シーズン総評第7弾はまさかこの時期に書くことになるとは思っていなかった千葉ジェッツ。


シーズン前総評はこちら『Bリーグ21-22シーズン開幕前総評 千葉ジェッツ』Bリーグ開幕前シリーズ第6弾は千葉ジェッツふなばし。昨シーズンの千葉は念願のリーグ優勝を果たしたとはいえ、外国人編成のバランスが完璧とは個人的に思えなかった。…リンクameblo.jp


​チーム評と個人評


昨季の優勝チームから入れ替えはほとんどなかったが、MVPのサイズやオン3でアドバンテージをもたらしてくれたショーターと大事な選手がいなくなったように見えた。


しかし、サイズと同等のリバウンド力を持ったムーニーやショーターより富樫と相性がいいスミスを連れてくるなど抜群の補強で強力具合は変わらず。


日本人選手もフリッピンの移籍は痛かったが、大倉の復帰もありPTを与えられることを考えたら悪いことではなかった。


結果的に今季もメンバーの充実ぶりは凄まじく、単純に戦力だけならリーグ1だと個人的には思っており、外国人選手のバランスも昨季良いとは言えなかったメンバーからバランスの良い組み合わせに変わってより強力な布陣になった。


サイズとショーターと入れ替えで入ってきたムーニーとスミスの±が昨季の2人より圧倒的に多いことからもバランスの良さと強力ぶりが窺える。


その補強の結果、昨季よりも12試合も少なかった影響で勝ち星は8減ったが、勝率は上がることに。


特にホームでの勝率は9割越えで僅か2敗とホームで圧倒的な強さを誇った。


個人ではスミスが日本人選手とのマッチアップが多い関係からオン3時は得点を荒稼ぎ。


打った瞬間に「入った」と思わせるような綺麗でブレない2段モーションからの3Pは海外時代から続いていた4割超えを日本でも継続し、C&SでもOTDでも高い確率で決めるのは脅威だった。


開幕前総評ではドライブのスキルについてハイライトからでは判断できない旨を書いたが、ドライブもフィニッシュ含めてレベルが高く、更にバックダウンからの1対1も日本人相手なら難なくこなす万能振りだった。


その万能振りを示すようにチームトップスコアラーでありながら得点以外にもシュートやFG%、FTAと成功率、リバウンドの全てが高水準でTOは僅か1本台で±はチーム断トツ1位と日本の帰化選手ルール下のオン3においては無敵のスイングマンだった。


新加入のムーニーは初めての日本でチーム最長のPTを与えられるなどHCからの信頼も厚く、リーグトップクラスのリバウンド力を持っており、特にORでセカンドチャンスを産み出したりプットバックで得点して相手に精神的ダメージを何度も与えた。


オフボールタイプの選手でありカットやシュートが上手く、特にこのサイズとウェイト、ポジションの選手としては珍しいジャンプシュートで打ってくるミドルは確率が高かった。


ハイポストからデッドローやショートコーナー捌くパスも素晴らしく、ムーニーからカッターへのアシストで得点というパターンも多かった。


リバウンドとFG%でチームトップといい所ばかり目立つムーニーだが、FTは7割を切った所とポストディフェンスで少し苦戦が見られたのが課題かもしれない。


ダンカンは試投こそ多いわけではないが、3Pを5割以上で決めるなどフリーであればミドルもロングも安定して決めてくれる。


ポストプレイからのフックも高確率で、ポストディフェンスでも自分よりサイズのある相手にフィジカルで守り切る場面も多かった。


得点とFTAは減ってしまったが、FG%とFT%とリバウンドは良い数字だった昨季から更に上げており、TOは依然として少ないなど千葉の屋台骨を支えた。


帰化選手のギャビンは昨季が確率的にも効率的にも凄すぎただけに各項目で数字の減少が見られるが、減少してもなお高い3P%やFG%など厄介なのには変わりない。


今季は以前と比べてオフボールでのプレイがかなり増えたような印象だった。


日本人主力選手では富樫が日本人トップの平均得点を記録しているが、3Pは平均アテンプトがキャリア断トツ最多の7.8本と非常に多いのに確率はキャリア断トツワーストの31.8%と低すぎる数字であり、FG%も初年度以来の3割台転落。


さらに平均FGAもチーム最多の12本なのだが、富樫よりアテンプトの少ない選手で富樫より平均得点の高い選手が千葉には2人おり、ダンカンとギャビンも平均アテンプトが10本程あれば富樫より平均得点は高くなるだろう。


つまり千葉は確率の悪い富樫に圧倒的に打たせているわけであり、わざわざ確率も効率も悪いようなオフェンスをしているとも言え、富樫のアテンプトを削ってその分を他の高確率が見込める選手やFTの貰える選手に与えた方が良かったのではないだろうか。


ディフェンスにおいても富樫が穴として狙われる部分が多く、今季はシューティングであまり貢献出来なかった分そっちの粗が余計に目立つ格好となってしまった。


それでも富樫ファーストでやり続けたHCの判断には疑問符が付くが、アシストは平均1本近く増えており、ゲームメイク力は変わらずリーグトップクラスの力を持っていることを改めて証明した。


その他の日本人選手では原が3P%は大幅に下落したが、ドライブでFTやフィニッシュに繋げることで低い3P%を帳消しにして平均得点は微増。


佐藤と西村はフリーであれば高い確率で3Pを沈めてくれ、大倉はリングにアタック出来ることを示した。


​チームスタッツ比較


比較に入る前の大前提として、千葉は他のチームと比べて試合数がかなり少ないので数字の信頼性という意味では他のチームより薄いということは念頭に。


まず平均得点は昨季89点でリーグ2位、今季は88.1点で2位と順位は変わらず上位をキープしたが得点自体はペースが下がったことや富樫の確率などの影響もあったせいか減少。


