私にはお金は自ら稼ぐべきだという、強迫観念があって、それが契機となって実は様々な資格を持っている。そんなに大層な物は持ってはいないが、何かを習うとなるべく資格試験を受けることにしている。芸は身を助けるとばかりに資格を取りに行くのである。

 

 ところで、時々不思議な感覚に襲われることがある。結婚して二年あまり経った頃に、アパート暮らしなのに家財に何故か火災保険を付けたくなって、知人を介して保険セールスのおじさんがやって来たが、狭いアパートに大した家財がある訳でもないし、おまけに夫がそんな不要な物をとふくれっ面で眺めていたが、それでも私は身をすくめながらも、最低限の保険を掛けたのだった。

 その保険を掛けて間もなく、夫のかつての知人が電話を掛けて来て、新しく商売を始めたので手伝わないかと言うので、夫の母の反対を押し切って、引っ越しまでしてその知人の元に行くことになった。その知人がアパートを手配してくれていて、ひと月が経ったある日、そのアパートの別室から火が出たのである。私は生後七か月の息子を乳母車に乗せて避難したが、あれっ、私、確かに火災保険を掛けていたよね?なんて思い出したのだった。二か月分掛けていたのである。金額にして数千円だったが、何これ?この日の為に神様が教えてくれたの?なんて奇妙な思いが湧いて来て、茫然としてしまった。

 家財は全然燃えず、消火活動の結果の水損と煙損だったが、箪笥の奥の方が少しくすぶったぐらいなのに、保険金は百万円あまり出たのである。数千円が二か月で百万円になったのにはびっくりした。

 誰が、まさか保険を掛けて二か月後に火災に遭うと予測できただろうか。

 

 ある時建設国債の記事を見て毎月積み立てたのだが、それも時代的に良かったせいか、かなりの利子をもたらしてくれた。

 まだある。実は夫が失業していて、失業はしょっちゅうあるが、その時も新聞で保険会社の募集を見て二人で参加して、ついでに夫の癌保険を掛けたのだが、10年後に夫の癌が発覚して、保険金を貰っている。

 火災保険を掛けた時には散々嫌味を言っていた夫は例の火災保険を貰った頃から「あんたには、お金の神様が付いている」なんておだてるのが可笑しい。

 その後、私は職業訓練校で簿記やパソコンの勉強をして、数種類の資格を取るのだが、卒業前に夫が大手企業内で自営することになり、私が経理を担うことになるのだが、時代はバブル経済真っただ中で、税理士に委託することなく自力で経理をしたのでかなり儲けることが出来たし、法人化も私は法務局で自ら申請することが出来たのだった。余談だが、時期的にオーム真理教が法人申請をやたら出しているとテレビニュースになっていた頃である。

 まるで、夫の自営を見越して、神様が簿記とパソコンを習いに行きなさいと言わんばかりの様であった。

 

 在日韓国人として苦労をして来たのだから、少しおまけをあげようかなんて、奇特な神様が時々助けてくれるのかな?なんて思うがどうだろうか。