木にとってはブレイクが出しにくくなってしまった。

ファストブレイクポイントが減ったことにもスティール数の減少は関わっているだろう。


・平均ブロック

平均ブロックは昨季が3.1本でリーグ3位、今季は2.6本でリーグ10位に本数と順位が下落。

スコットのブロック数が大幅に減少したのが主な要因だろう。


・平均ターンオーバー

平均TOは昨季が10.9個で少ない順でリーグ3位、今季は10.9個でリーグ5位と個数は変わらないが順位は下落。

上位層が10個台で固まっているため順位はおちたが、個数は少なく上位のままなのでネガティブな変動ではないだろう。


・平均ファウル数

平均ファウルは昨季が18.6個で少ない順でリーグ15位、今季は17.1個でリーグ6位でファウル数を大きく減らして順位も大きく上げた。

ファウルが減ったのは良いことだが、失点が増えているのでディフェンスの強度が下がったのではないかという疑念が出る結果となった。


・オフェンシブレーティング

オフェンシブレーティングは昨季が115でリーグ7位、今季は108.9でリーグ14位に数値と順位が大きく下がった。

各種シュート%があれだけ下がっていれば当然のことだがオフェンシブレーティングも一気に下がってしまった。


・ディフェンシブレーティング

ディフェンシブレーティングは昨季が99.6で良い順でリーグ1位、今季は106.5でリーグ10位に数値と順位が下落。

やはり失点数の増加やファウル数の減少から予想された通りディフェンシブレーティングもリーグ断トツの1位だった所から悪化しており、フィーラーがいなくなっただけの影響ではなさそうである。

今季の栃木はディフェンスもオフェンスも真ん中くらいのチームになってしまった。

以上24項目中、順位が下がったのは20項目もあった。

スタッツ順位の分布は、上位が4個、中位が8個、下位が12個となった。

勝率5割以上のチームなのに下位項目が多く、最下位や最下位付近に位置するものも多い中よく勝利5割以上を達成出来たなと驚いてしまった。

それと同時にメンバーはあまり変わっていないのに優勝チームから中身は大きく変わったのだとも思った。

改善するべき項目は多いが、特に必要なのは2P%とFTAとFT%、DRあたりと感じる。

 

 

​来季編成

 

栃木は今のところ自由交渉リストに喜多川と荒谷、笠井が公示されており、3人とも退団だと思われ、3人とも退団なら妥当と感じる。


継続では高島、村岸、鵤の継続が発表されている。

日本人選手で絶対に残したいのは比江島、遠藤、竹内あたりだろう。

残りの選手は年齢やPTや役割などから考えたらチーム側からしても積極的に残したい選手ではないと思うが、確実に上位互換の選手が獲れる保証もないので妥協的残留になる選手が出るかもしれない。

特にPGは絶対に鵤と同程度以上の選手が1人は欲しいはずなので、ここでまた笠井と同程度の選手が入ると外国人選手でどうにかするしかなくなってしまう。

ただ、個人評で述べたようにアジア枠のヤンがあまり戦力として機能しているとは思えないので日本人PGの獲得が上手く行かなかったらアジア枠でPGを補強してもいいかもしれない。

外国人選手では全入れ替えも考えられるが、全入れ替えはリスクもあると思うので個人的にはスコットを残してジェレットとフォトゥを入れ替えるのがベストだと思う。

スコットは数字を落とし、怪我の状態がどれくらいなのか分からない点で不安要素はあるが、従来通りプレイ出来るのであれば大きな戦力なのは言うまでもないからである。

フォトゥは前述の通りDRが取れない点と、ジェレットはそもそもシーズン中の補強であり、優勝を狙うであろう栃木の3人目の外国人選手としては弱いと感じるという意味でも残すならスコットが適任と感じる。

2人入れ替えるなら1人はビッグマンを獲得すると思われるが、フォトゥとスコットのようにポストゲーマーを2人並べるよりはオフボールタイプのビッグマンと組ませるのが個人的には見てみたい。

もう1人は今季マブンガで始めたようにフォワードで行くのかという点が注目だが、それは竹内とアジア枠がどうなるかで変わってくるかもしれない。

今季編成で失敗したと言える栃木は同じ轍は踏まないと思うので、どのような外国人編成をするのか楽しみにしたい。