支払を済ませ、いよいよミョンドンイリュで安物買いだ!とビルに向かう。ミョンドンイリュは下赤塚ののとや本店にそっくりであった。「ここはソウルののとややな」一階を見たあと国井さんが「ここは別行動と行きましょう。そうね。3時に玄関のところ集合でどう?」「よっしゃ」一階では私は下着の黒パンツを一枚買って、二階へ上がった。ここがネットでも評判が良かった化粧品とアクセサリーのコーナーだ。人も大勢いるいる。ピアスも100円くらいからいっぱいあるし、なんといっても私が夢中になったのは子供用髪飾りだ。髪飾りに付け毛がびよよ~んとついているのだ。だんごからみつあみが垂れているのもある。「かわいー、かわいー」私は夢中になってカゴに入れた。バッグを見る。うん、チャックはちゃんと閉まってる、こういう所ではスリに注意しなければならないからね。そしてズラ売り場にとおりかかるとお姉さんが座れと合図し、私にズラを装着し始めた。ズラをかぶった私はまるで「OLヴィジュアル系」であった。さんざんウケたあと売り場をあとにして、レジへと向かった。そこで私は血の気が引いた。バッグがオープンザチャックだったのだ。でも私は自分で認めたくないがために「そういえば開けたかねえ」と混乱した頭で強引に思い込みつつバッグからサイフを取り出そうとした。やはり無い!「やられた!スリや!」後ろを振り返ったが

犯人がいるわけでもない。ぐるぐる回る頭で考えた。まずレジを打ってる姉ちゃんに「買い物はできん。サイフがないから」とびしっと言い、怪訝な顔をされつつレジをあとにし、でかい声で「国井さーん、国井さーん」と相棒を読んだ。「どしたの?」

