西日本新聞に掲載されてました。


戦前路線や寝台特急「なは」紹介 九州・沖縄の鉄道史 平和・環境考える契機に



福岡・朝倉エリアの情報 +++ 甘鉄エージェンシーブログ


かつて沖縄には複数の鉄道があった。しかし、太平洋戦争末期の沖縄戦で破壊されて以降、再開されることはなく、市民の記憶からひっそりと消えた。


そんな沖縄の鉄道事情を九州と絡めて描いた「沖縄・九州 鉄道チャンプルー」(弦書房刊)が今月、出版された。

著者はいずれも鉄道エッセイストで、那覇市のゆたかはじめさん(80)と福岡県香春町の桃坂豊さん(48)。2人の「ゆたか」さんは「効率、高速化している鉄道だが、本来の意味を見つめ直すきっかけにしてほしい」と語りかける。

 


著作は2人による軽妙な対談とエッセーを中心に収録。鉄道の戦禍や、沖縄県民が沖縄の本土復帰を願って名付け、九州と関西を結んだJRの寝台特急「なは」(3月に廃止)、2003年に那覇市で開業したモノレールなど、今昔の話題が盛りだくさんだ。

 

沖縄の鉄道史では、那覇‐首里間を走っていた九州・沖縄で最古級の路面電車や、大正期に昭和天皇(当時は皇太子)の訪問に利用された旧沖縄県鉄道を紹介。また、沖縄戦直前に100人を超える日本兵らが犠牲となった列車爆発事故も生存者の証言を交え記した。

 

沖縄戦での無数の弾痕が今なお生々しい旧県鉄道線跡の写真を掲載しながら、紀行作家の故宮脇俊三氏が沖縄で「鉄道考古学」の必要性を説いたエピソードも載せた。

 沖縄では長期の鉄道不在と車社会の浸透で、鉄道への関心は薄く、県民の願いを乗せた「なは」でさえ「廃止が決まるまで話題にも上らなかった」(ゆたかさん)。一方、九州では新幹線開業などでローカル線の衰退、廃止が相次ぐ。


 「廃止すれば復活は厳しい。ただ、沖縄の事情は異なる。鉄道は地域の歴史、文化、風土そのもので、平和と繁栄の象徴でもある。環境問題が叫ばれる今こそ、その貴重さを再認識すべきだ」と2人は話す。


 「鉄道チャンプルー」はA5判、160ページ。定価1995円(税込み)。全国書店で販売している。