平均失点は昨季78.2点でリーグ6位の少なさから今季は76.7点で6位と順位は同じながら失点自体は大きく減少。


得失点では昨季でもプラス10.8の大量貯金を抱えていたが、今季はプラス11.3で更に圧倒的な貯金となっており、バランスの良い外国人選手を集められた効果が数字上は出ている。


3Pでは昨季23.8本でリーグ平均9位のアテンプトから確率34.9%で7位と上位と言える良い確率で決めていたが、今季は平均26.7本でリーグ同率4位のアテンプトから36.8%で確率3位まで大きく上昇。


アテンプトを増やして確率も上げる理想的な結果になったが、圧倒的に本数の多くて確率の悪い富樫がいても上位かつ高い確率なら尚更富樫の部分が従来通り決まっていればという惜しさはあるかもしれない。


ペイント内決定率では昨季平均60.1%でリーグ6位、今季は3PAが増えたのでペイント内でのアテンプトは減ったが平均60.3%で5位と確率と順位の両方が上昇。


FGは昨季リーグ4位のアテンプトから平均47.8%で確率5位、今季はリーグ同率11位のアテンプトから平均47.8%で確率5位とアテンプトが減ったが、確率と順位は維持した。


FTでは昨季平均22.7本でリーグ2位のアテンプトから平均77.6%で確率も2位と多く貰って多く決める効率的なFTの使い方でFTが大きな得点源になっていたが、今季は平均20.4本でリーグ2位のアテンプトから平均78.1%で確率3位。


確率自体は上がったが、試投が減ったために昨季ほどFTでの得点は多くなかったとは言え、リーグトップクラスにFTを上手く使っているチームに変わりない。


ORでは昨季平均12.9本でリーグ4位の多さだったが、今季は平均11.6本でリーグ8位と本数と順位で後退。


特に本数で平均1本以上減ってるのは痛く、これが先述したFGAの減少にも繋がっているのだろう。


トータルリバウンドでは昨季平均40.8本で唯一40本超えでリーグ1位の強さを誇ったが、今季は平均38.2本で5位とこちらも本数と順位両方が下落。


ムーニーが入ったとは言えサイズの移籍が効いているのかもしれないが、ムーニーが来たのでこれくらいの減少で済んだと考える方がいいかもしれない。


アシストでは昨季平均21.2本でリーグ6位、今季は平均22.7本で4位とショーターと違いC&Sの得意なスミスやオフボールタイプのムーニーが入ったこともあり本数と順位の両方が上昇。


TOは昨季平均11.9個でリーグ8位の少なさだったが、今季は平均11.6個でリーグ6位にまで減少。


ファウル数では昨季平均20.1個でリーグワースト7位の多さだったが、今季は平均19.7個まで減らしたものの順位はワースト3に悪化。


単純にファウルの数が多いだけで悪いこととは言い切れないが、相手に戦略外のFTを与える可能性も高くなってしまうのでもう少し減らしたいところかもしれない。


オフェンシブレーティングでは昨季112.7でリーグ1位、今季も113.5で1位と数値を上げた上で1位をキープ。


個人評で富樫の確率の悪さとアテンプトの多さに触れたが、それをものともせず凄まじい効率を叩き出せるのはやはりバランスの良い外国人選手が揃った効果が大きいと推測。


富樫が従来通りだったらどれだけ数値が上がったのだろうか。


ディフェンシブレーティングでは昨季99でリーグ4位、今季は98.9に微減したが順位は6位に転落。


千葉の数値自体はほとんど変わらないので上位の基準が上がったと見るべきだろう。


ここまで見てきて昨季もそうだが、千葉はオフェンスの項目で依然として多数が上位であり、かと言ってディフェンスの項目も「もう少し上げられるかも」程度で、ここで取り上げた項目からは弱点という程のものは見当たらない。


強いて挙げれば、強力な帰化選手がいるのでリバウンドは攻守どちらもメンバー的には少ない方なのかもしれない。


​編成


千葉は現時点で藤永、赤穂、大宮の退団が確定。


藤永と大宮は妥当かつほとんどの人が予想していた通りだと思うが、赤穂は意外だった。


素材としては間違いない選手なので千葉にはもう少し面倒を見て欲しかったが、千葉が即戦力を欲した故の放出か本人希望の退団か分からないので何とも言えない。


帰化選手と外国人選手は去就未定だが、まずギャビンは千葉が手放す理由もギャビンが出る理由もないと思うので残留と見ている。


そして外国人選手に関しては結果こそ出せなかったが、ギャビン含めて強力かつバランスの良い布陣なので個人的には変える必要性が余り感じられない。


特にスミスはプレイの幅が広く絶対的なアドバンテージになっているのでギャビンが移籍するような事態が起きない限り千葉も絶対キープしたい選手だろう。


外国人選手で変えるとしたら高齢のダンカンかもっと強力な選手を求める意味でムーニー、あるいは両方というのが考えられるが、どちらも数字とプレイ両面で素晴らしかったので難しい選択になっている。


個人的には変えるなら年齢的に若いムーニーはキープして高齢のダンカンを変えるのがベストだと思うが、果たして。


日本人選手では二上含めて良い選手だらけで千葉的にもキープしたいと思われる選手が多いのでほとんど残留だと思っているが、ダンカンと同じく高齢の西村は僅かながら移籍もあるかもしれない。


珍しく早い段階でシーズンが終わってしまった千葉がオフにどういう仕掛けをして驚かせてくるか楽しみにしたい。