「サイフすられたー!」「えー!マジ!」その場でしゃがみこんで二人でバッグの中を探った。何べん捜しても無いものは無い。

「国井さん、こうなったらしょうがねえ。とにかくカードが一枚入ってたからそれがヤバイ。せっかくの買い物途中で悪いけどホテルまで戻ってくれへんか?」「いいよ、いいよ」国井さんは迅速に動いてくれて表に出るとタクシーを拾ってくれ、ホテルに戻った。このとき2時20分。ホテルに戻って、すぐ部屋から国際電話でだんなのケータイに電話するも出ない。だんなから預かったカードだからカードの種類も私は覚えてないのだ。こうなったら本社に電話だ。番号を思い出してかけたら居たーー!電話に出ただんなに「サイフすられた。カードも一緒。すぐ止めんとあかん」と言ったら「何やってんだよ!バカ!こっちは仕事で忙しいんだよ!そっちで調べてちゃんとやってくれ!」「じゃあ、カードの種類を教えてよ~」「ジャックスのデューティーフリーショッパーズだよっ」「わかった」これで電話が切れた。「だんなにこんなこと言われちゃったよ~」と国井さんに愚痴ると国井さんは「わっはっは。そりゃあたしだって自分のだんながおんなじ電話してきたらまず『何やってんの!バカじゃん』って言うよ~」と笑い飛ばしてくれて気が楽になった。さて、それでは!と国際電話で104にダイヤルしたがつながらない。国井さんは「03104じゃん」と言ってくれたのでやってみるもダメ~。「そうだ!キムさんだ。困ったときのキム頼みだ」と電話したら、「電波が届かないか電源が入っておりません」のような韓国語メッセージが。がっくり。そして、よしいちかばちかと家に電話したら運良く息子が居た!「おお息子よ。これ国際電話やで要点だけ言うで。お母さんはサイフを盗まれた。大至急カードをストップせなあかんから、すぐ104に電話して番号調べてくれ。ええか!『ジャックスデューティーフリーショッパーズ』か『ジャックスカード紛失係』な!」「なにそれ~!マジ~?」とメモしてる息子に「ほな2~3分後に電話する!」そして再度電話して電話番号を聞き出し、ようやくジャックスへ。ことの次第を申し出ると「もうお手続きは承っておりますが」あれ?そうか、だんなやな。とにかく心配なことを早口で質問し、ジャックスさんからはとにかく警察へ行って証明書をとってくるように言われて電話を切る。このとき2時50分。そしてまただんなに電話した。すると先ほどとはうってかわって「あのあと俺すぐ電話してストップしといた。あまり気にするなよ、落ち込むなよ」と優しい態度。落ち込んだときってこういう態度がいちばんありがたいもんだ。腐っても夫婦だよなあ。って腐ってえへんて!(笑)なんせお金は全額持ち出していたわけでなく国井さんのトランクにまだがっちり置いてあったのでそれを持ってまたホテルを出た。ホテルの外にはホテルマンのおっさんが立っており「タクシーデスカ?」と聞きタクシーを止めてくれた。だが一般タクシーである。日本語が通じない~。だけど「ミョンドンのポリス!」と叫んで発進。だけど降ろされたのはポリスのポの字もないところだった。地図を広げてもわからん。国井さんは「ここ派出所じゃないの!」と派出所でもなんでもないプレハブの建物のドアを堂々と開けて「すみませ~ん。あれっ?・・・失礼しました~」というチャレンジャー精神も発揮してくれた。国井さん本当にありがとう!私たちが困っていると、道端に立っているお兄さんが話し掛けてきてくれたので「ポリスに行きたいんです~」と言うも通じず。だけどさっき見た警察団体は背中にみなPOLICEとプリントしてあったのでこの言葉はポピュラーなはずだ!「そうだ!」と私はメモ帳を取りだし、そこにPOLICEと書いた。そしたらやっとわかってくれて、「ゴーストレイトアンド~ライト~」ふむふむ、まっすぐ行って右に曲がるんやな。「カムサハムニダ~」でそのように行く。だがしかーし!見つからない。私たちは迷子の子猫チャンのように誰か助けてくれ~いと地図を広げてたら、ちょうどその場所にあったメガネ屋の店員さんがお店から出てきてくれて説明してくれ、地図に印もつけてもらった。で「ソコノ道カラデハワカリズライノデコノ大通リカラオオマワリデ行クホウガヨイ」とおっしゃるので「そうします。カムサハムニダ~」で、その地図どおりに行ってみた。するとさっき教えてくれたお兄さんのところにまた出てしまって、お兄さんは笑って私たちも苦笑いした。私たちはミョンドン派出所を探してぐるんぐるんとこれで3周ほどしているのだ。そら笑われますがな。お兄さんはまた近寄って教えてくれた。「ゴーストレイトアンドライト~」ふむふむ。まっすぐ三度目の道を歩いたら国井さんが「あった!ここじゃん!」お兄さんの場所からすぐのところであった。「ライトというのは右に曲がれじゃなくて右にあるっちゅうことやったんやな!」ようやく私たちの「警察求めて三千里」の旅も終結の運びとなった。ドアを入ると警察官は二人だけであった。まあ、派出所やからね。年配の方の人になんとか話し掛ける日本語はさっぱりだ。そこで「I was just stolen my wallet with money and a credit card. So I want to write “notice”.」これでようやく通じて、書類を出してくれた。複写になっていないので同じものを2枚書くのである。国井さんはその間「あたしゃトイレ借りるよ」とトイレに行き、「ここのトイレは警察のくせにやけにファンシーだったよ」とトイレのチェックも怠らなかった。書き終えてから、事情を説明しなければならないのにどうも英語も通じてない感じ。だから「ちょっと国井さん演技して」と頼み、国井さんにはスリに扮してもらい実演を行った。韓国でここまでのゼスチャーゲームをしたヤツもそうそうおらんだろう。警察官はそれを見て「だったらこの書類じゃダメじゃん」てなことを言ってる様子でまた更に2枚の書類を出してきた。「うへえ、また書くのか!」そして「旅行で来たならガイドは?」と聞かれたのでキムさんのケータイ番号を教えたらキムさんとつながったようで、私に受話器を渡してくれた。キムさんは「紛失届ナラ『盗マレタ』ノ文字ハ書イテハイケナイ。盗難届ナラコレカラモット大キイ警察ニ行ッテ捜査ヲ要請スルコトニナル。ドッチガイイデスカ?」と通訳してくれた。

そんなもん、捜査したところで出てくるわけがないし、これ以上国井さんの貴重な時間をつぶすわけにはいかんと「紛失でお願いします。ところで紛失でも盗難でもこの証明書はカードが使われたときに同じ効力がありますよね」と念を押すのも忘れない。「ハイ大丈夫ト警察ハ言ッテイマス」「それならそれでよし!」やっと話がまとまり、警察官は私の書いた書類にサインとはんこを押してくれて私に渡してくれた。やれやれである。

外に出たら国井さん「いやあ、ミョンドンの街を警察捜してぐるぐるぐるぐる回っちゃって、こんな経験ないよね~。トイレも見られたし」と明るく言ってくれてまたまた助かった。国井さ~ん、あんた本当にいいヤツだよ!で、のども乾いたし、一服もしたいし、ミョンドン警察のすぐ斜め前の喫茶店に入ることにする。入るとなかなか落ち着いたいい店である。メニューを見ると「ブレンド」と「アメリカン」があるから国井さんはブレンド、私はアメリカンを頼んだ。出てきたコーヒーは・・・・・。国井さんいわく「お湯じゃん!」では私のアメリカンは・・・とおそるおそる飲むと・・・「まるっきりお湯や!」コーヒーの雰囲気のするお湯だったあ!それに砂糖を少し入れたので茶色い砂糖湯ってなもんだった。

一服して一息ついたらもう4時過ぎだった。

至上最悪の思いをしたミョンドンイリュだけどここで買い物しないと始まらん!と「行くで!」という掛け声とともにまたミョンドンイリュに戻り、買い物したわさ~~。もちろん懲りずに別行動でな。私は自分用にカットソーとTシャツどちらも400円くらい。それから娘にさきほどの髪飾りをどっちゃり、それからだんなと息子にキャップを360円で二個買った。