今日ご紹介する曲は、不世出のサンフォーナ(アコーディオン)奏者Luiz Gonzaga(ルイス・ゴンザーガ)が彼の音楽上の重要なパートナーであったZé Dantas(ゼ・ダンタス)と共に創作した曲の一つ、O Xote das Meninasです。

2人はブラジル北東部のペルナンブコ州の出身で、この曲にも北東部に特有の気候や習慣などが描かれています。

タイトルのO Xote Das Meninasとは、女の子のXote(ショッチ)と言う意味ですが、まずXoteから何だかわかりませんよね。
ブラジルは移民国家で、民族のオリジンはポルトガル、西アフリカ(ヨルバ人)、先住民族だけではなく、ドイツ系、イタリア系、日系、アラブ系など多岐にわたります。
ショッチのルーツは、ドイツの男女がペアで踊るフォークダンスの一つschottische(ショッティーシュ)と言われています。

歌詞に登場するSertão(セルタン)とは、特にブラジル北東部にある降雨量が極めて少ない地域を意味します。
ただし、ブラジル人は単に田舎のことをSertãoと呼ぶこともあります。首都でなくても大都会であるサンパウロをCapitalと呼ぶのと同じですね。

Mandacaru(マンダカルー)とは、ブラジル北東部に自生するサボテンの一種で、高さは9mに達することもある樹木に似た外見を持っています。

Timão(チマン)とは、この地域特有の言葉で、ルイス・ゴンザーガはラジオ局のインタビューで以下のように述べています。
「Timãoとは、女の子が10歳くらいまで着ていたワンピースで、通常は母親が自宅で作り、膝下まで届く丈です。小麦粉の袋で作られることが多いです。」
思春期の女の子が喜んで着る代物とは到底思えませんね。

歌詞の中に娘の様子を心配した父親が医者のところに連れていくシーンがありますが、作者の一人Zé Dantasはお医者さまでした。
彼はこのような場面にちょくちょく遭遇したのかもしれません。

乾期にマンダカルーが花を咲かせたら
それはセルトンに雨が降る前兆
どんな女の子も人形遊びに飽きたら
それは彼女の心の中に愛が芽生える前兆

長い靴下
もうフラットシューズはいらない
ぴったりとしたワンピース
もうチマンは着たくない

彼女はひたすら
恋のことだけを考えている
彼女はひたすら
恋のことだけを考えている

早朝、化粧をし
ただため息をついて
空想をするだけ
父親は病気の娘を医者に連れて行く
食べず
勉強せず
眠らず
何もしたくない 

しかし医者は診察もせず
父親をそばに呼んでささやいた
この病気は年頃によるもので
この娘を治す特効薬はありません。 

彼女はひたすら
恋のことだけを考えている
彼女はひたすら
恋のことだけを考えている

まず1953年の作者のLuiz Gonzagaの演奏をご紹介します。


女優としても活躍するElba Ramalho(エルバ・ハマーリョ)のライブ。
彼女が生まれたパライバ州も北東部に位置します。


Luiz GonzagaやZé Dantasと同じペルナンブコ出身のGeraldo Azevedo(ジェラルド・アゼベド)による歌。



Marisa Monte(マリーザ・モンチ)のステージから。
私が最初にこの曲を聴いたのは彼女のCDでした。



Marina Elali(マリーナ・エラリ)がDominguinhosのサンフォーナ演奏で、前半は英語、後半をポルトガル語で歌っています。
ドミンギーニョスはルイス・ゴンザーガの後継者と呼ばれたペルナンブコ出身のサンフォーナ奏者でした。
マリーナ・エラリは米国バークリー音楽大学に学んだシンガーソングライターで、北東部リオ・グランヂ・ド・ノルチの州都ナタルに生まれました。母方の祖父はこの曲の作者の1人Zé Dantas。父親はパレスチナの血を引く実業家で作家のSami Elaliです。


★ポルトガル語の歌詞とコード進行はこちらをご覧ください。
Principal, Maisのタブでコードの種類を選べます。
 


※毎週日曜日に掲載します。
次回は4/14です。