ブラジル音楽と言えば、リオデジャネイロを連想する人が多いですが、今までこちらのコーナーで紹介してきた通り、バイーアも負けてはいません。

208回目で紹介したAquele Abraçoの冒頭でGilberto Gil(ジルベルト・ジル)が、同郷バイーア出身の3人の天才、Dorival Caymmi(ドリヴァル・カイミ)、João Gilberto(ジョアン・ジルベルト)、Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)を挙げています。
バイーアでは、彼らに続く若い世代のミュージシャンが確実に生まれ育っています。

今日はDorival Caymmiのバイーアの伝統料理を歌った作品、Vatapá(ヴァタパ)をご紹介します。

Microsoft Copilot(AI)が作成したVatapáの画像。


バイーアはブラジルの中でも特にアフリカ系が多い地域で、ヴァタパもナイジェリアとその近郊地域が起源の煮込み料理です。スパイスが効いていて、クセになる味です。
ヴァタパ単独で食べることもありますが、黒目豆で作った生地を揚げたアカラジェに挟んで食べたりもします。

私、ヴァタパもアカラジェも大好物で、今も時々バイーア出身のシェフ、マリさんのお店に食べに行ってます。

ちなみに、明日(8/12)はマリさんのお店でバイーア料理のアカラジェとモケッカが食べられますよ。




ヴァタパを食べたいなら
作ってみよう
最初にフバ(注1)
次にデンデ(注2)を準備して
混ぜ方を知っている
バイーアのネガ(注3)を探そう

カシューナッツを
もうちょっと入れて
ピメンタ・マラゲッタ(注4)
もうちょっと入れて

ピーナッツ、エビ、ココナッツファイン
をつぶし
生姜入りの塩と玉ねぎ、イアイア(注5)
で味付けする


かき混ぜるのをやめないで
火にかけた鍋を焦がさないように
1万レイス(注6)とネガがあれば
ヴァタパを作ることができる
なんて美味しいヴァタパだろう

(注1) フバはとうもろこしなどの粉のこと。ヴァタパには色々なレシピがあり、粉の代わりに前日に残ったパンを使うのが一般的。
(注2) デンデはアブラヤシから採取した食用油で、ムケッカなどブラジル北東部の料理に多用される。
(注3) negaは肌の色の濃い女性のこと。ブラジル人の多くはアフリカの血を引いており、親しい間柄で相手をnego(男性形)やnegaと呼ぶことに否定的な意味はない。
(注4) ピメンタ・マラゲッタはブラジルで親しまれている唐辛子で、これがないとバイーア料理は成立しない。
(注5)iaiáはアフリカ起源の言葉で若い女性を表す。男性形はioiô。
(注6) レイスはブラジルの旧貨幣単位の複数形。現在のレアル(real)の前の貨幣単位はクルゼイロで、その前もレアル(real)だったが、現在の貨幣単位の複数形がreaisなのに対し、旧貨幣はréisと異なる形である。

この曲を最初に歌ったのは、リオデジャネイロの男声サンバグループ、Anjos do Inferno(アンジョス・ド・インフェルノ)で、1942年のことでした。
ちなみに、Anjos do Infernoとは、地獄の天使と言う意味です。



1957年にリリースされたDorival Caymmi自身のアルバムから。



Dorival Caymmiの3人の子、Nana、Dori、Daniloによるパフォーマンス。いずれも父と同じ音楽の道に進みました。



バイーア出身のGal Costa(ガル・コスタ)も、Vatapáをよく食べていたに違いありません。


Rosa Passos(ホーザ・パッソス)はギター演奏の模様を公開しています。




★ポルトガル語の歌詞とコード進行はこちらをご覧ください。
Principal, Maisのタブでコードの種類を選べます。



※毎週日曜日に掲載します。
次回は8/18です。