ブログを書いて行くうちに色々思い出して苦笑いの連続である。何度も見合いを繰り返して、今の夫と結婚したのだがそれほどの相手だっただろうか。夫の方は二回見合いをして、本人曰く「二回とも釣り合わない金持ちの娘、一人は焼肉屋の娘で、もう一人も金持ちみたいだった」と、さも私が貧乏人の娘だから、結婚したみたいに言うが、夫はあえなく二度とも先方から断られたので、私との見合いは背水の陣の様であった。と言っても当人より、姑がねじり鉢巻きと言おうか、大層な頑張りようで、私にプロポーズしたのは、実は姑だったのである。私のながーい見合い話の結果はそんな所だったが・・・

 

 さて私の見合い話だが、段々嫌気が差してきて「見合いは一日にまとめて、午前と午後とに分けて二回分を一日にして欲しい」なんて、母に無理難題を言うようになった。まるで、仕事を消化するような気分である。

 

 ある時それなら、仕事帰りに見合いをするように頼んだと言われて、夕方会社の帰りに近くまで車で迎えに来ると言う。

 同僚の女性二人と会社を出て「今から見合いがある、ほら、あそこに停まっている車がそうらしいから、今から行って来る」と言うと、彼女たちが目を丸くしている。彼女たちに笑顔で手を振り、車に近づくと、助手席から中年紳士が降りて来て、後部座席のドアを開けてくれたので乗ったが、見合い相手は運転席なので顔が見えない。

 

 「君子大道を行く、ですぞ」と助手席の男性が厳かな口調で言ったのが印象的だったので覚えている。今夜の仲介人は珍しく男性で、声音から緊張が窺えて私も神妙な顔をして座っていた。

 君子大道のせいか、広い道を通って着いたのが、まだ新しい一軒家だったのには驚いた。中年男性の話では、結婚するために家を買っていて、目下花嫁募集中の彼は一人で住んでいるそうだった。当の相手より家が気になった私だったが、彼がドアを開けた途端に、二匹の子犬がけたたましく吠えながら駆け寄って来て、私は心臓が止まる思いだった。実は私は犬が苦手というか怖かったのである。中年期に犬を飼ってからは、大の犬好きになったが、若い頃は犬が怖かった。昔は犬は愛玩動物ではなくて、家の前に鎖でつながれた番犬ばかりで、犬たちも自分の役目を知っていて、来る人には必ず吠えたり唸ったりしていたので、犬は怖い動物だったのだ。

 

 犬が怖くて家の中に入れない。その後の事はもう忘れたが、ほうほうのていで、その家を出たのを覚えている。当の見合い相手の顔を見たのか見なかったのかも覚えていない。時代的に珍しい新車の自家用車に新築の家だったが、はっきり覚えていない。先方だって、まさか犬を怖がるだろうとは思っていなかっただろうからびっくりしたに違いない。

 

 何だって夜なのに、いの一番に家まで連れて行ったのだろうか、私は仕事終わりで疲れてお腹もペコペコだった。そこに犬である。

 家が売り?だったのか。とにかく、とんだ目に遭った見合いであった。