お見合いばかりをしていたわけではないが、とうとう24歳になった。

 この年は不思議なことが多かった。まず最初に、何と男が周囲に現れた?のである。

 実は私の周りは男だらけであった。兄弟三人がいるので、私は多分男の子の様に育っていると思う。いわゆる女らしくないし、しおらしくもないし、がさつである。小、中学と登校時には、口元からはみ出した歯磨き粉を手で拭いながら登校するような子だった。

 

 近所の幼馴染の男の子達とは会話も有ったが、関係性はまるで姉と弟の様な感じで、決して男女の仲ではなかった。なにしろ彼らは、私が韓国人で一風変わった女の子だと思っているので、仲良くしても深く踏み込んでは来ない。私から見れば、私の兄弟は優しく大人しいと思っているが、周りの男の子達は、どこか恐れるというか、おっかながってある線以上は近づいて来ない。何か私と事あれば、後ろの兄弟が出てこないかもと恐れているようでもあった。特に末弟はやんちゃで、誰も私に手を出さないのだった。

 

 ところが、24歳の誕生日を過ぎた頃に、一通の手紙が届いた。何と高校時代の同級生で、この彼からは高校二年生時にカバンの中に手紙が入っているという、古典的な誘いを受けていたのであるが、二、三度接触は有ったが、特に発展は無く、しかし手紙には、”二浪して、この春無事大学を卒業したので、付き合いたい”と書いてある。

 はてな?私は首を捻った、この彼の真意が分からない。素直に彼の好意を受け取れないのである。実は、この私の第六感は当たっていて、彼と再会することで、謎は解けるのだった。

 

 私は、どううぬぼれたって、男性に一目惚れさせるような”タマ”ではない。高校時代から、それが疑問で彼には近づいていない。

 初夏に、彼から電話が有って、卒業した高校の近くで会ったのだが、開口一番彼は「オーエル然として来たな」なんて嫌味っぽく言う。私に少しがっかりしたみたいで、それなら私がどうしていたら気に入ったのだろうかと怪訝に感じた。しばらく近況を述べ合って、次にどこかへ行こうと言う誘いを断わって別れようとすると、彼は突如私の韓国名を口にして、私は思わず彼を見つめたものだった。そうか、彼は私が韓国人なので近づいて来たのかと、ようやく納得したのだった。そう言えば、彼は「変わった女の子が好きだ」なんて、ヒントも言っていたのに私は気づかなかったのだと、ほぞをかんだ。

 

 彼は私との付き合いを望み、手紙を何度か寄こしたが、私は虚脱感に襲われて断りの返事を出した。私はお坊ちゃまの暇つぶしには付き合えない、という心境だった。彼はいわゆる素封家の三男坊で、私はたまたま彼の母を見かけたことが有るが、いかにも上流階級の令夫人という趣であった。少しいびつに育っている私には、反発心しか湧いて来なかったのである。

 

 その年の初秋に、今の夫との見合い話が有って、結果として、この見合いが最後の見合いになって、私はかつて予期したとおりに、貧しい在日韓国人の男の元に嫁ぐことになるのだった。それが自分の運命だと信じていたし、又望んだ事でもあったのだ。