テレビを観ていると、時々珍しい名前を見かける。やたらめでたい名前である。例えば宝なんてありがたい漢字が入っている。事件に巻き込まれた人もいるが、今朝は医師の名前に入っていた。  

 私の考えでは、恐らく中国系の人たちの帰化名(間違っていたらごめんなさい)と思われる。私の浅い知識の中でだが、そんなに日本人の名前に宝やらその他のめでたい名字は無いと思う。

 

 私の知人に中国から日本に帰化した人がいて、森という名字にしているが、彼女の説明によると、中国では木の多い環境に住んでいて、夫がその故郷を忘れないようにと、木が三つの森姓にしたらしかった。彼女の家族は夫婦二人で十数年ほど前に来日して、日本で子供を産んでいて、いわゆる通称名は無くて、帰化するまで中国名だったらしい。

 

 一般的に帰化の際は、俗に言う通称名を勧められるが、又ハンコや名刺なんかも通称名で作っていて、特に在日韓国人の二世は、通称名が子供の頃からの自らのアイデンティティそのものなので、迷うことなくその名前を日本名にしている人が殆どである。

 

 私には、結婚前には韓国名と日本名、いわゆる”二つの名前”なんて、日本人に揶揄されるように二通りの名前があったが、結婚して夫の通称名が加わった。韓国名はそのままで、韓国では結婚しても、夫の姓を名乗ることは無いからである。

 人生で、三つの名前を持ったことになる。

 

 柘植の木で作った韓国名のハンコを持っているが、韓国の姓はひともじで、名前がふたもじなので、三つの感じが彫られている。このハンコは時々使ったものである。もう今では何に使ったのか定かではないが、必要だった時も有って、家族全員柘植で作った韓国名のハンコを持っていた。ちなみに15歳ぐらいになると外国人登録証と言って、くすんだうぐいす色の手帳も持っていたし、指紋押捺の経験もある。

 よくよく考えてみれば、不思議な人生を歩んで来たような気がしないでもない。

 

 ところで、帰化した中国人の森さんだが、実は中国籍に戻したいと悩んでいる。何故なら、故郷に帰っても、ビザの関係で長期の逗留が出来ないからである。両親が健在なので、そこで一緒に暮らしたいそうなのだ。行ったり来たりは費用の問題も有って、そうそう頻繁には行けない。

 中国籍に戻すには、中国に対して尽くす、という実績が無いと、なかなか変えることが出来ないと嘆いていた。

 私たちの様に日本で生まれて育っている身には、本国意識は無いし、むしろ日本が本国という意識だが、大人になって移って来た人たちとは気持ちが違う。

 何だか、切ない話ではある。