国内シーズン総評第5弾は大型補強で挑んで注目を集めた広島ドラゴンフライズ。


開幕前総評はこちら『Bリーグ21-22シーズン開幕前総評 広島ドラゴンフライズ』Bリーグ開幕前シリーズ最後は群馬、名古屋、島根とともに個人的注目チームの広島ドラゴンフライズ。広島も群馬や島根同様に人件費を増やして着実にチーム改革を進めてお…リンクameblo.jp


​チーム評と個人評


昇格1年目で悔しい思いをした広島は数人残して半数以上を入れ替えるという大改革を断行。


その甲斐あって昨季より2試合多くなった試合数で20勝の上積みに成功し勝率も5割以上を達成。


西地区かつ最下位からスタートしたので伸び率では有利とは言え白星増加数でリーグトップは見事。


ただ、せっかくディフェンスに重きを置くミリングを招聘したのにディフェンスの苦手なメンバーを集めるなど、HCの目指すバスケとGMの選択でのミスマッチは否めない。


勝率5割以上なのに得失点がマイナスになっていることからもディフェンスが弱点なのは明らかだろう。


さらにオフェンスでもインサイド偏重の傾向があり、開幕前総評に書いたジャクソンとエチェニケの部分での不安要素がやはり露呈してしまった。


これは外国人選手編成のアンバランスさによって起きる問題であるので、攻守でバランスの良い編成が今季は求められる。


チームが資金力もありGMの選手獲得力も素晴らしいが、今季は良い選手を取っただけという感じになってしまったので来季は攻守両方でバランスも考えた編成かつHCの方針とのすり合わせを出来るかが鍵かもしれない。


個人ではメイヨが高確率のシュートやカットやダイブなどオフボールでの活躍が特に目立ち、チームトップのスコアラーとして得点面で大きく貢献。


ただ、昨季は8割くらい決まってるんじゃないかと思えるほど打てばほぼ入っていたミドル精度は流石に継続出来なかった。


また、大学時代から8割以上をキープしていたFTも初めて7割台に落ち込んでしまった。


しかし、昨季から平均FGAが4本も減ったのにFTAは僅か平均0.3本しか減少しておらず、オフェンスの機会が減ってもドライブやポストプレイ、ダイブやカットでリムアタックすることでFTは昨季より効率よく貰えた。


アシストが増えたのもプラスだが、元々強くはないリバウンドが減ったのと、やはりディフェンスでは中でも外でも苦戦が見られた。


ジャクソンはポストプレイやダイブで得点するのは昨季から変わらないが、PTもアテンプトも渋谷時代から減ったのに伴って各項目で数字は下がり傾向。


FT%とDRは上がったが、窮屈なインサイドで無理矢理ポストプレイを仕掛けるが故にダブルチームへの対応が上手く出来ず、TOは依然として多かった。


エチェニケも実力ある外国人選手や同タイプの選手が来たことで取って代わられ、PTもスタッツも大幅に減少、昨季チームトップのスコアラーだったのに今季は日本人選手2人よりも平均得点が低い結果に。


ジャクソンと組めばオフェンスが重くなり、メイヨと組めばディフェンスが厳しくなるなど広島編成のアンバランスさを象徴するような形になってしまった。


ジャクソンとエチェニケは互いに食い合うような感じだった。


帰化選手のケネディはアテンプトの減少に伴い得点も大幅ダウン。


3P%も下がったが、それでも36%と良い数字であり、帰化選手がこれだけ決めてくれるのは大きい。


ミドルも意外と良く入り、ミスマッチであればポストアップから得点するなど外国人選手のバランスの悪さがいくらかケネディで中和されていたように思う。


FTも試投数は少なかったが9割で決めており、過小評価されている帰化選手だと感じる。


主力日本人選手では寺嶋が元々キレのあったドライブ以外にもシュートで大幅な飛躍が見られ、PTとスタッツの多くで向上し既にリーグトップクラスのPGと言っても過言でない選手に成長。


ジャクソンやエチェニケを差し置いてメイヨに次ぐ平均得点を上げるのは完全に予想外だった。


辻はここ数シーズンの川崎時代よりボールを持つ時間が増え、ハンドラーも担当しながらサンプルサイズの少ない選手を除いてチーム断トツの±を記録。


シューターであるがプレイメイカーとしての能力は依然として高く、今季広島外国人選手よりもオフボールからの得点を得意としていた外国人選手に囲まれていた昨季川崎時よりもアシストが増加。


一方、シューティングではフリーで外すシーンがかなり見られ、本来は3P38%以上で決められる選手だと思うので確率をもう少し上げてほしいところ。


また、オフボールディフェンスでマッチアップから目を離したり、スイッチしなくてもいいような場面でもチェイスするのが面倒なのか安易にスイッチする場面が目立つ。


当然味方もスイッチするとは思っていない所で指示されても遅れてしまい、そこから失点に繋がるシーンが散見された。


そんな横着とも言えるようなディフェンスでの姿勢は勿体無いように感じる。


マーフィーは怪我で半分以下の出場になったが、実力ある選手が多くやってきたこともありアテンプトも得点も大きく減少、なかでもFTが5割を切ったのが非常にまずい。


開幕前総評に書いたように辻の控えで2番起用で固定されると思っていたので3番起用は意外だった。


2番でサイズのアドバンテージを活かす方が良いように思うが、来季も3番起用するのか注目したい。


​チームスタッツ比較


まず平均得点は昨季76でリーグ16位、今季は平均80.7で10位まで数字も順位も大幅にアップ。


優秀な帰化選手もいたので外国人選手のバランスが良ければもっと得点も高かっただろう。


平均失点は昨季86.8でリーグ19位と多すぎる失点だったが、今季平均81で12位まで失点を減らして順位も大きく上げた。


得失点も昨季マイナス16.8から今季マイナス0.3まで持っていき、マイナスのままとは言え大きく改善に成功。


あれだけディフェンスの苦手なメンバーが集まってここまで失点を減らしたのは流石ミリングだが、勝率5割以上のチームでは失点最多であり、今のメンバーではここが限界かもしれない。


