こんな夢を見た。


怪獣しなきゃ、怪獣しなきゃ。過重負担のもとでブログ記事を書き飛ばしているせいで、構想もへちまもない中、ちょっとしたへまを犯して手間がかかっている。大急ぎで上の記事から伏線を回収する下準備に追われているわけだが、訊かないで欲しい。

 

拾い上げたら伏線にならないのでは?とか、広い顎ならもうキャラメリゼしたのでは?とか。

 

すべては霧の流れる薄暗い夢幻的な夢の世界で、ぼくが16年越しの迷子になっていることが問題なのだ。

 

(小物雑貨好きなので Let’s get LOFT な気持ちでいたら、地元に出店してくれたのは嬉しかったヨ)

 

ぼくは、再び白紙のカンバスが斜めに浮かぶ空間に舞い戻って、ラバーソールの柔らかな感触を足裏で感じながら、「who told 太る?」という暗号に思いを馳せていた。謎めいたその10文字が、クッキングパパの広大な顎をキャラメリゼすると、炙り出しで出現したのが昨晩のこと。

 

(画像拝借元:http://curiosity.jp/magazine/eng/181203/181203.html

 

ここまでの数行で、昨晩の記事の伏線を回収し終わったので、ご都合主義が、心地よくぼくの目を醒ましてくれた。立て続けに何本も夢を見たような気がしている。混乱した頭を軽く振ってみた今のぼくも、別の夢の中にいるのかもしれない。

 

電話が鳴った。出ると開口一番、受話器の向こうで、この声がした。

 

 

そのあとでワンワン吠えてこられたが、犬語がよくわからない。はっきりとわかったのは、「ワンワンは二度ワンと書く」ということだけだ。 

それでもどこか閃くところがあったので、ぼくはテレビをつけた。

 

すると、どこかで見た「ラブリードッグ・ミリオネア」が生放送で放映されているではないか。しかも「ただいま出場者を捜索中」のテロップが出ている。受話器の向こうの犬の声が、ますます悲痛に響いた。

 

 

上の記事でさりげなく引用したフランク・シナトラの「My Way」がまさか、こういう文脈で帰ってくるとは!

 

今朝のこの展開は、アレと同じ。諸事情あって青春時代から愛聴するようになった Bon Jovi の「It’s my life」の PV の冒頭そっくりなのだ。あの場所へ駆けつけなきゃ!

 

 

 

It's my life
It's now or never
I ain't gonna live forever
I just want to live while I'm alive
(It's my life)
My heart is like an open highway
Like Frankie said
I did it my way
I just want to live while I'm alive
It's my life

 

 

歌詞に出てくる「フランキー」が「我が道を行く」フランク・シナトラ。ファンにはおなじみのトミーとジーナも二番の歌詞に出てくる。とか、ゆっくり思い出している暇もなく、ぼくは犬の叫び声を聞いた。こう叫んでいるのがわかった。

 

 

「行ってくれ!と」

 

 

どうやら番組がCMを挟んだらしい。しかも、流れているのは、ぼくが出演した思い出の「行ってくれ!と」のCMじゃないか。

 

 

 

茶犬ちゃんがああまで必死に呼んでいるのなら、ジェットの速度で都心まで飛んでいかなきゃ! というようなお急ぎのお客様には「フランキー・ジェット・シティー」がおすすめですよ。いかがなさいますか? 

 

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ぼくはスマホの音声案内のYESをタップして、ジェットの速度で都心の第二スタジオに到着。すぐに出演の段取り「二スタ」。

 

(「ラブリードッグ・ミリオネア」も、こんな感じの会場だよ)

 

ステージの袖に、前年度優勝者のラブリーな茶犬ちゃんがスタンバイしているのが見える。茶犬ちゃがこっちへ少しだけ吠えてくれた。人間にはわからないけれど、耳の良いぼくたちなら、少し離れていても会話ができるのだ。

 

 

茶犬: 遅かったじゃない。何をしていたの? 『ラブリードッグ・ミリオネア』にはあなたの人生がかかっているのよ。あの名曲を聴いてもまだわからないなんて、鈍い鈍い鈍いわ! いつまで孤独をひとり温めていくつもり?

 

ぼく: ま、まさか。「It’s my life」の先には、「良い妻いるライフ」が待っているっていうこと?

 

茶犬: わかったら発奮してきたでしょ。この番組でとびっきりのパラダイス・シフトを happen させてよね。

 

ぼく: はい、喜んで!

 

茶犬: その居酒屋風の返事はやめて。もっと素敵な答え方を知っているでしょう? この場所から私がアドバイスを送るから、絶対に参考にしてネ。最初のアドバイスは「おだてろ!」。さあ、ハートに火をつけて、回答席に飛び乗って!

 

ぼく: うん、sourceる!

 

 

(「sourceる」の由来は上の記事を参照あれ。今晩もアドリブで全力を尽くしちゃうぞ!)

