2009年1月1日のニューイヤー・コンサートでウィーン・フィルを指揮したバレンボイムについて少し触れてみようと思います。
 彼の親しい友人であるパレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードに共鳴し、1999年にウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の創設に加わったことがありました。このことは以前、NHKの特集番組でテレビで放映されたことを思い出しましたが、これは毎年、イスラエルとアラブ諸国の才能あるクラシック音楽の演奏家を集めて結成されるオーケストラである。
 同管弦楽団が結成された際、指揮者選びをめぐって楽団員が糾合した時、アラブ側を納得させるために担ぎ出されたのが、他ならぬバレンボイムであったわけである。
 これはバレンボイムが、たびたびイギリスやアメリカにおいてパレスチナ寄りの発言をしてきた過去や、歯に衣着せないイスラエル政治批判、エドワード・サイードとの交友関係、イスラエル本土での演奏よりもイスラエル占領地区での積極的な慰問演奏がアラブ側に評価されてのことであった。バレンボイムとサイードの2人は、この活動に対して、「諸国民の相互理解の向上」に寄与したとして、2002年にスペイン王室より「アストォリアス公褒賞」を授与されたのである。
 2004年5月、バレンボイムは、イスラエル国会であるクネセトのセレモニーみおいて、ヴォルフ賞を授与された。その時、バレンボイムは政治状況について、次のような持論を唱えているのでそれを記しておきます。

  心に痛みを感じながら、私は今日お訪ねしたいのです。征服と支配の立場が、はたして  イスラエルの独立宣言にかなっているでしょうか、 と。他民族の原則的な権利を打ちの  めすことが代償なら、一つの民族の独立に理屈というものがあるでしょうか。イスラエ  ル国家は、社会正義に基づいて実践的・人道主義的な解決法を得ようとするのではなし  に、揉め事にイデオロギー的な解決を図ろうとたくらむがごときの、非現実的なうつつ  にふけっていてもよいものでしょうか。

 以上の発言に対して、イスラエルの元首と数名の国会議員から、バレンボイムは名指しで非難されている。
 現実の世界情勢においても、このイスラエルとパレスチナ問題は以前として好転の兆しなどは見えないようである。とても考えさせられる問題で新年早々の楽しい音楽会の裏に潜む苦しい悩みを抱えたままのバレンボイムの心境を慮るところである。