3Pは昨季リーグ17位の平均アテンプトから34%でリーグ11位とアテンプトは少ないながら確率は最下位チームということを考えるとまずまずだった。


今季はリーグ21位の平均アテンプトから37%で意外にもリーグ2位の高確率を記録。


これだけ高確率で決められるのにアテンプトが少ないというのは効率的ではないし勿体無いので、来季は確率を維持しつつアテンプトを増やしたいところ。


ペイント内決定率では昨季平均55.6%でリーグ17位、今季56.9%で12位まで確率も順位も上昇。


しかし、今季はジャクソンとエチェニケというペイント内で仕事をする選手が揃っていたにしては上げ幅は意外にも少ない。


今季のペイント内でのアテンプトはリーグ6位の多さであり、ジャクソンとエチェニケがいることでペイント内のアテンプトがどうしても増えてしまったとも言え、固められ窮屈でもインサイドを攻めざるを得なかったことで強力なビッグマンが2人いても中位の確率だったと思われる。


FG%では昨季平均44.8%でリーグ15位、今季は47.4%で6位まで数字も順位も大きく上昇。


ただ、これに関しては3PAが少なくて高確率だったことも関係しているので、来季3PAが増えた時にどうなるか注目したい。


FTでは昨季リーグ13位の試投数から平均75%でリーグ8位だったが、今季はリーグ6位の試投数で74.2%の12位に。


FT数自体が昨季より増えた分だけ確率も下がりやすいので、確率が下がってしまったのは自然かもしれないが、FTの得意なメイヨが8割を切ってしまったのがここに響いた。


リバウンドではORが昨季平均9.4本でリーグ14位、今季は10.2本で14位と順位は同じだが、本数が増えていることとチーム数が増えたことを考えれば上向いたと見て問題ないだろう。


トータルリバウンドでは昨季平均33.6本でリーグ19位、今季は平均35.8本で17位まで本数も順位も上昇した。


ただ、帰化選手がいても下位なので課題なのは変わりなく、今季はリバウンドが強いわけではないメイヨが外国人選手中トップのPTだったことがリバウンドでの伸び悩みに影響したと推測。


平均アシストは昨季平均20.3本でリーグ9位、今季は20.8本で11位と本数は増えたが順位は下がるという結果に。


昨季よりシュート確率が上がった分アシストも微増したが、ポストゲーマーが2人いたために思ったより伸びなかったというところか。


TOは昨季平均13.8個でリーグ最下位、今季は13.2個で17位まで数字と順位で改善が見られたが、依然として下位かつ多いので来季も引き続き課題だろう。


ファウル数は昨季平均18.4個でリーグ10位の少なさだったが、今季は18.4個で同数ながら順位は13位に後退。


オフェンシブレーティングは昨季97.5でリーグ18位、今季は104.3で10位まで数字と順位が大きく上昇。


バランスが悪かったとは言え実力ある選手が多く来ただけあって上げ幅が凄まじいので、来季バランスの良い編成が出来た時ここからどれだけ伸びるか楽しみだ。


ディフェンシブレーティングは昨季111.4でリーグ19位のボロボロ状態から今季は104.8で12位までこちらも大幅に改善。


繰り返しになるがディフェンスの苦手な選手が多く、試合でもディフェンスの悪さから失点するシーンが数多く見られてもこうやって数字で明らかに良くなってるのは見事。


ここもバランスの良い編成のなった時に更に良くなるのが見込まれるのが明るい材料だろう。


項目で見るとリバウンドと3PAの少なさが個人的に来季へ向けての1番気になる部分だと思える。


​編成

散々バランスの悪い編成だと今季の広島について書いてきたが、現時点で寺嶋、辻、マーフィー、メイヨの継続とジャクソン、エチェニケ、ケネディ、柳川の退団が確定している。


個人的に意外だったのはケネディの退団とメイヨの継続であり、どちらも予想していなかった。


チームスタッツの項目でも書いたが、ケネディは高確率でシュートを決めてくれるのと、帰化選手なので日本人とのマッチアップが多い3番起用では大きなアドバンテージを広島にもたらしていた。


広島側から出したのか、交渉の末の退団なのかは不明だが、どちらにせよケネディ以上の帰化選手やアジア枠選手を取れない限り広島には痛手かもしれない。


メイヨは得点力やシュート力は魅力的であるが、広島の弱点であるディフェンスとリバウンドの観点から継続はないと見ていたので意外だった。


広島は勝率5割以上のチームで外国人選手を総入れ替えしてもいい唯一のチームだと思っていたので、プレイスタイルや選手の特徴から他の外国人選手の選択肢を狭めかねないメイヨ継続は編成を難しくするのでリスクが高いように感じる。


日本人選手では退団選手も継続選手も妥当で予想通りかつ残したい選手を残せている順調なオフシーズン序盤と見て間違いなさそうである。


残りの去就未定の選手も若い選手や短いPTで活躍した選手が多いので入れ替える必要をあまり感じない、広島としてもほとんど残したいのではないかと見ている。


ただ、青木だけはPTが思っていたより伸びなかったことと井出よりも年配であることから他の選手よりも入れ替え可能性が高いように思える。


資金力のある広島なので新外国人選手でランクの高い選手を持ってくるか楽しみであり、サプライズが起きなさそうな日本人選手の部分で何か起こしてくれることを期待したい。