おかしなもので、子供の頃の正月には、着物を着て、ぽっくりを履いたりしていた。子供心にわーいお正月だと気持ちが高揚して、嬉しかったのを覚えている。母は日本生まれで日本の国民学校を出ているので、我が家は表面上は日本人風に暮らしていた。

 周りはほぼ100パーセント日本人なので、自分が韓国人なんだとは考えたことが無かった。ただ父と祖母は見るからに日本人ではなく、我が家は特殊な環境だと、子供の本能は知っていたが。

 

 大人になって、同じ在日韓国人でも、我が家の方が少数派の環境で、朝鮮人や韓国人ばかりで集落を作って、身を寄せ合うように暮らしている人たちの方が多いと知ることになる。

 

 夫は私の環境が特殊で、在日韓国人であると言うことに抵抗感が少ないと分析するので、なるほどと思ったりもする。私は妙に韓国に対する憧れみたいものが強くて、中学時代には韓国語を習いに行ったりしていたが、夫の育った環境からでは分からないと言う。かえって、在日の人ばかりの環境ではそういった韓国語とか韓国の風習を子供たちは忌避する傾向が強いと言うのである。

 

 私は結婚式にはチマチョゴリ姿で、日本人の友達を10名ほど招いているが、自分が韓国人だということを隠したりするなんて考えたことが無かったが、それも少数派だと夫は言う。

 友達の一人に「あんたは韓国人だということに誇りを持っているのね」なんて、言われてびっくりした。韓国人だという誇り?考えたことも無かったなあ。

 

 むしろ、ある時は韓国人、ある時は日本人、まるでコウモリの様に、ある時は哺乳類、ある時は鳥類なんてみたいで、いやだなと自己嫌悪に陥ったりもする。

 

 国籍、今は日本、かつては韓国、韓国人だったり、日本人だったり、その心は、在日韓国人、だなんて、お粗末さまでございます!