旅行会社から、旅行のカタログ本が送られて来ると、韓国に旅行したいなんて思うが、昨今の旅行料金の高いことに驚く、とてもじゃないが、手が出ない。綺麗な写真を見ながら、溜息を付く。現役で働いていた頃は、少し頑張れば手が届いたが、今の少ない年金生活では、韓国旅行は、とてもじゃないが、夢の又夢である。

 それで、過去の韓国旅行の思い出に浸って、自分を慰める。

 

 サークル仲間八人と一緒に三十年ほど前に行ったのが、韓国旅行の最初だったが、汗蒸幕(ハンジュンマク)と言って、サウナみたいなところに行ったところ、「大阪の玉造に三年間いた」と言う若い韓国女性と話をしたが、玉造、たまつくりをタマチュクリと発音したのが印象的だった。韓国人はツの発音が苦手だ、どうしてもチュになってしまう。ちなみにワも下手だ。ワがアに聞こえるので、和歌山がアカヤマに聞こえる。

 

 その汗蒸幕で体がぬくもったせいか、急に生理用品が必要になり、一人で地下のドラッグストアに行って、店に入るなり「タンポン」なんて叫ぶと、カウンターの向こうの落ち着いた様子の中年男性が「ネー」なんて言いながら口にひとさし指を当てる、静かにと言う合図らしかった。それで横を見ると、男性客がヤクルトみたいな飲料を飲んでいて、それで生理用品を買おうとする私を制したらしかった。

 件の男性客が店を出て行くと英語で「レギュラーサイズ?ジュニアサイズ?」なんて言われて、何のことか分からないまま「レギュラーサイズ」なんて答えて買った来たのだが、そのサイズの違いは何だったのだろうかと、今でも不思議に思うことが有る。

 

 次に、二年後位に夫と釜山に行った時のことだが、土産物店の店主が、私たちを即座に在日韓国人だと察したらしく、つかんで離さない。缶コーヒーを差し出し、座れと言って、延々と日本語での会話の相手をさせられたものだった。「日本には中学三年生までいた」と言うので、中学卒業後に韓国にやって来たらしい。当然滑らかな日本語であるし、年齢的にも私たちと同じぐらいである。多分韓国語よりも日本語の方が話しやすいのだろう、話が止まらない。

 ようやく、話が途切れて帰ろうとすると、夫に近づき、今度は一人でおいでと誘っている。

「面白い所を案内してあげる、奥さんにはゴルフに行くと言って、ゴルフバッグなんかを持ってくるとばれはしない」なんて、横で私が聞いているのに、熱心に誘っている。恐らく悪所なんかに連れて行くつもりなのだろうが、妻の私が眼中に入らないらしくて、可笑しかった。

 

 韓国旅行は楽しい、古希を過ぎはしたが、又行く機会はあるよね‼