まるで落語の三題噺みたいだが、現在置かれている、在日韓国、朝鮮人の立場が三種類あることを示している。

 勿論南は韓国籍、そして北は北朝鮮籍で、帰化は日本籍である。ちなみに私は帰化しているので、夫も息子たちも日本籍である。が、誰も自分が国籍は日本だからと言っても、日本人と思っていないのが可笑しい。30代半ばまで韓国籍だった私たち夫婦は当然なのだが、三世の息子たちも自分は韓国人だと思っていて、孫の親である次男は日本人と結婚しているが、自分の子供たちの事を日韓のハーフだなんて言っている。

 

 民族の違いは理屈ではない、と聞いたのは息子が中学時代に授業参観が有って、丁度社会科の授業だったが、先生が「民族の違いは理屈ではない」と言ったのが印象的で、真に慧眼だと感じたものである。世界のあちこちで、民族戦争が起こるのは、むべなるかなと思うのである。

 

 日本生まれで日本育ちで日本語しか知らないし、無論日本の公立学校で学び、周りは日本人だらけで、日本の風習と文化の下で生きて来ているのに、日本人とは考えずに韓国人だと考える、その根拠は何なのか?不思議である。両親が韓国人だからなのか、生れた時の国籍が韓国なのだからなのか、よく分からない。そして周りの人たちも、私たちを韓国人だと思っているのである。肌の色も髪の色もほぼ同じであるのにそう思っている。

 しかし一旦街中の群衆に交じれば、誰も私たちを韓国人なんだと認識しない。それが、韓国名を書いた書類なんかを差し出せば、急に相手は外国人扱いで、私の経験だが、母子手帳に韓国名を書いて出したところ、「ニホンゴ、ワカリマスカ?」なんて、妙な抑揚の日本語で尋ねられて、驚いたものだった。

 

 ちなみに食習慣は一番父母から受け継ぎやすいらしく、我が家は韓国料理というか、韓国料理もどき?が大半である。煮魚はニンニクを入れて炊くし、温野菜はチョジャンと言って、コチュジャンを酢で溶いたものに付けて食べている。息子の病気のせいでもあるが、食卓には野菜料理がいっぱい並んでいるが、日本風のお浸しは殆ど無い。海鮮チジミなんて定番料理で、キムチは漬けはしないが、コリアタウンで時々買ってくる。身体の為に塩分が多い漬物類はなるべく避けているので、大量に漬けることはしないのである。

 ムゥと言って、一見こんにゃく風の豆腐みたいな韓国料理も大好きだが、一世が殆どいない今はコリアタウンで探すのが困難で、先日は探し歩いた末にようやく見つけた。これなんかは日本人の知らない韓国料理だろう。日本の中の韓国料理も様変わりして、今では食べ歩きしやすい、おやつみたいな物ばかりが店頭に並んでいる。

 

 南、北、帰化なんて言っても、根っこは一緒なんだから、どうってことない話ではあるが。