今日ご紹介するのは、サンバ作家Wilson Batista(ウィウソン・バチスタ)の作品の一つ、Meu Mundo É Hojeです。Meu Mundo É Hojeとは、「私の世界は今日」と言う意味です。

この曲は1966年にJorge Veiga(ジョルジ・ヴェイガ)がリリースしたアルバムに収められました。その2年後にWilsonは持病の心臓肥大のため55歳で逝去しています。

Wilson Batistaは貧しい家庭に生まれ、早くに母親を亡くし、父方の叔母に育てられました。学校を嫌ってしょっちゅう授業を抜け出すような少年で、心配した父親が手に職を付けさせるために芸術工芸学校に入れましたが、当然上手くはいきませんでした。
ただし、音楽に関しては子どものころから天才的な才能を発揮、判明しているだけで500曲以上の作品を残しました。
3度結婚したものの、生来のボヘミアン気質が抜けることはなく、常に貧困と隣り合わせでした。
その頃は著作権が確立しておらず、創作したサンバをパートナーに売り、共作者としてクレジットしてお金を得ることが当然のように行われていました。
Meu Mundo É Hojeにも、共作者としてJosé Batistaの名前がありますが、彼は特に悪名高い人物だったようです。

Wilsonと同世代にやはりボヘミアンとして生きたNoel Rosa(ノエル・ホーザ)とは犬猿の仲で、お互いに相手をけなす作曲合戦をしたエピソードがあります。
20代で亡くなったNoelよりもWilsonは長生きではありましたが、知名度はNoelに及ばず、死後は忘れられつつありました。近年になって伝記が出るなど、再評価の動きがあります。

それが私
誰かが私を好きになりたいとしても
それが私
誰が私を好きになりたいとしても
それが私

私の世界は今日であり
私には明日はない
それが私
私はいつか死ぬだろう
後悔も偽善の重みも背負わずに

それが私..
私の世界は今日なのだ..


お金や地位で自分を騙し
地面にうずくまる人たちは哀れだ
私は決してこの激しい戦いには関わらなかった
私は知っている
棺には花のほかに何も入れられないことを

まずはJorge Veigaの歌をお聴きください。


Paulinho da Viola(パウリーニョ・ダ・ヴィオラ)が30歳であった1972年のアルバム”Dança da Solidão”に収められたMeu Mundo É Hoje。
PaulinhoはWilson Batistaを高く評価している歌手のひとりです。



こちらはインタビューに答え、弾き語りをする近年のPaulinho。気品を感じる年の取り方で、憧れます。


Tereza CristinaのライブDVDから。


Katia B(ボーカル)、Marcos Suzano(パーカッション)他4名が中心となり、Arto Lindsayなどの豪華ゲストを招いてレコーディングしたアルバム”Coletivo Samba Noir”から。Katia Bの歌がクール。