9月5日、Sérgio Mendes(セルジオ・メンデス)がロサンジェルスで亡くなりました。83歳でした。
ここ数ヶ月、新型コロナウィルス感染症の後遺症に苦しんでいたと言うことです。
ご冥福をお祈り致します。

思い起こせば、Sérgio Mendesは、私がブラジル音楽の素晴らしさを知るきっかけになったミュージシャンのひとりでした。

音楽大国であるアメリカに乗り込み、世界にブラジル音楽を布教して回った立役者で、彼がいなければブラジル音楽はこれほど身近に感じられる存在にならなかったでしょう。

Sérgio Mendesの代表曲と言えば、なんと言ってもJorge Ben(ジョルジ・ベン、Jorge Ben Jor)が作詞作曲したMais Que Nada(マシュ・ケ・ナダ)でしょう。
1966年のセルジオ・メンデスのデビューアルバム” Herb Alpert Presents Sergio Mendes & Brasil '66”に収録され、その年のBillboard Hot 100の47位となりました。

今日ご紹介するのは、そのJorge Benが1969年に作詞作曲した”País Tropical”です。
País Tropicalとは、熱帯の国と言う意味。

この曲を最初に歌ったのはWilson Simonal(ウィウソン・シモナウ)で、1969年7月に3万人を集めたマラカナンジーニョで行われたコンサートで披露され、彼の最大のヒットとなりました。Wilson Simonalはその後、彼のキャリアを揺るがせる事件により、表舞台から消え去っていますが、それはまた別の機会に説明しますね。

País Tropicalは1969年にGal Costa、Caetano Veloso、Gilberto Gilによってレコーディングされたのち、Jorge Ben自身も歌っています。この曲を収めたJorge Benの6枚目のアルバム”Jorge Ben”に収録され、彼の代表作の一つとなりました。

Sergio Mendesは、1971年にSergio Mendes & Brasil ‘77のバンド名でリリースしたアルバムに、この曲を収録しています。バンド名がやや前のめりですが、間違っていません。


僕は神の祝福を受けた
熱帯の国に住んでいる
ここは本質的に美しい
(何と美しいんだろう!)
2月にはカーニバルがある

僕はフスカ(注1)とギターを持っていて
フラメンゴファンで
テレーザというネガ(注2)がいる

サンベイビー
サンベイビー

僕は平凡な心持ちの若者
でも人生には満足している
誰に何の借りもないから
僕は幸せで
僕自身にとても満足している

僕はバンドのリーダーじゃないけど
家ではそうなんだ
僕の友達や仲間は
皆僕を尊重している
それが、共感や力や
それを超えた何か
喜びの理由だから

(注1)Fuscaはフォルクスワーゲンの車種の愛称。日本やアメリカではビートルと呼ばれたが、ブラジルでの呼び名はフスカだった。ちなみにfuscaとは南米に生息する大ゴキブリのこと。

(注2)Negaは肌の色の濃い女性のこと。男性形はnego。黒人を意味するnegroから来ているが、ブラジルではnego、negaは相手に親しみを込めて呼びかける言葉で、否定的な意味はない。
ちなみにこの歌詞の中でのnegaの意味は、恋人のこと。

最初に、Sérgio Mendes & Brasil ‘77の演奏をご紹介しますね。


Jorge Benの1969年のアルバムから。


バイーア州出身の、Gal Costa、Caetano Veloso、Gilberto Gilの3人の歌。



País Tropicalを最初に歌ったWilson Simonalのライブステージの模様。



Daniela Mercuryのライブでのパフォーマンス。


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※毎週日曜日に掲載します。
次回は9/15です。