 

迷司会者: 第8問。そういやさ、うちのワイフがぼくが風邪気味のときはすぐに風邪薬をのめ、のめって気にかけてくれるのが嬉しいぼくの座右の銘は?

 

ぼく: はい!「さ湯で飲め!」

 

迷司会者: …ですが、このあいだの日曜日、新宿の伊勢丹でこのネクタイを買ったんだ。ほら、綺麗な色合いだろう? きみはこのネクタイをどう思うかな?

 

ぼく: はい! 「桶狭間の戦い」

 

迷司会者: むむっ! 正解! ワンワンだけに鋭い嗅覚だな。「織田テロ!」というメッセージをどうやって読み取ったんだ。

 

 ははーん。さては、優勝する気だな? それならこちらにも考えがあるぞ。賞金をきみに渡さないよう、渡さないよう、オレ様が頑張っているのは、賞金をこっそり使い込んでいるからではナイからな。勘違いするナヨ、ナヨとするんじゃない! もっとピシッと背筋を伸ばして!

 

 

ぼくは迷司会者のいつもの攪乱系トークに飽き飽きして、前年度優勝者の席をちらっと見た。茶犬ちゃんは嬉しそうにこっちを向いて尻尾を振っている。

 

これがぼくの人生さ。ぼくが全力でトラブル対応して、全力で生命を燃やせば、きっと喜んでくれる人がたくさんいるんだ。待ってろ、「良い妻いるライフ」!

 

 

迷司会者: 第9問! 別名「大苦悶」。出題はフランスのセンター試験と言われる…

 

ぼく: はい! バカロレア。

 

迷司会者: 当たってはいるが、発音が悪いな。「バカロレア」じゃないんだ。もっとフランス語に近い発音で言いなさい。「バカラリレヤ」

 

ぼく: 「バカラリレヤ」?

 

迷司会者: そうそう。綺麗に発音できるじゃないか。では、問題だ。アリストテレスの中庸の美徳を脳科学の観点から解説したまえ。

 

 

え? こんなのクイズ番組の範囲を超えているよ。本当に「大苦悶」だ。フランスの高校生が4時間がかりで1問答える哲学の論述問題じゃないか。

 

心細くなったぼくは、茶犬ちゃんをちらっと見た。茶犬ちゃんはうなだれて、首を横に振った。どんなにラブリーでも、犬には答えられない問題、越えられない壁だ。

 

ぼくは祈りを捧げることにした。ちょうど「It’s my life」に出てくるトミーとジーナのように、そうすることしか思い浮かばなかったのだ。

 

 

 

 

She says:
We've got to hold on to what we've got
It doesn't make a difference
If we make it or not
We've got each other and that's a lot
For love - we'll give it a shot

 

彼女は言う:
今あるものを大切にしよう
成功しても成功しなくてもいい
私たちが出逢えたのだから
愛し合うにはそれで充分よ
やってみようよ!

 

We're half way there
Livin' on a prayer
Take my hand and we'll make it - I swear
Livin' on a prayer

 

私たちはまだ道の途中で
祈りながら生きている
私の手を取って 二人ならできるわ
いまここで誓うから
祈りながら一緒に生きていくって

 

 

 

迷司会者: おやおや。ここで尻尾を巻いて降参かい。アリストテレスすらご存知ない?

 

 

ぼくは自分の浅学菲才が悲しくなって、自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回った。悲劇的な堂々めぐりだ。

 

そのとき、頭上のすぐそばへ、蜜蜂が舞い降りてくるのが見えた。蜜蜂はしきりに8の字ダンスを踊っている。よく見ると、その蜜蜂には顔があった。

 

 

ぼく: あ! バケラッタ・コーチじゃないですか! 蜜蜂に化けたんですか?

 

コーチ: 美味しい登場シーンを、作ってくれてありがとうよ! もっと目立ちたい、もっと褒められたい、もっとチヤホヤされたいって念じていたら、こんな小さなものにも化けられるようになっていたんだ! いま潜在記憶再現装置を落とすから、耳に入れな。

 

ぼく: コーチ! ありがとうございます! 絶体絶命の場面で、まさかコーチが、こんなにヒップな変身で、ぼくに救いの手を差し伸べてくれるなんて!

 

コーチ: 莫迦野郎、自惚れんな! オレはおまえのためにやったんじゃなくて、オレが目立って美味しくなるためにやっているだけだからな! あばよ。Good luck!

 

 

足元に落とされた小さな装置を、ぼくはさりげなく耳の中に入れた。すると、周波数調整された音波が脳に届いて、これまで読んだすべての本が、頭の中にくっきりと蘇ってきた。そればかりか、本と本の記憶の間に、懐かしい母犬の姿まで蘇ってきた。

 

 

ぼくはラブリードッグ・ミリオネアを突破できるのか? 母犬は何を囁く? <後編>に続く。