7/17に、またブラジル音楽の巨匠が亡くなりました。João Donato(ジョアン・ドナート)、88歳でした。ご冥福をお祈りいたします。

去年11月から、ガル・コスタ、エラズモ・カルロス、ヒタ・リーなどなど、ブラジル音楽に多大な貢献をしたミュージシャンが、立て続けに亡くなっており、寂しい限りです。
皆さん、ご高齢ですからね。

ジョアン・ドナートは、1934年の8月にブラジル北西部アクレ州の州都リオ・ブランコに生まれ、11歳の時に家族に連れられリオデジャネイロに転居しています。
父親はパイロットでしたが、バンドリンをかなで、母親と姉はピアノを弾くなど、音楽に囲まれた環境で育ちました。
15歳の時からディック・ファルネイの家で開かれていたジャムセッションに参加し、そこで多くのミュージシャンと出会いました。
17歳の時には、ボサノバの黎明期に活躍したドロレス・デュランと恋仲になったそうです。

ボサノバ最盛期に活躍し、アントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・ジ・モライス、ジョアン・ジルベルトなどとも良好な関係を築いてきたジョアン・ドナートでしたが、そのジャンルはボサノバだけにとどまらず、ジャズ・フュージョンなどの分野にも及びました。
度々、日本でもライブを行っており、2020年5月にも来日公演が予定されていましたが、コロナのために中止になったと思われます。

前置きが少し長くなってしまいました。
今日ご紹介するのは、João Donatoが作曲した”A Rã”(かえる)です。
この曲は、1973年のアルバム”Quem é Quem”に収録されています。
これは彼の10枚目のアルバムで、今までピアノ演奏一筋だった彼が、39歳にして初めてボーカルを披露しています。

ちなみに、A Rãは当初は歌詞がなく、ジョアン・ドナートは、かえるの真似をして、ゲゲゲゲ〜と歌っています。
その後、Caetano Velosoがかえるの声のリズムを忠実に取り入れた歌詞を書いています。
日本のブラジル音楽アーティストが歌うのを何回か聴きましたが、いずれもジョアン・ドナートのゲゲゲゲ〜バージョンでしたね。

参考までにカエターノの歌詞の訳を載せておきます。

カラフルなコーラス
カラフルな音の影
愛していない?(注1)
愛している?
愛しているなら
こんな風に言う
サンバの花で幸せになる
音の中のサンバ
緑の中を行ったり来たり
緑を見るとその根元に
さえずる鳥のくちばし
夜明け

僕の近くで
君がよく見えた
朝の明るさの中で
芝も泥もすべて
僕の妹
枝、蛙
かえるの跳躍

(注1) 歌詞の中にあるmal me quer…は、片思いをしている人物が、「(相手が自分を)愛している、愛していない」と呟きながら花びらを千切る様子のこと。
 
まずは、ジョアン・ドナートが蛙になり切って歌うバージョンから。


JoyceとJoão Donatoの、息のあった2匹の蛙の合唱。


日本のブラジル音楽ユニットNaomi & Goroによる歌とギター。
ちなみに、O SapoもA Rãと同じく、蛙を表します。



Gal CostaはCaetanoの歌詞で歌っています。


トリは、カエターノの歌で。


★ポルトガル語の歌詞とコード進行はこちらをご覧ください。
Principal, Maisのタブでコードの種類を選べます。


 
※毎週日曜日に掲載します。
次回は7/30です。